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トキヒサの休息とトキヒサの来客

 1週間が経ち、訓練は順調だった。頭から飛び込む受け身も取れるようになり、模擬戦で実践することも何度もあった。今日もいつも通り洞窟に行き、テルペリオンに教わった鍛錬をし、エイコムと模擬戦をする。

 「トキヒサ様。そろそろ次の段階に進みましょうか。」

 「はぁはぁ。次って?」

 戦えるようになってきたとは言え、まだまだ力量の差を感じる。体力的には同じくらいらしいが、模擬戦となると何故か先に息切れしてしまう。息を整え終わるとエイコムの話が続いた。

 「既に自分が傷つく事の恐怖は克服しつつあります。あとは時間の問題かと。なので、もう1つの恐怖の克服を始めた方がよろしいかと。」

 「もう1つ?」

 「はい。詳しくは明日にしましょうか。」

 以前と同じように詳細は明日ということになる。もったいぶるのが好きなのだろうか。ただ、疲れている体で話を理解するのが疲れるのも確かなので素直に従うことにする。

 「明日からキツくなるの?」

 「そのつもりでしたが、問題がありますか?」

 「いや、無い。予定通りで頼む。」

 この調子なら3ヶ月後までにかなり感覚を取り戻せそうな実感はあった。少なくともエイコムと肩を並べて戦えそうだと思っている。でも、それでは足りない。魔王を倒すためには、その程度ではいけないと分かっていた。だからこそ一刻も早く準備を終えたいので、キツくなる事自体は問題ではない。

 「キツくなるなら、英気を養っておいた方がいいかなと。」

 エイコムが何やら悩んでいる素振りをしていたので、キツいのは問題ないと念押しする。

 「そういうことでしたか。でしたら力のつく食べ物を用意させましょう。」

 素直に受け取ってくれたようで、俺の望む方向に話が進んでいく。闘技場の片付けをし、ルーサさんも誘って食事処に移動することにした。


挿絵(By みてみん)


 「こんなに食べられるの?」

 「余裕だね。」

 運ばれてきた料理の量を見てルーサさんは驚愕している。訓練で疲れている身としては全然余裕で食べられるのだが、どうも信じられないようだ。

 「ゆっくり食べるのよ。」

 「わかってるよ。」

 まるで保護者のように注意してくる。いつもの事だが、何故か個室を用意してもらっているので急ぐ必要は全くなかった。勢いよく食べている横で、エイコムは上品に口に運び、ルーサさんは少しずつ野菜に手を出している。

 「あれ?何かあったのかな?」

 「さぁ。」

 「確認してきます。」

 外が騒がしくなっている。ガーダンがうるさくするのは珍しいことなので、何が起こったのか気になった。だがエイコムが確認をしに行ってくれたので、とりあえず食べきることにする。

 「ゆっくりって言ったのに。」

 自然と食べる速度が速くなってしまう。何かあったのなら、すぐに行動できるようにしたかった。呆れているルーサさんを横目に見ながら、それでも食べる速度を落とすことはなかった。

 「お待たせしました。トキヒサ様にお客様です。」

 「俺に?」

 「はい。」

 一体誰だろうか。訪ねてきそうな人はたくさんいるが、ここまでやってこれる人は思いつかなかった。加えて言うと、ガーダンが騒ぐ理由がわからない。

 「誰が来たの?」

 「巨人のデンメス様と、名前はわからなかったのですが人間がお一方です。」

 「デンメスが?」

 あの巨人が何の用なんだろうか。一緒に来ている人間が誰なのかも気になるが、最初に気になったことは巨人の目的だった。

 「こんな時間に何しに来たんだ?」

 「聞いておりません。確認しましょうか?」

 「いや、そこまではいい。もう遅いけど、今から会えるかな?」

 「はい。むしろ早く会うことを望んでいるそうです。参りましょう。」

 食事処を出て村に移動する。ガーダン達が忙しそうに動いていた。突然の巨人の訪問で焦っている様子だが、理由はわからない。

 「なぁ、どうしてこんなに慌てているんだ?」

 「それはね、トキヒサ。巨人は誰に対しても横暴なのよ。ガーダンも例外ではないわ。」

 答えづらそうにしているしていたエイコムの代わりにルーサさんが答える。納得できる反面、こんなところまで来て暴れる事があるのかと驚きもした。

 「信じられないって顔ね。」

 「うーん。こんなところまで来て、わざわざそんなことするのかなと。」

 「それは、巨人の事をわかってないわね。見境なしなのよ。長老くらい高齢になると話は変わるんだけど。」

 渋い顔をしながら答えている。巨人が横暴なことをするのはココアさんの一件で知っているが、そこまで無分別だとは思っていなかった。さすがにガーダンに対しては敬意を持って接するものだと思っていた。

 「ところでさ、一緒に来た人間って誰かな?」

 「さぁ。マコト当たりが付いてきたんじゃない?」

 ふと気になって聞いてみる。一番可能性が高いと思いつつ、よく同行を許されたなとも思う。誰が来たのかは、すぐにわかる事ではあった。


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