同級生の話と同級生の目的
「確かに変ね。マコト達と最初にあったときは、無邪気に話しかけてきたものよ。」
「トキヒサなど、私に喧嘩を売ってきたからな。」
とりあえず家に上がらせてもらって、他の人達を呼んでもらっている間に話しているんだけど、全員変だと思っているみたいだな。
「マコト達も変わっているのかしら。」
「いや、マコトはそんなに変わっていない。」
まぁ、ちょっと印象が違うところはあったけど、ここまでの違和感は無かったな。そのちょっとした変かも、いや今はやめておこう。
「だが、トキヒサの事は知っていた。」
「そうなんだよな。」
俺の事を知っている以上、クラスメートであることは間違いない。でも性格は完全にこちらの世界のもの。ということは魔源樹の記憶というか深層心理が強く反映されているんだろうけど、なんでだ?
「時間が経てば、ああなるのか?」
「それはないでしょ。だってトキヒサは10年こっちにいたんだもの。」
「同意見だ。むしろ我々の文化を知らなすぎる。」
悪かったな、知らないことが多くて。でもなぁ、じゃぁなんでなんだ?
「これからどうする?」
「まずは魔源樹に手を出していないかの確認だな。話はそこからだ。」
「まぁ、そうか。」
そもそもそれが目的だったな。なんだか不気味な状況で忘れるところだった。俺もアレンの影響を受けているわけで、でもヨシエ委員長とかマコトの反応を見る限り大きな影響は受けていないはず。なんだけど、本当に大丈夫だろうか。ちょっと考えてしまうよな。
「トキヒサ、ボーっとしないの。帰ってきたわよ。」
「あ、ああ。」
この集落の住人が帰ってきたらしい。
「お待たせしました。」
何人いるかと思えばちょうど10人だな。家の数もそれくらいだったから、1人1軒なのかな。
「それで、お話というのは何でしょうか?」
いやー、やけに丁寧だな。やっぱり違和感しかない。
「これで全員か?」
「はい。この集落で暮らしているのは、これで全員です。」
「みんなは、こっちに転移してきたのよね。」
「その通りです。」
10人全員頷いているってことは、クラスメートしかいないんだな。そう言われれば、なんとなく顔を覚えている気もする。
「なぜ人里に降りずにこんなところで暮らしている?」
「この世界の人間を信用できないからです。」
「ん?なんでだ?」
信用できないって、いきなりだな。
「俺たちは見たんだ。人が人を処刑して、人が木に変わっていくところをな。」
「え?どこで?」
「この森のはずれだ。九十九も気を付けた方が良い。」
森のはずれって。もしかしてあれの事か。
「処刑されていた人達って、老人ばかりじゃなかったか?」
「老人?どうだったっけ?」
確認してもらうと、若い人は見なかったらしい。やっぱりそうか。街中で魔源樹になられると困るからな、切り倒すわけにはいかないし。だから死期が近付いた老人は、森のはずれで魔源樹にするんだよな。いわゆる安楽死に近い。ちょっと大変だけど、説明してやるかな。
「つまり、呪いとかで木にされたんじゃなくて、元々木になっちゃう体質だって言うのか?」
「体質っていうか、うーん、まぁそれでいいんじゃない?」
「そうか。」
納得したのか?よくわからない反応だな。
「誤解が解けたのなら、もう1つ聞きたいことがあるのよ。」
「何でしょうか?ルーサ様。」
ダメだ。なんか不気味だ。地球の要素とこの世界の要素が混在していて違和感しかない。なんだよルーサ様って。
「この家って、魔法で作ったの。」
「はい。1人1軒作っています。」
「どうやって?」
どうなんだろうね。杖1本って、だいたい魔源樹1本分のはずだから、家を建てるくらいなら余裕なんだけど。他に何かやっていなければ、魔源樹を壊して杖にしたりはしていなさそうだな。
「どうと言われましても、魔法を使ったとしか。」
「魔源樹に手を出したのか?杖は何本持っている?」
「テルペリオン様、何のことでしょうか?杖はこれ1本だけですが。」
と言いながら杖を見せてくれたんだけど、相変わらず禍々しいな。
「1本だけか。ならばいい。」
「あ、はい。どういう事だったんでしょうか?」
疑問に思うのも無理はないな。その辺も説明してやるかな。
「なるほど。魔源樹を切り倒していないか確認したかったという事か。実際に人が木になるところを見ていたから、手を出しにくくてな。わざわざ切り倒す必要もないしな。」
まぁ、それもそうか。切り倒す必要が無いって、当たり前なんだけど実際に切り倒した奴らがいるんだよな。
「とにかく、魔源樹には手を出していないってことね。なら問題ないじゃない。あなた達はこれからどうするの?」
「はい。地球に帰ろうと思っています。」
は?帰るって、そんなの無理だよな。だってこの体自体が魔源樹で、地球の体は魂を抜かれてもう死んでいるんだから。
「戻るって、どうやって?」
「呪文が完成したんだ。九十九も帰るか?」
いやいや、そんな簡単に出来るわけないじゃないか。出来ない、よな。




