長老の葬儀と長老の言付け
長老達の村が見えてきたな。早く妖精の長老と話をしたいような、そうでもないような。どうせ真相は変わらないんだから、いつ話しても関係ないんだけどね。
「なぁ、突然会ってくれるのか?」
最初に来たときは事前にテルペリオンが話をつけてくれていたみたいだけど、今回はそういうわけじゃないからね。
「わからん。会えそうになかったら先を急ぐぞ。」
ああ、そういう感じね。でも長老ってそんなに忙しいのか?
「長老って、いつも何しているんだ?」
「何もしていないが?ただ自分の種族の下へ帰ることがあるからな。」
何もしていないのね。里帰りするのは構わないんだけどさ、本当にただの平和の象徴って感じなんだな。
「着いたぞ。何かあったようだな。」
確かに、なんだかガーダン達があわただしく動いているな。というか後片付けでもしているのか?テルペリオンの姿を確認したガーダンが1人近づいてくるんだけど、なんだか神妙な面持ちだな。
「これはテルペリオン様。葬儀は滞りなく執り行われました。」
葬儀?誰の?テルペリオンを見ると、何のことだかわからないといった雰囲気だな。
「別件にかかりきりでな。誰の葬儀だ?」
「これは失礼しました。妖精族の長老様の葬儀となります。こちらでの儀式は終了しておりまして、ご遺体は妖精族の下へお送りしたところになります。」
よりによって妖精の長老か。けっこうな年だったみたいだから、仕方がないのかな。
「そうか、献花台はまだあるか?」
「はい、もちろんでございます。ご案内いたしましょうか?」
「頼む。」
ガーダンに連れられて妖精の長老の献花台へ向かうことになった。献花台には色とりどりの花々が献花されていて、つい最近の事だと実感するな。それで、そばにまだ妖精がいるんだけど、あれはルーサか?
「ルーサさん、久しぶりだね。」
「えっ?トキヒサ、どうしたの?」
「一応、長老に会いに来たんだけどね。」
それで俺の記憶の中で妖精の長老が何を見たのか聞きに来たことを伝えると、ルーサはとても悲しそうな顔になってしまったけど、なんでだ?
「そうなのね。どうしても知りたいの?」
「そりゃそうでしょ。何か聞いているの?」
この様子だと、やっぱり妖精の長老は何かを見たんだな。それをルーサに伝えたということか。
「エルフの里で、長老様がご臨終と聞いたのよ。急いで駆けつけたら、私にトキヒサ達の事を伝えて旅立たれたわ。」
「俺達って、転移者の事?」
だとしたら、それを教えてくれないだろうか。元々聞きに来た事だし。
「そう、ね。でも私からは何も教えられないの。テルペリオン、後で話をさせて頂戴。」
「私か?構わんが、何故トキヒサには教えられない?」
「それも含めて説明するわ。今日は泊まっていって。」
どういうことだ?なんで教えてくれないのか。そんなに良くない事だったのか?
「ルーサさん。実はもう知っていることもあって、アレンって人の魔源樹に何か悪い事をしてしまったのか?」
「アレン?そう、そんな名前だったのね。」
それだけ言うと、なんだか考え込んでいるけど、どうもハッキリとしないな。早く真相を教えてくれた方が楽なんだよね。例えどんなに不都合なものであったとしてもさ。
「あのさ、俺はなんにも覚えていないんだけどさ。遠慮しないで話してもらえないかな。」
「遠慮なんかじゃないわ。話せないのには、ちゃんとした理由があるのよ。トキヒサは何が起きたと思っているの?」
まさかの逆質問。でもアレンが関係していることは間違いなさそうだし、その魔源樹を目指したことは正解だったみたいだな。理由っていうのはよくわからないけど。転移の時に何が起きたか。直感では体を乗っ取ったと思ったんだけど、それだと転移にならないしちょっと違う気もするんだよな。
「何って、俺が転移する時に、アレン魔源樹の力を使ってしまって、そして魔源樹が壊れてしまったとか?」
それなら転移地点に壊れた魔源樹があったことの説明は出来るよな。この体の中にアレンの記憶があるのは、魔源樹の残滓とか?転移者の中で俺だけ強いのはアレンが格闘家として優秀だったからとか。
「それで心配しているのね。安心して頂戴、トキヒサは悪くないから。話せないのは別の理由よ。」
ならさ、なおさら教えてくれていいんじゃないか?どうして隠す必要があるんだ?でもな、聞いても教えてくれそうにないんだよな。
「トキヒサ。私が話を聞く事になっているようだ。問題あるまい。」
「それは、まぁそうだけど。」
結果としてはそれでも問題ないんだけどさ。なんか釈然としないんだよな。と思いながら渋々泊まる事にすると、テルペリオンとルーサさんは2人で話すらしい。一体何を話すのやら。それにしても、1人きりの夜なんて久しぶりだな。




