小説家になろうの活動報告が低迷を続ける中、カクヨムの近況ノートが活発な件 ~あれ? これって作者が移動しているだけなのでは……~
注意
・今回使用するデータは2024年3月20日-31日に取得したデータ、および過去エッセイ等で使用したデータに基づくものです。削除等により現状の数値とは異なる場合があります。
・非公開/削除された作品の数はわからないため数値には含んでおりません。
・活動報告=活報=割烹と言い換えている部分があります。
・作者はとうふメンタルなため、「素人質問で恐縮ですが~」「この分野において素人ですが~」「基本的な質問で恐縮ですが~」などの感想をもらうと爆発四散します。何かの破片が散らばります。
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こんにちは! 今日は、ウェブ小説界の二大巨頭「小説家になろう」と「カクヨム」の動向について、活動報告と近況ノートの投稿数を中心に見ていきましょう。活動報告と近況ノートはどんな傾向があるんですかね。わくわく。まぁ内容についてはタイトルでネタバレしているので、察しの良い方はもうお分かりかと思います。
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ではさっそく直近2年の小説家になろうの活動報告の投稿数を見ていきましょう。2022年の4月から取得してます。なおこのデータはなろうデベロッパーが提供している活動報告Atomを利用して取得しました。
黄色のラインが投稿数、赤いのが一週間平均したものです。
グラフを見てわかる通り活動報告の投稿数が直近2年間で減少傾向にあります。途中ですごい増えているところがありますね。これは集計ミスではないです。「大みそかのよいお年を割烹」と「新年のあけおめ割烹」の影響ですね。年末年始は普段の倍近く投稿されるようです。
ぎざぎざしているのは生活スタイルの影響です。特に曜日の影響が大きいです。確認するため曜日別に平均値を計算すると以下のようになります。
火曜~木曜が少なくて金~日曜で増加しています。土日になるとよく投稿する人が増えますね。平日にお仕事または学校に行っている人が多いようです。なお祝日は土日と同じ傾向です。
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さて直近2年は減少しているようですが、活動報告が実装されてからの記録を見てみましょう。活動報告は2009年から使えるようになりました。そこからの記録です。
活動報告のピークは2017年の夏ごろですね。そこから現在まで減少傾向にあります。
なおそれ以前に一度2012年ごろにピークをつけて一気に減っているのはにじふぁん閉鎖の影響です。ブログを書く人は二次創作の人が多かったのかわかりませんが、その人たちがいなくなって一気に減ったのではと思います。
ちなみに2017年からの予測線を引いてみるとこうなります。
だいたい年間80件減少しています。このままいくと2028年ごろには0となる予定です。
さすがに0にはならないでしょう。どこかの時点でさちって落ち着くと思われます。
……きっと。でもそれがどこの水準になるかは不明ですがね……。
とりあえず割烹はここ7年ほど衰退傾向にあるようです。
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活動報告の投稿数が2017年から下がっている一つの理由として、ユーザーの活動の場が多様化していることが挙げられます。SNSの台頭により、活動報告ができるプラットフォームが増えたため、小説家になろう内での報告が減少している可能性があります。いろんなブログサービスもありますし、Twitter(X)やインスタグラムなどで活動報告している人も増えました。わざわざ小説家になろうの機能を使う必要性がないということなのかもしれません。
あとはこれから説明するカクヨムの台頭ですね。
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ではここでカクヨムの近況ノートについて説明しましょう。知らない人もいるのではないでしょうか。
”近況ノートは他のカクヨム利用者に向けて、創作活動や読書日記などを伝えられる場所です。皆さんが気持ち良く利用できるように、分かりやすく思いやりのある表現を心がけて書いていただけますよう、お願いいたします。”
カクヨムより
ちなみに活動報告の説明は以下の通りです。
"活動報告とは、ユーザが小説家になろう内で情報を発信することができる簡単なブログ機能です。"
小説家になろうより
両方の機能は、サイト内でのコミュニケーションを促進し、ユーザー間のつながりを強化することを目的としています。細かい違いはカクヨムの「近況ノート」はより日常的な交流に焦点を当て、小説家になろうの「活動報告」はより公式な発表や更新に焦点を当てているのかと思います。
とは言えほぼ同じ目的で実装されている機能です。
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簡単に機能の仕様比較も行ってみます。
小説家になろうの活動報告:
- タイトル: 255文字以内
- 本文: 20,000文字以内。
- 記事の公開設定: 公開・非公開
- コメント数: 1つの記事に対して最大100件まで。
- HTMLタグ: 一部使用可能。利用可能なタグは変更される可能性あり。
- 画像挿入: みてみんの画像挿入コードを利用可能。
カクヨムの近況ノート:
- タイトル: 100文字以内
- 本文: 10,000文字以内
- 記事の公開設定: 公開・非公開・サポーター限定
- コメント数: 制限なし?
- HTMLタグ: 不可
- 画像掲載: 1つの記事につき1枚の画像を掲載可能。png, jpg形式に対応。
こうしてみると執筆自由度が高いのは活動報告ですね。割烹芸人とかよくわからない存在も生まれていて、たまに変わった活動報告に出会えます。Twitter風とかブログ風とかチャット風とか縦書きとか……。
カクヨムの特徴としてはサポーター限定公開というものがあります。これは簡単に言うと投げ銭してくれた人のみが見ることができる設定のことです。パトロンサービスでよく見かける機能です。ファン限定とかメンバー限定公開とも呼ばれるものです。
ただ仕様を見る限りそれほど大きな違いはなく、文字数制限や挿絵数を見る限り小説家になろうの方が優れているようにも思います。
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さて簡単に機能説明が終わったので、カクヨムの投稿数推移を見ていきましょうか。機能にそれほど差異がないので、こちらも減少傾向にあるのでしょうか?(タイトルでネタバレ済み)
どうやら、カクヨムでは近況ノートの投稿が活発なようです。特に近年増加傾向に拍車がかかっています。活動報告のグラフに一緒に載せてみましょう。
こうしてみてみると昔の小説家になろうのピークに到達しそうであります。もし小説家になろうの活動報告の減少がXやnote, インスタグラムなどのSNSの影響だとするとカクヨムの方も減少していてもおかしくないのですが、そうなっていません。
ということは小説家になろう自体の活発さがなくなっていっているのかもしれません。
もしカクヨムのピークが小説家になろうのピーク付近まで行くのであれば、単純に小説家になろうのユーザーがカクヨムに移っただけなような気がしてきます。カクヨムに作者が集まりつつあることがこのことからも予想できます。
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さて、小説家になろうについての分析は色々なところでされていると思いますが、どうやら近年、作者大移動が始まっているようです。カクヨムと小説家になろうの政策の違い、主に収益化に対する姿勢により徐々にカクヨムを本拠点としている人が増えているとのこと。
実際に小説家になろうとカクヨムの年度ごとの投稿数を比較してみましょうか。
2016年からのグラフを比較してみます。なおこの結果は検索除外、非公開は含んでいません。調査時点の数値であり削除された作品は含んでないので誤差はあります。
誤差はあるといってもそんなに大きな誤差ではなく傾向を見るうえでの支障はありません。グラフを見る限り小説家になろうの年間投稿数は2017年くらいから大体横ばい。2020年、2021年の増加はコロナ禍での巣ごもり需要だと考えられます。それの影響を除くとほぼ横ばいだと思われます。
それに比べてカクヨムは7年間ずっと増えていて2023年になろうを抜きました。投稿数は作者の多さと相関があるのでおおむね作者数もカクヨムの方が多くなったといえるでしょう。PVに関してはこれまでの作品や、メディア化作品の多さも相まってまだ小説家になろうの方が多いですが、作品が増えてメディア化作品が増えればそれも時間の問題かと思われます。
小説家になろうの作品数がそれほど減ってないのはマルチ投稿しているユーザーも多いためだと考えられます。ただ活動報告の減少具合と近況ノートの増加具合を見る限り本拠点をカクヨムにしている人も多そうだと思います。
本拠点での活動報告はするけど、マルチ投稿しているだけのサブサイトでは活動報告はしないという感じでしょうか。そういうことであればこれまでのグラフとも整合性がとれそうです。小説家になろうはPVが多くてある程度宣伝効果があるので投稿だけはするけど、収益化ができるカクヨムがメインといった感じでしょうか。
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ついでなのでエッセイジャンルも見ておきましょう。エッセイ民の皆様も気になるのかもしれません。
カクヨムの場合、以下のジャンルがあります。
◇異世界ファンタジー
◇現代ファンタジー
◇SF
◇恋愛
◇ラブコメ
◇現代ドラマ
◇ホラー
◇ミステリー
◇エッセイ・ノンフィクション
◇歴史・時代・伝奇
◇創作論・評論
◇詩・童話・その他
◇二次創作
このうち小説家になろうのエッセイに該当するのはエッセイ・ノンフィクション、創作論・評論ジャンルになります。この二つのジャンルを含めたものを比較してみましょう。
こちらは両方とも伸びてますが、全体の投稿数と同様2023年にカクヨムが小説家になろうを追い越しました。2024年は明らかにカクヨムの方が多いです。なろう名物エッセイもカクヨムに移動しているような感じがします。
ということで、どうやらエッセイもカクヨムの方が活発になってきているようです。
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最近の小説家になろうの大きな変更、運営方針の転換もそのあたりを巻き返すための処置なのかと思います。これまで長らく業界一位に君臨してきた小説家になろうですが、いろいろな数値から陰りが見えてきます。投稿数はマルチ投稿のためかそれほど減ってはいませんが、サイトのメイン利用者が減っていっていることも確認できます。
それらを回復させるため大きな施策がこれからも出てくるのではと思います。順調な時は変えなくてよかった機能やランキング。それらがすべて変わり始めてきています。これからもいろんな変化があると思いますが、良い方向に向かっていってくれたらいいなって思います。
最悪なのは収益しか追い求めなくなってユーザーをないがしろにしてしまうことです。ユーザーを軽視するところはつぶれるのも早いので、そのあたりはどうにか頑張ってほしいなぁと思います。買収されて魔改造されたゾンビの沸く地獄絵図のような青い鳥の二の舞にはならないことを祈ります。
今後も引き続き小説家になろうとカクヨムの動向を注視していきたいところです。
ということで今回は以上でした。
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収益化するのはいいのですがポイントやPvを目安にすると、青い鳥さんと同じようなインプレゾンビが発生してしまうので機能を作るときは慎重にしないとダメそうです。
収益化設計をみすった場合、インプレゾンビはエッセイジャンルに発生してランキング汚染しそうな気がします。地獄絵図かな。