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2人きりの日々と2人の決定

 テルペリオンが行ってからそろそろ1週間になるか。ココアさんは順調に回復していったけど、まだいろんなところに出かけることは出来ない状態なんだよな。だからいつもはココアさんと一緒に家の中でゆっくりするくらいしか出来なかった。この辺りには何もないし、せいざい景色のいいところに連れていく事くらいだし。こんなこと言ったら怒られそうだけど、テルペリオンに運んでもらえるのってすごく便利だったんだな。

 今は夕方で、ココアさんと飲み物を飲みながら昔の話をしていた。こっちに来た直後の話はあんまりだけど、テルペリオンとかパトリックに出会ってからの話は面白く語れるからな。

 「本当に、こっちに来る前の時久君とは全然違うね。」

 「そうか?」

 「うん、なんかワイルドになった感じ。環境って人を変えるんだね。」

 環境、ねぇ。本当にそれだけが原因なのか疑わしいもんだけどね。その辺は次の旅で全部わかるんだろうけど。もしかしたら、テルペリオンとは最後の旅になってしまうかもな。

 「テルペリオンと出会わなかったら、ここまでのことは出来なかったさ。」

 「ふーん。信頼しているんだね。」

 「まぁな。」

 信頼か。ついこの間もっと信頼しろとか言われちゃっていたけどね。別に疑ってるとかじゃないんだけどさ。

 「なんだか羨ましいな。」

 「そうか?」

 「だって、なかなか出会えないよ。そんな人とは。」

 人じゃなくてドラゴンなんだけどね。まぁあんなに頼りになる人となかなか出会えないって言うこと自体はその通りだと思うけどさ。

 「まぁ、そうだな。」

 「ふふ。でもさ、テルペリオンとパトリックの話ばかりで、アリシアさんの事は話してくれないんだね。」

 「いや、それは。」

 嫌がるんじゃないかと思ってあんまり話さなかったんだよな。いくら同意してもらったといっても、いきなり決断を迫ってしまった事だし。

 「あんまり気を使わなくてもいいよ。アリシアさんとも仲良くしたいなぁって思っているし。」

 「そう、なのか。じゃぁ次は呼んでくるよ。」

 「よろしくね。それにしても、毎晩アリシアさんと一緒なの?」

 いや、ちょっと待ってくれ。それはそうなんだけどさ、そんなジト目でこっちを見ないでくれよな。

 「それは、だな。」

 「ふーん。やっぱりね。」

 「いや、まぁ。」

 想像通りですよ。なんだろうね、悪い事しているわけじゃないのに罪悪感を感じるな。

 「まっ、ある意味期待通りなんだけどね。いきなりそんなこと私に求められても困っちゃうし。」

 「ごめん。」

 なんというか妻というより許嫁っていう距離感だし、いきなりはねぇ。

 「謝らなくてもいいよ。むしろ嬉しいというか。」

 「ならいいんだけど。」

 そうは言っても選択肢がなかったからな。お互いにどうやって歩みよればいいのかわかっていないんだろうな。

 「あれ?誰か来たのかな?」

 「みたいだな。」

 ノックの音が聞こえて誰が入ってくるのかと思ったらパトリックか。珍しいな。

 「邪魔するぞ。」

 「何かあったのか?」

 何だろう急に来た割には焦りが無いというか、ずいぶん落ち着いているな。

 「実は前から決まっていたことなんだけどな、俺とクレアは明日ここを出ていくことになっているんだ。」

 「え?聞いてないけど。」

 「すまん。タイミングがわからなくてな。」

 まぁ、最近の昼間はココアさんに付きっきりだったからな。割り込みにくかったのはあるかもしれない。

 「なんか悪かったな。」

 「いや、とにかくそういうことだから。邪魔したな。」

 パトリックはとっとと出て行っちゃおうとしているけど、せっかくだからちゃんと紹介した方がいいかな。

 「ちょっと待てって。挨拶くらいしていけば?」

 「ん?大丈夫なのか?」

 「もう大丈夫だ。」

 最初の頃は大変だったからな。ココアさんはすごいショックを受けていたみたいで、突然泣き出したり、酷くおびえちゃったりしていて、そのたびに女性陣が面倒を見ていたんだよな。俺はむしろそばから離れるなって言われていたけど、パトリックとマコトは近寄りがたい感じになっていたみたいだな。

 「どうも、パトリックです。」

 「はい。時久君からよく話を聞いています。」

 「あ、はい。おいトキヒサ、一体何の話をしたんだ?」

 「何って、昔の事をいろいろと。」

 2人でやんちゃしていた話は受けが良かったからな。つい話し過ぎた感はあるけど、問題ないはず。

 「まぁいいけど。他に無かったのか?」

 「テルペリオンと暴れた話とか?」

 「もういい。」

 なんか呆れている様子だな。理由はよくわからないけど。その後はパトリックも含めて他愛もない事を話して、気付けば日が落ちてしまった。

 「もうこんな時間か。それじゃトキヒサ、見送りくらいしろよな。」

 「わかってるって。」

 「私は、どうしよう。」

 うーん、外にはデンメスもいるからな。あんまり家、というか部屋の外には出て欲しくないんだよな。

 「見送りは大丈夫ですよ。後でクレアにもここへ来るように伝えておくので、そこで挨拶しておいて下さい。」

 「そうですか?・・・ではそうさせてもらいます。」

 回答にちょっと困ったみたいで、俺に目配せしながら確認してきたから、問題ないと伝えると部屋ですませると回答してくれた。でも、そろそろ運動も始めた方がいいよな。ちょうどいい場所があるといいんだけど。


挿絵(By みてみん)

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