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訓練の内容と訓練の準備

挿絵(By みてみん)


 「着いたぞ、早く降りろ。」

 目的地に到着し馬車が止まると、デンメスに急かされた。何もない荒野に連れられてきて、どんなことをするつもりなのか想像できない。

 「準備してくるからな、後は頼んだぞ。」

 それだけ言うとデンメスだけでどこかに行ってしまう。何も聞いていなかったが、エイコム達は事前にやることを決めていたようだった。ルーサさんはココアさんを連れてどこかに行き、早々に野営の準備を始めている。手伝った方がいいかと思いついていこうと思ったが、エイコムに呼び止められた。

 「トキヒサ様には、明日からの事を説明します。」

 「あ、ああ。わかった。」

 もうすぐ日が落ちるので、明日から始まるものと思っていた。ただの説明であっても今日からということは、それだけ危機感を持っているという事だろう。ゆっくりしているつもりはなかったが、自分よりも温度感が高いと感じた。

 「説明はいいんだけどさ、何を鍛えようとしているのかも教えてくれない?たしか、もう1つの恐怖とか言っていたけど、詳しくは聞いてないから。」

 「かしこまりました。では先に鍛える所についてですが、これまでと逆の恐怖を克服してもらう事になっています。」

 「逆?」

 「はい。つまり、自分が傷つく恐怖ではなく、他人を害する恐怖を克服してもらいます。」

 もう1つの恐怖というのは理解できたが、それは怖い事なのだろうかと思った。少し考えてみても、害することの恐怖というものを想像できず、これまで感じたことも無いように感じる。

 「全く想像出来ないんだけど。」

 「はい。これまでは必要なかったものと思われますので、わからなくて当然と思います。」

 これまでというのはテルペリオンと一緒だった間という意味だろうか。いまいちピンとこないというのが正直な感想だった。エイコムも察してくれたようで、さらに説明をしてくれる。

 「テルペリオン様の力は強大ですので、これまではやろうと思えば傷つけずに捕える事は容易だったはずです。今後はそういうわけにはいきませんので、克服が必要と考えております。一度、やってみた方が早いかと。」

 「まぁ、そうみたいだね。」

 説明されている内容自体はわかる気がした。だが、恐怖を感じるというのがどうしても想像できないでいる。やってみた方がいいというのは、その通りだと思った。話を聞いている限り、明日から何をやろうとしているのかは想像できる。

 「何を相手にするの?」

 「はい。私はゴブリン辺りからと思っていたのですが、デンメス様がもっと強く人に近い存在の方が良いとおっしゃられまして。」

 「う、うん。それで?」

 「デュラハンの上位種を探して来るそうです。」

 その魔物はアレンの記憶の中で新人指導で戦った魔物と同じで、少なからずココアさんとも関係のある魔物だった。デンメスが知るよしもない事なので、たまたまだとは思う。魔物討伐をしていたので強さについては大体わかるが、今の実力がエイコムより少し弱い程度とすればギリギリ勝てるかどうかという程だった。

 「トキヒサ様。理解はされていると思うのですが、目的はデュラハンを殺すことですので、手加減はなさらないようにお願いします。」

 「あ、ああ。」

 念を押されたが、容赦をしないという事に苦労するとは思えない。エイコムは相変わらず無表情だったが、言うべきことは全部言ったといった雰囲気だった。荷物を漁り包みを取り出し、そのまま俺に差し出して来る。

 「ではこちらを。」

 「これは?」

 「籠手ですね。トキヒサ様には必要なものかと。」

 包みを開けると金属製の籠手が入っていた。テルペリオンがいないので、拳に何かを纏わせることは出来ない。なので戦うためには確かに必要なものであった。仕留めるためにも必要なものだ。

 「そうだね、今の俺には必要なものだ。」

 「はい。早速つけましょうか。」

 エイコムに促されて籠手をつけようとする。腕にずっとつけていたテルペリオンのブレスレットが邪魔になってしまうと気付き、でも取り外すのを躊躇ってしまう。いよいよ1人で戦うことになるのかと思うと、寂しくなってしまった。

 「どうかしましたか?」

 「いや、何でもない。」

 ブレスレットを取り外し、ポケットに入れた。戦いの前にちゃんとしまっておきたいと思いつつ、籠手をつけようとする。普通の人間用の装備をしたことがなかったので、装着の仕方がいまいちわからず手間取ってしまった。

 「失礼します。」

 見かねたのか、それとも想定内だったのか、エイコムが手伝ってくれた。しっかりと腕に装着し固定する。軽く腕を振るってみたが、どうも馴染まない気がした。

 「遅いですが、明日までに慣らした方が良さそうです。少し手合わせしましょうか。」

 「ああ、よろしく。」

 まだ日は落ち切っていないので、真っ暗というわけでは無い。野営の準備はもうほとんどできているようで気にする必要もなかったので、籠手が馴染むまで手合わせすることにした。


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