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みちくさ

海外ゲームの呆れた実態

作者: 斎木伯彦

黒人の侍は存在しません。

まずは結論から述べておきましょう。

事の発端は、海外のソフトメーカーが開発したゲームソフトで、黒人の侍を主人公としたファンタジーゲームです。

その内容を史実と信じてしまった一部のユーザーによる暴論と、それらに対する反証は傍観していても良かったのですが、当事者であるソフトメーカーまでもが「黒人の侍は史実」と虚偽を強弁し始めましたので、否定する必要があると感じた次第です。


さて「侍」の定義を確認しましょう。

・官吏である(仕える主君がいて、公務を担当)

・騎馬戦闘を行える、上級武士である

・御目見えの資格がある

・所領がある


これらが侍を規定する重要な要素です。

ですので地侍や足軽等の下級武士は、厳密にいうと侍ではありません。

そして今回、話題になっている黒人は「弥助」と呼ばれる人物です。

弥助はスペイン人に奴隷として日本へ連れて来られた人物で、織田信長が珍奇な人物として所望しました。

宣教師から進呈された弥助に武士の格好をさせて、武士の真似事をさせていたに過ぎません。

本能寺の変では信忠の近くで奮戦していましたが捕らえられ、明智光秀により「黒奴は動物で何も知らず、また日本人でもない故、これを殺さず」として、南蛮寺へ送られています。

以後の消息が不明なのは、主であった信長が死去した故に、再び奴隷としてヨーロッパへ連れ戻されたからでしょう。

仮に弥助が侍としての身分を持っていたならば、明智光秀も侍として取り扱っていたはずです。

所領も配下も持たない弥助が、侍ではなかったと断言できるのが史実です。


一方で白人の侍や、朝鮮半島出身の侍は存在しています。

有名な人物は三浦按針こと、ウィリアム・アダムスでしょう。

アダムスはイングランド出身の船乗りで、ロッテルダムから極東を目指す船団に所属して、航海を行いました。

五隻の船団は最終的に一隻になり、豊後国の黒島に漂着します。

紆余曲折あって徳川家康が引見し、堂々とした態度のアダムスを気に入った家康は、彼に俸給を与えて通訳・外交顧問として雇用しました。

アダムスは家康の命令で大型船を建造し、その功績で二百五十石の所領を持つ旗本(侍)に取り立てられました。

アダムスは、官吏として、将軍にも御目見得できる立場で、所領もあります。

騎馬戦闘ができたかは明確ではありませんが、江戸幕府の規定では、二百石級の武士は騎乗した上、五人の供回りを連れて参陣する立場です。

これが騎馬武者の最下限ですから、二百五十石の所領を持つアダムスは必ず騎乗して参陣する義務があります。

弥助は信長の近習ではあったかもしれませんが、公務もなく、所領もなく、騎馬武者でもありませんので、侍とは言えません。


もう一つ、今回の騒動で嫌悪感を招いた要素があります。

それは黒人が扮した武士まがいが、在地の農民を理由もなく殺害している行為です。

史実の弥助が存在していた頃は、本能寺の変の前年辺りからです。

その時代は治安も安定しており、信長の支配領域では法度も遵守されており、無闇やたらに乱暴狼藉を働けば、捕縛されて処刑されます。

開発陣が日本の歴史を全く理解していないのが窺い知れます。

他にも、日本の習俗に合わない描写が幾つもあり、悪意を感じるような改悪が重ねられるなど、評価するに耐えない内容が散見されます。

このような劣悪な内容を史実と言って憚らない厚顔無恥の輩に騙されないよう、皆様には正確な日本史を知っておいて頂きたく存じます。

「反論する者は差別主義者」などと放言する真正の差別主義者が出現したことも、私が強く否定しようとする動機付けになりました。

史実と異なる説や描写については、「史実とは異なります」と明言していれば私は寛容な方です。

実際に某無双ゲームでは、連戦連勝で全ての戦闘を終えれば、史実とは違う展開を見せてくれます。

それらを私は「史実」として受け入れませんが、「仮想世界」として受容できます。

間違っても仮想世界を史実と思い込むような、現実と虚構の区別ができないような知能の低い行為には及びません。

この騒動を機に、我が国の歴史に興味を示す人々が増えることを願います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 海外というより具体的にフランスのUBIソフトと記載するべきかと(苦笑) 今じゃ欧州同様、LGBTQだのBLMで倫理観がディストピア化してるアメリカ合衆国だってかつてはあのエディ・マーフィさ…
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