トキヒサの苦悩と時久の苦悩
来週は朝7時頃投稿予定です。
プライベートな理由で申し訳ありませんが、
引き続き完結に向けて投稿しますので、よろしくお願いします。
テルペリオンに乗って一旦街に帰った後、
代表に事情を説明して警備隊にあいつらの追跡をお願いした。
もちろん壊れたブレスレットを見せながらね。
代表がとても真剣に心配してくれたのは申し訳なかったけれど。
その日はもう日が暮れてしまっていたから、そのまま休んだ。
それで次の日に代表に状況を聞きに来た。
「おはようございます。それでどうなっていますか?」
「おはようございます。残念な報告になってしまうのですが、いまだに処理できておりません。
ただ不幸中の幸いと申しますか、想定よりも被害は少ないです。」
そうなったか、昨日テルペリオンが懸念していた通りになってしまったな。
あいつらは魔源樹の力を無理やり全部絞り出していているから、
いくら技術力において警備隊の方が勝っていても、
出力的な問題で捕まえるのは難しいかもしれないと話していた。
被害が少ないのは当然だろうな。
だってあいつら魔源樹の価値を知らないんだし。
「すみません。俺が捕らえ損ねたばっかりに。」
「いえいえ。トキヒサさまは全力で戦った結果取り逃がしてしまっただけですので。むしろ私共の力不足をお詫びしなければなりません。」
そういう風に言われると心が痛むな。追えば確実に捕らえられただろうから。
テルペリオンに言われて考えた言い訳をここまで信じてもらえるとは。
まっもう引き下がれないし、アリシアを置いていくくらいなら絶対にこっちを選ぶんだけどね。
「それで破損してしまったブレスレットなのですが、どれくらいで直るのでしょうか?」
「それなんですけどね。ブレスレットは最初から作り直さないとならなくって、結構時間がかかりそうなんですよね。」
「左様ですか。」
「あっでも戦えないわけではなくて、テルペリオンと一緒なら問題ないんですよ。とはいえ魔源樹の森のど真ん中でテルペリオンと暴れるわけにはいかないので、なんとか開けた場所にあいつらを誘導できませんか?」
「そういうことですか。少々お待ちください。」
代表は警備隊長と一緒に話し込んでいるな。
森の中にテルペリオンが着地するのは無理があるし、
それに魔源樹はドラゴンの一撃で倒れることはないんだけど、
ダメージを負わないわけでは無いからね。
テルペリオンと森で暴れない方が良い。
「お待たせしました。
警備隊長とも話しましたが、近くに開けた土地がありますので、明日までには誘導いたします。」
「わかりました。では準備をしておきます。」
「人間。私から要望がある。」
「テルペリオン様からですか?なんでしょう?」
「生け捕りにする。その場で殺さないように徹底してもらいたい。」
「え?ですがそれは、」
「最後まで聞け。あいつらは転移者で間違いない。
だが転移者の遺体がどうなるか誰にもわからない。少なくとも魔源樹の周辺で殺すべきではない。」
「そういうことですか。それは確かに。」
「処分については人間に任せる。だが、場所についてはこちらで指定させてもらう。いいな?」
「かしこまりました。そのようにいたします。」
テルペリオンの言うことは、間違ってはいないんだけど、必ずそうなるわけでもない。
むしろ危険の方が少ないから、きっと俺に気を遣ってくれたんだろうな。
でもな、俺はどうしたいんだろう。
「トキヒサ?大丈夫?」
誘導が終わるまでは警備隊に任せることになったからやることがなくて、
ぼーっとしていたんだが、アリシアを心配させてしまったか。
それにしても、衝撃で気絶してしまっただけで、怪我も何もなくて良かったよ。
というかアリシア?顔が近くないですか?
「う、うん。大丈夫。」
「そうなの?トキヒサはどうしたいの?」
「それは。よくわからん。」
「あの人たちとは仲悪かったみたいだね。」
ってアリシアさん?後ろから抱きついてどうしたの?
「そう、だね。」
「でも可哀想に思っているでしょ?」
「そうなのか?」
あいつら以外が同じことしていたら、可哀想に思っただろうけど、うーん。
あいつらとは仲が悪いというより最悪だったからな。
それも一方的にやられていたし。それでも可哀想に思っているのか?
「トキヒサはやさしいから。」
アリシアさん?
頭を撫でてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと心配しすぎじゃないですか?
嬉しいんだけど。
「テルペリオン様もああ言ってくれたんだし、一回話してみたら?なにか出来ることがあるかもしれないし。」
「そうだね。」
出来ること、ね。
なにが出来るって言うんだ?命を救うことなんてできないし、
どうして殺されるのか教えてあげることくらいしかできない気がするんだよな。
そして明くる日。どうやったのかはわからないけど、予定通り誘導できているらしい。
もう少しで森から飛び出してくるはず。
「来たな。それじゃ行こうか、テルペリオン。」
「いやはや。早く終わらせるとしよう。」