表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/112

帰る同級生と帰る魔源樹

 次の日に、地球に戻る予定の10人を見送るんだけど、どうも引っかかるんだよな。

 「それでは私達は帰りますので、これにて失礼させていただきます。」

 「一度に帰るのか。」

 「はい、テルペリオン様。皆で協力して作った呪文ですし、地球へも一緒に帰ろうと思います。」

 1人が代表して試してみるとかやらないんだな。シミュレーションを信じすぎじゃないか?

 「失敗したらとか考えないのか?」

 「九十九は心配性だな。大丈夫だって。」

 「ならいいけど。」

 自信満々だな。発動時に衝撃があるとか言うから、離れて見守ることにするけど。どうなることやら。

 「ルーサさんはどうなると思う?」

 「失敗するんじゃない?」

 「どう失敗するのかなと。」

 魔力量が足りない時って、どうなるんだっけ。

 「その場合は何も起きないな。お前もやったことがあるんじゃないか?」

 「ああ、そういえば。」

 テルペリオンに出会う前に魔法を使ってみるように言われて、その時は何も発動しなかったんだったな。それも魔力量が皆無だったからわけで、足りない場合も同じように何も発動しないわけか。っと思っていたら始めるみたいだな。どんな呪文なんだろうか。

 『憤りし魂の帰還』

 ん?なんて言った?地球に帰る呪文には聞こえない。むしろ、

 「テルペリオン、今のってどういう意味だ?」

 「知らん。地球に帰るのではないのか?」

 そう言っていたな。でも全然そんな雰囲気じゃないけど。なんか魔法自体発動しちゃってるみたいだし。

 「どうなってる。」

 「あの杖って、もしかして魂の塊だったの?」

 「そのようだ。魔源樹の魂がどこに行ったかわからなかったが、あの杖がそうだったのか。」

 のんきに言っている場合なのか?禍々しい杖が大きくなって、全員飲み込まれてるけど。大丈夫、なわけないよな。

 「止めてくる。」

 「ちょっと、トキヒサ。」

 飛び出したのはいいけど、どうやって止めればいいんだ?杖はどんどん大きく成長していて、もはや魔源樹のようになっているけど。というか魔源樹そのものだ。

 「おい、どうなってる?返事しろ。」

 反応がない、というか魔源樹が10本も同時に成長しているから何も聞こえないし近づけない。中はどうなっているんだ?

 「トキヒサ、無理よ。離れましょ。」

 ダメか。何がシミュレーションだよ。

 「ルーサさん、あの杖が魔源樹の魂ってどういうこと?」

 もはや止められないと思って、ルーサさんの言うとおりに離れるんだけど。杖が魂ってどういうことだ?

 「どうって、言葉通りの意味よ。トキヒサ達の魂がその体に上書きされたとして、元々の魂はどこに行ったのかって話。魂の形自体は魔源樹になっていたから、追い出された魂が杖の形になったのでしょうね。」

 なんでそうなる?いや、今は離れるか。もはや見守ることしかできないしな。


挿絵(By みてみん)


 「終わったか?」

 「そのようだ。」

 ようやく収まったのはいいんだけど、これは。杖は魔源樹の姿に戻った後に、どんどん縮んでしまって、最後に人型になった。でもあれって、誰だ?

 「つまり、魔源樹の基だった人間に戻ったってことか?」

 「あるいは、既にほとんど戻っていたか。」

 テルペリオンは冷静に分析しているけど、俺はすごく不快だぞ。下手すれば同じ事になるかもしれないんだろ。

 「トキヒサ、心配しなくても大丈夫よ。あなた達はあんな風にならないから。」

 「そうなのか?」

 「ええ。転移者が何者なのか、散々調べたもの。2つの魂が同居なんてしていたら、流石に気付くわよ。」

 言われればそうなんだろうけど、気分の問題だからな。

 「私も保証する。心配するな。不安はぬぐえんかもしれんがな。」

 テルペリオンとは記憶を一緒に遡ったし、説得力はあるけどさ。

 「それよりも前を見ろ。我々に用があるようだぞ。」

 見てみると何人かがこっちに向かってきている。友好的、な感じではないな。嫌われる理由はわからないけど。

 「アレン、ヘマしたな。せっかく一番乗りだったのにな。」

 「なんだ?いきなりだな。」

 「ははっ、こりゃいい。1人で先に戻った結果がそれか。」

 そんなこと言われてもな。俺だけ10年先にこっちに来たことなんだろうけど、どうしてそうなったのかわからないしな。

 「それじゃ、せっかくだから教えてもらえるかしら?どうしてトキヒサだけ10年先にこっちへ来たのかしら?」

 「ん? 我らが必死に維持していた道を、コイツは何の協力もせずに1人で帰ったからな。」

 あれ?ため口だな。さっきまで敬語だったのに、どうしたんだ?まぁ別人といえばそうなんだけど。

 「貴様ら、目的はなんだ?」

 「目的?それはこちらのセリフだぞドラゴン。どうして我々は魔源樹にならねばならん。」

 おいおい、それを言うのか。というかこの感じ、そうとう怒っているみたいだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ