アレンの戦い方とトキヒサの戦い方
魔源樹の被害はまだ1本、でも残りの9人も同じ事をしようとしているのか。
「何がしたいんだよ。」
「ははは、これが魔源樹の意志だ。」
つまり魔源樹が全て望んでいることだって言うのか?信じられないな。
「トキヒサ、容赦するな。」
「お、おう。」
こんなに怒っているのを見るのは初めてかもしれない。まぁ、俺も手加減する気はないけどね。死なない程度に痛い目を見てもらおうか。
「何故だ、何故邪魔をする。お前も苦労したのではないのか。」
「ああ、苦労したさ。不当に感じたこともある。でもそれは、お互いの常識が違うだけだろ。ちゃんと理由はあるじゃないか。」
とはいえ全て受け入れられているわけじゃないけどね。仕方がないと納得しているだけで。
「理由などない。我らは、人類が強くなることなど望んでいない。」
だから、それは君らの望みじゃないかもしれないけど、そう望んでいる人間がほとんどで。はぁ、もういいや一旦止めてからゆっくり説得しよう。できるかはわからないけど。
「人類の怒りを思い知れ。」
敵の攻撃、火球の飛来、さてどうしようかな。って危ない、当たるところだった。
手加減はしたいから、やっぱり雷の方がいいか。拳に雷、地面を蹴り接近、胸元へ一撃。
感電、停止確認。ん?おかしい、手応えがない。効いていないのか?
「樹木に雷など効くか、馬鹿め。」
まずい、反撃される。後ろへ跳躍、岩壁展開、雷が効かないなら別の手を考えるか。
と思ったら、もう岩壁を破られそうだな。岩弾で迎撃するか?
岩壁が破られる。岩弾の迎撃、失敗、敵の突撃、後ろに飛ばされる。さらに火球が迫り、
「トキヒサ、何してるのよ。」
ルーサさんが間に入って障壁を展開してくれて何とかなったな。
「動きがぎこちないわよ?どうしたの?」
「いや、なんか体が上手く動かないというか。」
どうしたんだ?今までは体が勝手に動いていたのに、そうならないというか。何をすればいいかわからないというか。
「人の体を自由に動かせるわけなかろう?」
今までは何も疑問に思わなかったというか、自分の体だと思い込んでいたからな。
「テルペリオン、手伝ってくれ。」
「待てトキヒサ。」
ちょっと自棄になっているだけかもしれないけど、やられたままというのはな。俺ってどうやって戦っていたんだっけか。確か、魔力を貯めて、魔法に変えて、両手を突き出して、撃つ。おわっ‼︎
「ちょっとトキヒサ、やりすぎよ。」
そんなこと言われても、こんな事になるとは。あわてて狙いを上空に変えたから良かったけど、そのままだったら辺り一面焼け野原だったな。
「やってくれるじゃないか。それともおちょくっているのか?」
そういうわけじゃないんだけど。っていつのまにか全員杖を持っているという事は、魔源樹を破壊してしまったのか。
「残念ながら、こちらの魔力は無尽蔵なのだよ。」
火球が5つと、後ろでも何か準備しているな。格闘技も上手くできず、魔法も暴発するとなると、どうしたものか。
「トキヒサ、どうする?私がやろうか、塵すら残らんが。」
「待ってくれ。試したいことがある。」
要するに、アレンや魔源樹由来の技は使えないってことだろ。俺にもオリジナル技がないわけじゃない、地球じゃ当たり前の技かもしれないけどね。
火球が放たれたな。落ち着こう、いつもの感覚を思い出そう。大きく息を吸いながら、テルペリオンの魔力を練り込みながら、足場も固定しないとな。これでいい、最初に使った時にテルペリオンに驚かれた技。褒められたのは、あれが初めてだったな。
《咆哮》
問題なく放てたな。安定もしているし、なんだかしっくりくる。火球を全てかき消して、敵を怯ませることも出来た。出力を制御して、咆哮を止める。
「やるじゃない。調子戻ったの?」
戻ったんじゃなくて、アレンに頼らなくても使えそうなものを選んだだけだな。
「本調子じゃないね。早く拘束しちゃおう。」
いつもと違って火力でゴリ押ししかできないから、抵抗されると拘束が難しそうだから、今のうちにちゃんと捕まえておきたいな。次は本当にテルペリオンが塵にしちゃいそうだし。
「なんなんだそれは。ドラゴンの力か。」
うーん。合ってはいるんだけど、そのものではないんだよな。テルペリオンの純粋なドラゴンの力なんてこんなもんじゃないし。
「ドラゴンの力はこんなもんじゃないよ。痛い目みないように大人しくして欲しいね。」
じゃないと、今度はタダじゃすまないだろうからね。
「まだだ、まだ終わってない。」
え?どうするつもりなんだ?
「ちょっ、何するんだ?」
あわてて捕まえようとしたんだけど、失敗してしまった。いつもならこんな事にはならないはずなのに。全員、魔源樹に殺到してしまったけど、一体どうなるんだ?




