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マコトの予想とマコトの考え

挿絵(By みてみん)


 「よう、マコト。久しぶり。」

 「あれ?時久、1人なのか?」

 エルフは親切にマコトの所まで案内してくれたので、探すような手間を省くことができた。都合がいいことにマコトは部屋で1人だったので、早速声をかけてみる。マコトは俺を見ると一緒に誰かいないのか確認し、誰もいないことを不思議に思ったようだった。

 「そういう時もあるだろ。2人で話せるか?」

 「お、おう。それはいいけど。」

 部屋に入ると、2人とも適当な場所に腰掛けた。デンメスの家には、何故か人間用の部屋がたくさんあるようで、1人1つ部屋を使っているらしい。マコトにだけ、最初に魔源樹の事やこの体の事を話したかったので、これも都合が良かった。

 「聞いたぞ、テルペリオン様の事。大変なことになったらしいな。」

 「そうだな。でも今は別の事を話しに来たんだよな。」

 「まぁ、そうだろうな。転移者の事とかか?」

 「なんで?」

 まるで知っていたかのように答えられた。少し驚いてしまって、つい変な声を出してしまう。マコトはやっぱりといった顔をしているが、少しずつ緊張した面持ちに変化していった。予想はしていたらしいが、いざ話を聞くとなると気が気ではないようだった。そんなところで悪いとは思うが、自分の疑問を聞かずにはいられなかった。

 「あのさ、先に聞くんだが、なんでわかった?」

 「だってよ、元々転移者の事を調べに行ったんだろ?いろいろあったみたいだが、いまさら俺と2人で話さないといけないことなんて、それくらいだろ。」

 話を聞いていて、確かに察しが良いと思った。この魔源樹の体の事を薄々勘づいているという話だったが、気付いてもおかしくない気がする。マコトは早く聞きたくなってきたようで、身を乗り出し始めていた。

 「なぁ、もったいぶるなって。何がわかったんだ?あんまり良い事じゃないのはわかってるぜ。」

 「ああ、そうだな。」

 初めからそれが目的ではあったので、脱線していた話を戻すことにする。転移者の事を説明する。どうやって転移したのか、そもそも魂だけがこの世界に来ていて転移というより転生に近いという事。元々の体はどうなったのか、魂を抜かれておそらく死んでいる事。ではこの体は何なのか、元々は魔源樹で俺達の魂は人間に戻るために使われた事。俺達は、オリジナルの俺達ではない事。マコトはどんどん真剣な表情に変わっていった。さえぎることもせずに黙って聞いているので、何を考えているのかわからない。

 「というわけだ。」

 全てを話し終えた。マコトは頭を抱えながら天を仰ぐような格好をしている。そのまましばらく沈黙が続いた。どう思っているのか早く知りたい気持ちはあるが、そこは我慢してマコトが話始めるのを待つ。

 「なんつーか、予想した中で最悪だな。」

 やっとマコトから出てきた言葉は意外なものだった。最悪と感じるだろうとは思っていたが、転移者について予想していたとは想像していなかった。

 「気付いていたのか?」

 「うーん。魔源樹が基になっているっていうのは驚いたけどな。体が自分のものじゃないというか、まぁそういう感じはしていたからな。」

 マコトは自分の手の平を見つめながら答えている。そんなに驚いているようには見えず、最初から覚悟していたようにも見えた。むしろ俺の話を聞いてスッキリしているようにも感じる。

 「なぁ、これからどうしたらいいと思う?」

 ついマコトに意見を求めてしまう。本当なら俺がしっかりとして、むしろ助言したりしないといけないと思っていた。でもマコトのあまりにも冷静な様子を見て、こんなことを聞いてしまう。

 「どうって、みんなにどう話すか?今はやめた方がいいな。」

 「そうか?」

 その答えは意外に感じる。隠し事をするのが嫌いなタイプだと思っていたので、積極的に伝えようとするんじゃないかと思っていた。場合によっては俺が止めないといけないのではとすら思っていたので、拍子抜けしてしまっている。

 「そりゃ、いつかは伝えないといけないさ。でも、今はな。」

 「なんかあるのか?」

 「ああ、時久は一緒じゃなかったからな。ほら、俺らってこっちに来てからまともな生活出来てなかったろ?最近やっと安定してきたからな、しばらくはこのままの方が良いと思ってな。」

 よく周りの事を考えているなと思った。それに比べて自分はどうなんだろうと考えてしまう。

 「どうした?」

 「いや、俺は自分の事しか考えてないなと。」

 「は?そんなわけないだろ。むしろ俺らの事を考えていたから言い出せなかったんだろ?1人で抱えすぎなんだよ。」

 その通りだと感じていた。全てを自分で解決しようとして、やるべきことを見失いかけていたことを思い出す。これからはそうならないようにしようと誓っていた。


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