魔物探索と魔物討伐
「なぁ、これからどうしたらいいと思う?」
「戦い方を教えるんだろ。」
「そうじゃなくてだな。」
テルペリオンに相談してみたんだけど、俺の本来の目的を知っているのか?なんで一緒に来たんだ?このままだと戦い方を教えるだけで1日が終わってしまうよな。
「どうした?」
「いや、何でもない。」
まともに話を聞いていないな、これは。まぁ、勝手にやってることだからしょうがないんだけどさ。頼りにはしない方がいいだろうな。
「ところで、そろそろかな?」
「そうだ。」
デュラハンの生息域まであと少しか。都合よくはぐれた個体が見つかるといいんだけどな。
「それにしても、珍しいな。」
「何が?」
「お前が女性に興味を持つとはな。」
アリシア以外の女性って意味だよな。そりゃそうでしょ、でも今は状況が違うからな。
「そう見える?」
「当たり前だ。いつもなら、あの程度の戦いしかできない娘は突き返しているだろ?」
は?そんなことした事あったっけ?いや、流石にそこまで邪険にはしていないはずだよな。からかっているのか?
「そんなにだったか?」
「まぁ、たまにはいいのではないか?」
まさかだけど、幻覚の中で楽しんでいるだけの痛い奴と思われてないか?終わったら事情はちゃんと説明した方が良さそうだな。
「着いたぞ。」
おっやっとか。それじゃぁ、気になることはあるけど、一旦後回しかな。
「どこでもいいから降りてくれ。テルペリオンが一緒だと誰も近づかないから、しばらく待ってて。」
「いいだろう。」
「なかなか見つからないね。」
「数が多い魔物じゃないからね。今日中には見つかると思うよ。」
デュラハンって数は少ないけど、同じ道をぐるぐる回っているから、注意深く痕跡を探せばちゃんと見つけられるんだよね。だから闇雲に歩き回らない方が良かったりする。
「そんなに戦いたいの?」
「戦いたいというより、強くなった方がいいかなぁって。変かな?」
「変ではないかな。」
強くなって巨人に抗いたいのか。そんな心の声が聞こえる気がするな。ここでの会話って、実際の心にも反映されるんだよな?じゃないとプロポーズする意味がないというか、ここで何を合意したところでってなっちゃうからな。だとしたら、ちゃんと鍛えれば心のケアにもなりそうだ。
「それならしっかり鍛えないとな。よほどのピンチじゃないと助けないから、そのつもりで。」
「はーい。なんだか鬼教官みたいだよ?」
「おう。ビシバシいくぞ。」
この状況でどうやってプロポーズすればいいのか全くわからんし。かといって何もしないわけにもいかないし。もういいや、きっちり鍛えてしまおう。少なくとも親睦は深まるし、心のケアにはなりそうだし、問題ないだろ。厳しくしすぎて嫌われちゃうのだけは気をつけないとな。
「あっ、ちょっと待ってくれ。」
デュラハンの痕跡っぽいのがあるな。鎧でできた傷跡みたいな感じだけど。傷の数が少ないし、単独で行動しているはぐれ個体みたいだ。
「これがデュラハンの?」
「そうだな。さてと、」
テルペリオンの力を借りれば、とっとと痕跡を辿ってデュラハンに追いつけると思うんだけど、どうしたものか。それだと味気ないよな。
「逆に辿ればそのうち遭遇するから、一緒に辿るか。」
「はーい。」
せっかくだし自分達だけでやってみようかな。そもそもテルペリオンの力がどこまで使えるのかはわからんし。
「九十九君って、なんでもできちゃうんだね。」
「そ、そうか?」
そりゃ幻覚の中だしな。自分に都合が良いようにできているだろうし。現実だったらここまでできるかはわからないな。っとそんなこと考えていたら見つかったな。思った通りはぐれ個体みたいだ。
「ほら、お待ちかねの魔物だよ。」
「本当だ。行ってきて良い?」
「良いよ。思いっきりね。」
「わかった。」
ハンマーを担いで真正面から挑んでいくけど、思った以上に圧倒的だな。デュラハンがたまたま弱い個体だったのか、幻覚の中だからこうなっているのか。多分幻覚の中だからだろうけど、それにしてもという印象。だって一振りで鎧がひしゃげちゃってるんだもの。
「ふう。九十九君、やったよ。どうだった?」
「どうって、なんかすごかったね。」
「へへーん。」
もはや原形が。現実だったらちょっと引いちゃっていたかもな。単に鎧だったものの塊があるだけだから、そこまでではないんだけど。
「今日はこれでおしまいかな?」
「うーん。そうだね。」
「それじゃっ、明日もよろしくね。教官。」
「ん?あ、ああ。」
結局、戦うだけで1日が終わってしまったのか。こんな調子で大丈夫なのか?まぁ終わってしまったものは仕方がないか。えーっと、帰らないといけないのか?と思ったけれどなんだか景色がぼやけていく。このまま明日になるのかな。
そういえば、テルペリオンはどうしたんだ?




