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次の旅と次にすること

 「終わったらすぐに話すのではなかったのか?」

 テルペリオンにちょっと待っていて欲しいって伝えたんだけど、予想通りの反応というか。いっそまだ終わっていないことにするか?末次さんが落ち着くまでってことにすればなんとかなるかもしれないな。いや、やめておこう。ただの詭弁にしかならない気がするし。

 「ごめんって。ただのお願いなんだけどさ。」

 「その娘の事が心配なのはわかった。だとしても話をするくらいなら今すぐできるであろ?」

 それはそうなんだけど、仕方がない、話すか。それで今すぐじゃないとダメとか言われたらそれまでだな。

 「わかったよ。どこから話せばいいのかわからないんだけどさ。とりあえず、アレンって誰か知っている?」

 「アレン?・・・知っているといえば知っているが、どういうことだ?」

 「この体は、アレンのものかもしれない。」

 それで、心を繋いで話をしていた事、その時に自分の深層心理を基にした幻覚を使っていた事、幻覚の中に何故かテルペリオンもいた事、最後にアレンの記憶を遡った事、あまりにリアルな記憶が存在した事を説明する。テルペリオンは最後まで黙って話を聞いてくれたけど、一体何を考えているんだ?

 「それで、何を心配しているんだ?」

 「心配っていうか、もしかしたら転移するときにアレンの体を使っちゃったんじゃないかなと。」

 全く覚えていないとはいえ、他人の体もしくは命を使って転移したのかもしれないからな。この世界の住人がそれを聞いたらどう思うだろうか。テルペリオンは多分アレンと知り合いだと思っていたし、この反応を見る限り知り合いなんだろうな。

 「なるほど。それで話したくなかったというわけか。」

 「まぁ、でも話さなきゃなとは思っていた。」

 「わかっている。」

 テルペリオンは1人で考え込んでしまっている。一体どんな結論がでることやら。

 「状況は理解した。アレンの事だが、私の知っているアレンは既にこの世にいない。」

 「ん?それは俺のせいって事?」

 「そうではない。お前が私と出会うずっと前に他界している。」

 ずっと前って事は、じゃぁ俺が来る前に魔源樹になっていたって事なのか?

 「いいだろう。私も1人で調べる事が出来た。その間はその娘の面倒を見てやるといい。」

 「いいのか?」

 「せいぜい1週間ほどだがな。」

 1週間か。短い気もするけど、そこはしょうがないかな。

 「ではな。」

 「え?もう行くのか?」

 「重要事項であることに変わりはない。トキヒサ、この10年でお前が失くしてしまった事をもう一つ教えておこう。」

 「何?」

 「勇気だ。」

 それだけ言い残すとテルペリオンは飛び立って行ってしまったけど、どういう意味なんだ?うーん、わからん。とりあえずアリシアと他のみんなにも事情は話に行かないとな。


挿絵(By みてみん)


 「じゃぁテルペリオン様が戻ってくる間では、ココアさんと一緒にいるってことね。」

 「そうなるね。その後もテルペリオンと一緒に出掛ける事になっちゃうけど。」

 「うん、いいよ。だけどなんだか寂しくなるね。」

 ここのところずっと一緒だったからな。でもこれからしばらくは、アリシアと2人きりの時間は無いだろうな。

 「ねぇ九十九君。私たちも心愛さんの様子は見てきたんだけど、しばらくここで暮らせるのかな?」

 「どうだろう。デンメスに聞いてみないとわからないな。」

 そんなこと約束していないからな。デンメスの家だし、聞いてみないと何とも言えないな。

 「そうだよね。この辺で暮らすとしたらここか私たちが止まっていた小屋くらいしかないでしょ?」

 「まぁな。」

 「ここの方が快適だから、できればこのままの方が良いかなって。」

 かなり弱っていて遠くに移動するのは難しいからな。それが現実的なのはわかるけど、本人次第だな。

 「本人が嫌がらなければいいけど。」

 「それは、でも九十九君がずっと一緒にいるんでしょ?」

 そのつもりではあるけど、そういう問題なのか?

 「まぁ、そうだけど。」

 「じゃぁきっと大丈夫よ。」

 うーん、それならいいのかな。

 「じゃあさじゃあさ。2人だけで過ごせるように私たちでサポートしようよ。」

 「同意。」

 「いいな、それ。時久はしっかりしろよ。」

 お、おう。なんだかみんなやる気満々だな。助かるからいいんだけどさ。

 「わ、わかったよ。」

 「あの、みなさん。ちょっとトキヒサと2人で話してもいいですか?」

 「えっ、はい。もちろんです。みんな行こう。」

 4人はそそくさと出ていくけど、アリシアに気を使ってくれているのかな。みんないなくなるとアリシアが正面に移動して話しかけてきた。

 「ちゃんと、帰ってこれるんだよね。」

 「それは、」

 帰りたいに決まっているさ。でも転移の時に何があったのか、それ次第になっちゃうからな。約束はできない。

 「わからないのね。」

 「ごめん。」

 「いいの、しょうがないことなんでしょ。でも最近さ、次から次にいろんなことが起きるなって。」

 まぁね。ここのところ次々に転移者がやってきて、その対応ばかりしているからな。なんとなくだけど、この感じはまだ続く気がするんだよな。だって、クラスメート全員がこっちに来ているとしたら、まだ見つけられていない連中がいるはずだし。

 「きっと大丈夫だよ。次で転移者の事が全部わかるはずだからさ。」

 「そうなの?」

 「ああ。」

 転移者が何者なのか。それがわかれば、俺達だけで転移者全員の事を考えないといけない状態では無くなるはず。たとえどんな結論になったとしても。

 「私、不安なの。この先どうなっちゃうのかなって。」

 「きっと大丈夫だよ。テルペリオンを信じよう。」

 「そんなの、わかってるけど。」

 アリシアは俺の胸元に額を当てながら抱きついてきたけど、なんだか肩が震えている気がするな。いつも以上に強く抱きしめ返すと、ポロポロと泣き出してしまった。そんなに不安だったのか。昨日から大切な人が泣いてばかりで、ちょっと応えるな。

 「いざとなったらテルペリオンを倒してでも戻ってくるさ。」

 「なにそれ。無茶しちゃダメだよ。」

 アリシアはクスクスと笑いながら返事をしているけど、少しでも気が紛れてくれたのなら良かったよ。


4章【終】

 お読みいただきありがとうございます。

これにて4章は終了となり、5章が開始となります。

 5章では話が佳境となり結末に向けて大きく進んでいきます。


 ご感想ありがとうございました。

 正直、立ち止まるべきかとも思いましたが、

活動を始めた時に”結末までしっかり書く”ということを第一の目標としており、

連載開始時点でおおまかな展開や結末は決めてありました。

 なので結末までしっかりと走り切ろうと思います。

(というよりも走り切らせてください。)


 さて、4章投稿中も☆☆☆☆☆の評価と、

ブックマークが順調に増えてきており大変うれしく思います。


 引き続き作品をお楽しみいただければ幸いです。


 今後ともよろしくお願いします。


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