11 介護ベッドの話
妹から連絡がありました。最近母が二階の寝室に行くのがしんどくなったので、リビングにソファベッドを置きたいと言っている、という内容でした。
なんでソファベッド?と聞くと、毎朝ソファに戻して友達が来てもリビングに入ってもらえるようにする、と本人が言い張っているらしいのです。
正直に言うなら、体の動く若い子でもソファベッドはベッドにしたら二度とソファにはならないというのに、バカじゃないのと思いました。
後日、直接母に電話をかけて聞きましたが、母の中の理想はお布団を畳んで、これから買ってリビングに置く箱に、毎朝片付けると言うものでした。
十年以上ベッド生活を送ってる人が、毎日布団の上げ下げが出来るわけがない、と言っても聞き入れません。
布団は畳んでもそれなりに場所を取るので、リビングに置けるわけがない、と言っても母なりの理屈ではきちんと片付くらしいのです。
ここで説明しておきますが、リビングにはお布団くらいなら入れられる押し入れがあるのです。しかもちょっと整理すれば、布団くらい入れられる程度にはスカスカの押し入れが。
母は物凄く整理整頓が下手なのです。
母を病院に連れて行く用事のあとで、妹と三人、ホームセンターへ連れ立って行きました。
ホームセンターで電動ベッドのお値段を見せ、ソファベッドをソファにするためには、毎朝お布団畳んでお片付け、という手順があることを詳しく、めちゃめちゃ面倒くさい事を事細かく説明しました。
母の、これ以上は考えるのが面倒くさいというタイミングを狙って、妹がケアマネさんと連絡を取り、介護ベッドなら月1200円で借りられるとの話を母に告げたところ、「介護ベッドを借りる」ということに落ち着きました。
つまりはホームセンターに行った事自体が、説得のためのステップなのでした。なんでこんなに面倒くさい手順が必要なのかと、思いますが、そうしないと拗ねる膨れる、勝手に自分で買いに行ってしまうという風にもっと面倒になるのです。
二週間後、介護ベットを一階のリビングに入れるためのお片付けをして、介護ベッドを設置(お片付けが一番大変でした、主に私と妹が…)
お友だちを家に招待するのは、また部屋の模様替えが落ち着いてからにして、と私も妹も帰宅しました。
翌日、駅前で母が転倒し、膝にヒビが入るという結果に。
私と妹は「介護ベッドをリビングに入れておいて、良かった!」と(電話越し、精神的に)固く抱き合ったのでした。




