8 姑ガチャ
私は姑ガチャでは大変な当たりを引きました。
早くに夫(私にとっては舅にあたる人)を亡くし、女手一つで息子二人を育て上げた姑は、それは素晴らしい人でした。
息子二人が独立した実家で一人暮らしをされていたので、そろそろ私も介護生活に突入かな〜と、ぼんやり考えていた矢先に急に亡くなられてしまいました。三年近く前の話です。
義弟曰く、介護されるほどの衰えのないギリギリのタイミングやったから、本人的には良かったのではないか、とのことでした。
義母のお言葉で一番ありがたかったのは、「誕生日も母の日も敬老の日も色んな記念日とか、一切要らないからね。毎年来るもんやから、気にしなくて良いから。これは私も結婚してお姑さんから言われて有り難かったから、息子のお嫁さんにも引き継ごうと思ってたのよ」です。
お陰で母の日とか敬老の日だとか義務で何かを贈らねば、と悩むこともなくお付き合いさせてもらいました。(言い訳するなら折々のプレゼント、と言うのはしました)
女手一つだったので、自分の体調の悪い時、つまりは女性の生理についても息子たちに説明していて、こんな時には機嫌も悪くなるし身体もシンドいから未来の奥さんを気遣うように!と言い聞かせて下さっていたお陰で、私は夫から体調の悪い時に大事にしてもらったことしかありません。
また、綺麗好きだった義母は、息子たちに帰宅したら洗面所に直行し靴下はキチンと脱衣籠に入れ、なんならお風呂で足を洗え!と躾して下さっていたので、世間でよく言う夫の抜け殻があちこちに落ちている、というのも体験したことは無いです。
食べるものはダイニングテーブルで食べこぼしに気をつけて食べる、という生活習慣が身についているので、その辺は私の方がダラシないくらいです(ソファでお菓子を食べるので、時々食べこぼしが…)
子どもたちが小さい時は良く実家に遊びに行かせてもらいましたが、私たちが行った時には既に冷蔵庫に下拵えも終えて用意された食材がスタンバイしていたので、ご飯の用意すらした事も無いです。精々が後片付けの洗い物くらいです。
「いつか身体が動かなくなったら、頼むわ〜」と言われていたのですが、それすら無いままに亡くなられてしまいました。
「私が死んだら、このノートに全部書いてあるから」と普段から言われていた通り、友人の連絡先からお葬式やその後の手配やお骨の希望まで、全部ノートに書かれてありました。
三回忌はこうして欲しい、と書いてあるところが二重線で消されていて、一周忌の後はしなくて良いから、と書き足してありました。家族全員でそれを見て泣きました。
簡易ではありましたが、今年三回忌をしました。
人生の幕引きすら鮮やかだった姑には、尊敬と敬愛しかありません。