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妖精の話したことと妖精の見解

挿絵(By みてみん)


 「ルーサさん、昨日何があったの?」

 「それはね。」

 鍛錬のために馬車で移動している。デンメスが言い出したことで、場所を変えて鍛え直して貰うことになっていた。エイコムは馬車の御者をしてくれていて、ココアさんはさっきまで馬車に乗っていたが今はデンメスの肩に乗って何やら話している。馬車にはルーサさんと2人きりで到着までに時間があるので、どんな話をしていたのか聞いてみることにした。

 「簡単に言うとね。ドラゴンが人間を頼りにするような事態なら、ちゃんと対策した方が良いってデンメスが張り切っているのよ。」

 なんとなく想像していた通りの内容だった。本当に知りたかったこととはズレていたが、話したくないようなので追及はしないことにする。

 「そんなにありえないことだったの?」

 「まぁね、私も迂闊だったわ。」

 俺達の事をよく知っているからこそ気付かなかったのだろう。ドラゴンは、人間というより自分以外の存在とずっと共にいること自体珍しい事だと聞いたことがあった。テルペリオンは特別なんだと思っていたが、頼み事というのは全く考えられないことらしい。

 「こんな大事になるとは思わなかった。」

 「全くだわ。トキヒサがやる気で良かったわ。」

 1人でどこまでやれるかを気にしていて、こんなに注目されるとは思っていなかった。どちらかというと、誰にも気づかれずに奮闘するつもりだった。協力者が増えることは嬉しいと感じている。

 「魔源樹の事とかも全部話したの?」

 「悪いけど、全部話しちゃったわ。隠すべきことじゃないしね。」

 申し訳なさそうにしているが、俺に関することを話さなければいけないのは理解できる。だから、魔源樹について話した事は何とも思わなかった。ただ、どこまで話が伝わっているのかは気になる。

 「いや、隠して欲しかったとかじゃなくて。ココアさんにも話しちゃわないかなと。」

 「ああ、そういうこと。一応、他言無用ってことにしてるわ。転移者がというより、人間が今知るべき情報じゃないって言ってあるから、多分大丈夫だと思うわ。」

 今も2人で何やら話しているようなので気になっていたが、ちゃんと釘を刺して暮れていたらしい。デンメスがどこまで従うのかはよくわからないが、それはもうどうしようもないと思った。それよりも人間が知るべきでないというのが気になる。

 「わかった。それにしても、人間にも話さない方が良いんだね。」

 「そりゃそうでしょ。前提が覆っちゃうじゃない。」

 前提というのは、魔源樹となった後の魂の行方の事だろうか。単純に消滅すると考えられているはずだが、何故そのように考えられていたのか知らなかった。

 「消滅するんだっけ?そもそも、そんな事どうやって調べたの?」

 「うーん。それについてはテルペリオンが1番詳しいはずなんだけど。話が長くなっちゃうし、今は目の前のことに集中しましょ。」

 もうテルペリオンに教えてもらう事はできない。そういう意味だと、アキシギルにとっても惜しい存在を亡くしたということなのだろう。詳しく知ったところで意味がないというのは理解できるが、一つだけ確認したいことがあった。

 「あのさ、色々あって蔑ろにしちゃったんだけど。結局この体が魔源樹だって事、なんて伝えればいいのかな。」

 「それは。」

 ルーサさんは口ごもってしまう。しばらく会うつもりがなかったので考えないようにしていたが、みんなにどう伝えるのかは重要な事だった。テルペリオンとの最後になってしまった旅も、元々は転移の事を調べるためのもので、真相はいつか伝えなければならないとは思う。魔王の事で今はまだ気にならないようだが、ココアさんにもそのうち聞かれる事は目に見えていた。

 「悩ましいわね。話すにしても、あの子は後回しにした方がいいと思うわ。気丈に振舞ってはいるけど、一番辛い思いをしたことに変わりはないから。」

 「まぁ、そうだね。」

 「最初に話すならマコトじゃない?多分、薄々気づいてるわよ。」

 「そうなのか?」

 前に体力が増しているんじゃないかと話していた時は、特に気にしていないようだった。だから気づいているのではというかのは意外に思う。

 「転移前より体力あるって話した事はあるけど、気にしていなかったみたいだよ?」

 「いつの話?ほら、魔法を使えるのはおかしいって話してたじゃない。マコトは詠唱魔法が肌に合わなかったみたいで、他のみんなは素直に受け入れられたんだけどね。どうも違和感を感じていたみたいで、だから力持ちになるなんて地味な事しかやりたがらなかったのよ。」

 話を聞いてすごく納得できる。幻覚だの隠蔽だの、なんというか魔法らしい事をしている中で、マコトだけは何故か力持ちなんていう魔法を使わなくても出来そうなことをやっていた。この体に違和感を感じて、素直に詠唱魔法を使えなかったというのは説得力がある。魔法を使えるのは、魔源樹が勝手に追加した要素なのだから。


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