委員長の意見と委員長の心配事
「ねぇ、さっきは聞きそびれちゃったんだけど、そのアレンって人に会って大丈夫なの?」
マコトの部屋に戻って1人で待っていると、しばらくしてから2人が食べるものをいろいろと持ってきてくれた。そして半分ほど食べ終わったところで質問される。さっき聞かれなかったのは意外に思っていたが、タイミングを掴めなかっただけのようだった。
「反対なの?」
「心配しなくても強く止めたりはしないよ。ただ気になるし、アリシアさんにも聞かれるんじゃない?」
肩肘をついて、頬に手を当てながら話している。強く止めないと言いつつ、どうでもいいとは思っていないようだった。
「やっぱり止められるかな?」
「そりゃそうでしょ。だって、ある意味で死んじゃうかもしれないじゃない。」
意識がアレンに置き換わってしまうかもしれないという意味で、死んじゃうかもしれないというのは正しい。だからこそ、その前にアリシアと会っておきたかった。まだ食べかけだったが、食べるのを一旦やめてしまう。
「それはわかってる。わかってるから会いたいんじゃないか。」
「止められるとは思わないの?もしかして、嫌われると思ってる?」
「えーっと。」
「ちょっと待った。時久が食べ終わってからにすればいいんじゃね?」
白熱しそうな雰囲気を察したのか、マコトが制止してきた。食べかけていたものを口に運びながら、言われたことを考える。むしろ引き留めて貰った方が嬉しいとは思った。こんな話をして、はいどうぞっと送り出されたらどうしたらいいのだろう。
思えば、そのあたりを心のどこかで心配していたからこそアリシアと再会すべきという発想が出てこなかったと思っている。魔王との決着に集中したいというのもないことはないが、一番の理由ではないと考えていた。
悪い方へばかり考えてしまっていた。だから、しっかりと引き留めてもらえるといった理想的なことは起きないかもしれないと思ったんだろう。そんなことを考えながら食事を終え、今考えていることを説明した。
「うーん、私も当事者だからハッキリ言っちゃうけど、気味悪いと思う人はいるでしょうね。でもアリシアさんとは長い付き合いでしょ?今更じゃない?」
「そういうもんか?」
「だって、もう10年近く一緒にいたんでしょ?その間にあった楽しい思い出が無くなるわけじゃないし、大丈夫だと思うよ。」
正確には6年くらいだろうか。出会ったのはもう少し前だった。それから、楽しい思い出はたくさんあるが、前提が崩れてしまっているというのが不安な点だった。
「ほら、出会った時の印象とかさ、プロポーズの気持ちとかさ、そもそもなんで好きになったのかとかさ、そういうのが俺の本当のものじゃなかったかも知れないのは良いのか?」
「良くはないけど、えーっと、2人の気持ちが混ざってることを気味悪いと思われるかもしれないでしょ?でもそれは、どうしようもないよね。」
考えがまとまり切っていないうちにしゃべっているようだった。この話については当事者でないはずのマコトも、どういうわけか真剣な面持ちで話を聞いている。
「ああ、それはそうかもね。」
「でしょ。だから、それは考えてもしょうがなくて。でもアリシアさんとはずっと一緒だったわけだから。実は嫌われてたなら、またどうしようもないけど。うーん、ちょっとよくわからないかも。」
「いや、なんとなくわかるぞ。時久の気持ちが別人の深層心理から来てたとして、まずそれ自体を嫌がられたらどうしようもない。そこをクリア出来てるなら、あとは時久との思い出が楽しかったら問題ないだろうって事だろ?」
マコトが話をまとめてくれた。2人は黙り込んで、今の話を考えているようだった。今の話を聞いた俺は、思ったよりも心配しなくてもいいんじゃないかと思い始めている。
「なんか、あんまり気にしすぎないでもいい気がしてきた。」
「そう、なら良かった。」
と言いつつ、ヨシエ委員長は何か言おうとして迷っているようだった。たとえ良くない話であっても全て聞いておきたかったので、何を考えているのか気になる。
「なんか気になるの?」
「気になるっていうか、この世界の人達が魔源樹の事をどう思っているのかわからないから、そこが心配なだけ。」
魔源樹はアキシギルにしかないので、どう思われるのかわからないのは仕方がない事だった。それは最初からわかっている。
「魔源樹については、しょうがないからね。俺もよくわからない事が多いし。」
「まぁね。あとはココアちゃんか。こっちの方が深刻な気もするんだけど。」
「そうなのか?」
どちらとも、深刻さという意味では同じようなものと思っていたので意外に思う。そう思っているとヨシエ委員長は指摘を続けてきた。
「だって、仕方がないことだけど人生が決まっちゃうような事でしょ?時久君と結婚を決めるなんて。それが自分の本心じゃなかったっていうのがね。私も後押ししちゃったけど。」
申し訳なさそうにしているが、どちらかというと俺が望んだことなので責められるようなことはないと思っている。
「なぁ、それは後回しでいいんじゃないか?どっちにしたって、他のみんなにこの事を話すのはまだ先なんだからよ。」
マコトの言うのはその通りだった。特にココアさんに話すのは最後になるので、後で考えても遅くはない。2人と話していて、アリシアとの再会について気が楽になったので、そっちに集中した方がいいと思った。
今日はこのままマコトの部屋で寝ることにして、明日は朝からアリシアの所へ出発することにした。




