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魔源樹の王と魔源樹に敗れて

挿絵(By みてみん)


 長老たちを屠った魔源樹。その住処にあるのは禍々しい形をした城。どこか魔源樹の杖に似ているような気もする。

 「あそこにいるのか?」

 「そう聞いている。見た限り間違いないな。」

 まぁ、あんな趣味の悪い城を建てる奴なんて、魔源樹以外にはいなさそうだしな。

 「あれって、同夜って建てたんだ?」

 「全て、材料は魔源樹だ。」

 全部か。なんというか、驚きより納得感の方が強いな。

 「行くぞ。」

 「ああ。」

 テルペリオンの頭に乗ったまま城へと向かうと、何故か門が勝手に開いていくな。誘っているのか?

 「歓迎されているわけじゃないよな。」

 「だろうな。」

 油断せずに城の中を進んでいく。それにしても何もないな。ただただ廊下とか階段とかが続いていく。不思議なのはテルペリオンが通れる広さがあることだな。

 「なんでこんなに広いんだ?」

 「知らん。魔源樹が通れるようにしているのではないか?」

 まぁ、それくらいしか考えられないか。でもな、この感じは怪物の家というより人間の家に見えるんだよな。様式というか、構造というか、人間が通るのにちょうどいいくらいの大きさの扉がたくさんあるから。

 「トキヒサ、あれを見ろ。」

 「何?」

 テルペリオンが差す方向にあるのは、ひときわ大きい扉。周りに比べてもすごくアンバランスな大きさだな。

 「行くぞ。」

 「ああ。」

 門に引き続き、扉も勝手に開いていく。テルペリオンはなんの躊躇いもなく扉をくぐる。果たしてどんな怪物が待っているのかと思ったら、そこにいたのはただ1つの人影。

 「人、なのか?」

 「トキヒサ、油断するな。」

 「わかってる。」

 部屋の真ん中にある真っ黒な玉座。片肘をついて鎮座していた人は、不機嫌そうにこちらを見ている。顔は、よく見えない。

 「今度はドラゴンか。騒がしいな。」

 「残念だったな。貴様に、もう2度と平穏は来ない。」

 「ふっ。木を切り倒してはいけないんだったか。」

 玉座から降りると、魔源樹の杖を取り出しながらこちらに近づいてくる。顔もだんだん見えてきたんだが、男なのか女なのか。そもそも顔の半分から木の枝が生えていて、よくわからない。

 「反省する気は無いようだな。」

 「反省ね、そんなことしてどうなる?何も変わらんさ。」

 こいつは、どっちだ?魔源樹の意見なのか、それともクラスメートの暴挙なのか、いまいち判断できない。

 「なぁ、名前は何ていうんだ?」

 「名前?なんだろうな。」

 「名前すら忘れたか、魔源樹。」

 名乗らないとはね。テルペリオンも不機嫌になってるし。

 「忘れたわけではない。意味がないだけだ。」

 「どういうこと?」

 「貴様は1つの魂を使って復活した1本の魔源樹だ。私は違う。私は5つの魂を使い復活した全ての魔源樹の王、魔王である。」

 魔王って、また大きく出たな。全ての魔源樹というのは、本当かどうか疑わしいけど。少なくとも本人はそのつもりみたいだな。

 「自惚れおって、」

 「それは貴様らの方だ、ドラゴン。魔源樹の事を何も知らない愚か者が、図が高い。」

 突然、上から重圧が。俺は乗っていたテルペリオンの頭に、テルペリオンは床に押し付けられる。話の終わりとともに魔源樹の杖が振るわれ、俺達は魔法に襲われた。

 「これは、」

 「舐めおって。」

 重圧が薄れていく。テルペリオンが何か抵抗しているみたいで、問題なく立てるようになる。俺は、もう覚悟を決めていた。だから、咆哮を放つ準備をする。

 「少しはやるようだが、いつまで続くかな。」

 テルペリオンは無言でブレスを放つ。だが、もう1本の杖が取り出され、発動した障壁に阻まれる。ブレスの火力が強まっていくが、障壁を破る事は出来ない。

 「その程度か?」

 あざ笑うかのように言い放つと、その体から枝が1本伸びていき、3本目の杖が振るわれる。天井に剣山が現れる。1本の長さが3mはあり、無数のそれが降ってくる。俺は用意していた咆哮を天井へ放ち、剣山をはねのける。

 「ほう、やるではないか。」

 さらに枝が2本伸び、4本目と5本目の杖が振るわれようとしている。テルペリオンはブレスを止めると、前足で直接攻撃をしかける。だが、それも障壁に阻まれ、後ろに弾かれてしまう。

 「これで終わりだ。」

 4本目からは蛇の形をした溶岩が、5本目からは狼の形をした雷が放たれる。テルペリオンは溶岩蛇へブレスを放ち、俺は雷狼にドラゴンのオーラをぶつける。どちらとも押し切られそうになってしまう。なんとか持ちこたえていたが、時間の問題。テルペリオンは突然ブレスの向きを雷狼に変え退ける。だが消滅はしていない。

 「掴まれ。」

 そう言うとテルペリオンは飛び立つ。ブレスで天井を破ろうとしているから、俺も残ったオーラを全て天井にぶつける。大きな穴が開いた天井から脱出する。溶岩蛇と雷狼に攻めたてられるが、どうにかしのぎ切る。そのまま、敗走した。

 「なぁ、その翼。」

 飛行が不安定だと思ったから見てみると、片翼が溶けてしまっている。溶岩蛇を、片翼で直接受けたらしい。

 「心配するな。」

 大きく揺れながら飛んでいる。こんなに揺れるのは初めてで、気を抜くと落ちそうになってしまう。そんな状態で近くにある空地まで飛び、不時着した。


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