トキヒサの今後と時久の行動
「また派手にやったわね。」
ルーサさんはなんだか呆れ顔だな。自分でもこのクレーターみたいになっている地面を見るとやりすぎちゃったかと思うほどだし。
「いや、強くはなかったんだけどしつこくってさ。」
「別に責めてるわけじゃないわよ。それで、これからどうするの?少しはマシな顔になったみたいだけど。」
これからか。そういえば、なんて話せばいいのか考えられていないな。
「テルペリオン。このままアレンの魂を探しに行こうか。」
「ん?私は構わんが、どれくらい時間がかかるかわからんぞ。」
まぁ、どこを探せばいいのかすらわからないからね。とりあえずアレンの魔源樹の所に戻るくらいかな。
「いいじゃない。トキヒサにはまだ考える時間が必要なのよ。一緒に行ってきなさい。」
「ん?ルーサさんはどうするの?」
まるで一緒に行かないような口ぶりだよな。てっきり付いて来るのかと思ったんだけど。
「誰も帰ってこなかったら、みんな心配しちゃうでしょ。私だけ戻って話してくるわよ。時間がかかりそうだってね。」
「ありがとう。助かる。」
確かにみんな心配するだろうね。だとして戻っちゃうわけには行かないし。すごい助かるな。
「いいわよ。それじゃ、私はもう戻るわね。」
「え?もう戻るの?」
「なんだか邪魔しないほうが良さそうだし、こういう事は早いほうがいいでしょ?」
それはそうなんだけど、こんな辺境の地からどうやって戻るんだ?俺達は飛んでいけばいいだけだけど。
「帰れるの?」
「どういう意味よ、失礼ね。一人でも問題ないし、その辺にいるエルフに頼んで送ってもらえば問題ないでしょ。」
「ああ、そうだね。」
つい心配しちゃったけど、そんな必要なかったか。そもそもルーサさんの方が物知りなわけだし。
「それじゃぁね。でも2週間後には長老の村に戻るのよ。その時、またどうするか聞かせてちょうだい。」
「わかったよ。2週間後な。」
「必ずよ。テルペリオンもよろしく。」
「いいだろう。」
ルーサさんは手を振るとあっという間にいなくなってしまった。そんなこと出来たんだな。
「さて、2週間という事だが、一度村には戻るぞ。」
「ん?どうして?」
「他がどうなっているのか確認したい。それにお前も長旅の準備は出来ていないだろ。」
そうだった、他にも子孫がいない魔源樹がいるんだったな。長旅は問題なさそうだけど、食料は確保しないといけないし、長老の村で準備するのはありだな。
「わかった。戻ろうか。」
テルペリオンの頭に乗せてもらい、早速村まで戻る事にする。せっかくだから、ずっと気になっていたことを聞いてみようかな。
「アレンってどういう人だったの?」
「ん?記憶を遡った通りだが。」
「まぁそうだけど、大体の人生しかわからなかったから。テルペリオンから見てどういう人だったのかなと。」
ヨシエ委員長に幻覚として見せてもらったのは、アレンの本来の記憶とは違うものだからな。それにアレンの魔源樹からは死んだ後の事を主に読み取ったから、生きている時にどうしていたのかは実はわかっていないんだよな。
「うーむ、そう言われても、あれが全てだからな。」
「あれってさ、何をやったのかだよな。どういう事を考えるような人なのか気になるんだよね。いい人とかいなかったのかとか。」
「苦労人ではあったな。いい人というのは妾のことか?いなかったようだな。私と行動していた時に、1人だけ仲の良い女性はいたが、その時はもう年だったからな。」
それって、幻覚で見た人の事か。あの人って実在したんだな。テルペリオンもいたし、間違いないだろうな。
「アレンとはなんで知り合ったんだ?」
「エイコムの祖母にエイジェスというガーダンがいたのだがな。それを打ち破った人間がいたと聞いて興味を持ったからだ。当時のエイジェスは免許皆伝一歩手前の実力者だったからな。まさか勝てる人間がいるとは思わなかった。」
エイジェスってエイコムと親戚同士だったのか。どおりで似ているわけだ。
「俺は、アレンに頼り切っていたんだな。」
「どういう意味だ?」
「多分だけど、時久はそんな風に困難に立ち向かったりしないだろうからね。格闘技もそうだけど、アレンの反骨精神のおかげで抗ったり、テルペリオンに挑戦できたんだなと。」
時久の魂に残っている学校生活を思い返すと、本来だったらこんな上手く行かないんじゃないかと思うんだよね。
「それは違う。あの3人を思い出せ。こちらに来た直後の行動は、時久が選択したものだ。本能的に逃げ道を探したり、格闘技で乗り切った部分はアレンの力だろうが、そうしようと決断したのはトキヒサ自身だ。悲観する必要はない。」
あの魔源樹を破壊しまくった3人の事を言っているのか。確かにあれはアキシギルの住人の行動ではないな。魔源樹に手を出したらどうなるか、よくわかっているはずだし。
「アレンの影響を受けているとしたら、もっと感覚的な部分だ。この10年で決断してきたことは、トキヒサの意思と思って構わん。誇りに思うことだ。」




