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話し込むドラゴンと話し込む同級生

 「待たせたか。」

 うずく気持ちを抑えながら待っていて、やっとテルペリオンが来たという感覚だな。

 「どうかしたか?」

 「それがな。」

 パトリックの方は話がついたが、もう1人の転移者の問題があって、放っておけないと伝えると、テルペリオンはデンメスと2人で話し込んでしまったな。

 「どうなるかな?」

 「わからん。」

 ヨシエ委員長も不安そうにしているけど、どうなるかはわからないんだよな。テルペリオンは信頼しているけど、全部が都合の良いような結論になるとは思えないしな。

 「話はついた。今日は引き上げる。」

 テルペリオンは有無を言わさぬ感じで言ってきたので、とりあえず来た道を戻って行くけど。

 「なぁ、どういうことになったんだ?」

 「はじめに言っておく。これ以上の妥協はお互いにできん。」

 なんだか不穏な言い方だな。お互いにってことは、そこまでこっちに不利じゃないんだろうけど。

 「あの娘にふさわしい婿を連れてくれば納得するそうだ。」

 「ふさわしいって?」

 話自体はシンプルだけど、直感的にこの言葉が妥協の産物なんだろうなと思ってしまう。

 「デンメスを倒せる人間だ。」

 「いや、それは流石に。」

 巨人を倒せる人間なんていないだろ。パトリックですら無理なんだから。本当に妥協した結果なのか?

 「もちろん単身でという意味ではない。何らかの加護を貰っていても良い。」

 ん?それって例えばドラゴンの加護とか貰っていてもいいってこと?でもそんな人間って。

 「あの、テルペリオン様。それでも巨人を倒せるほどの人となると。」

 「トキヒサくらいだろうな。」

 やっぱり俺しかいないよな。なんだってそんなに限定的な話になってしまったんだ?

 「なぁ、もうちょっとどうにかならなかったのか?」

 「どうにかとは?」

 「いや、それだと選択肢が。」

 「そうは言ってもな。あやつがやっているのは褒められた事ではないが、ダメな事ではないからな。」

 「あのままじゃ、一体どうなることか。」

 「だから褒められたことではないと言っている。いいか、デンメスの行いはな、我々が魔物を討伐する事とやっていることは大差ない。交渉できるだけでも良かったと思うことだ。」

 「あ、ああ。わかったよ。」

 なんか納得できないけどな。でもまあ、俺が覚悟決めるだけでいいなら話は簡単かな。みんなが納得するかどうかは知らないけどね。


挿絵(By みてみん)


 「話はわかったわ。皇太子殿下の事は良いとして、トキヒサは本気なの?」

 「ああ、他に手はない。」

 どう考えても俺しかいないからな、巨人を倒せるかもしれない人間なんて。将来的に同じくらいの強さの人間が生まれるかもしれないけど、それまで末次さんの体が保つとは思えないしな。

 「そう。トキヒサの立場上は問題ないわね。」

 どうも含みのある言い方だな。アリシアにしては珍しいというか、増える分には問題ないはずなんだけどな。

 「その人の気持ちはわかんないのよね。それが気になるというか。」

 「気持ちは、確かめようがないというか。」

 「わかるよ。だけど、巨人様に挑むんでしょ?ちょっと付き合っておしまいってわけにはいかない。本当の意味で一生の付き合いになるよ?」

 言いたいことはわかるけどさ、どうやって確かめるんだ?

 「時久。直接会いに行って聞いてみればいいんじゃないか?」

 「あのな、マコトは見てないから仕方がないんだけどさ、拷問されているようなものだからな。その状況で、救われたかったら言うことを聞いてくれって、断れないだろ。仮に嫌でもさ。」

 もっと言えば、死にそうなくらい苦しいはずだからな。話をまともに聞かないで返事をしてしまうかもしれないし。

 「九十九君。心愛の所に行くのは難しいの?」

 「え?うーん。」

 テルペリオンに頼めるか?いや、もうこれ以上の妥協は無いって事だったからな。あんまり期待しない方が良いか。となると忍び込む感じになるのかな。

 「ねぇねぇ。こっそり行くなら、私達に任せてよ。」

 「そうね。」

 またこの2人に頼ることになるのか。でも王城と巨人だと危険性が違うだろうからな。

 「パトリック。王城と巨人って、どっちの方が忍び込みやすいと思う?」

 「は?本気で行く気なのか?」

 「何か考えがあるみたいだし、大事な事だろ?」

 「まぁ、そうだけどさ。・・・巨人様はそういうことは得意じゃない。トキヒサみたいな直接的な力が得意だからな。だから、忍び込みやすくはあると思う。ただ、」

 ん?言い淀んでいるけど、何かあるのか?

 「どうした?」

 「いや、巨人様が住んでいる家だからな。扉も全て大きいだろうから、開けられるのかと。トキヒサは破壊することしか出来ないだろ。」

 まぁな。テルペリオンの助力があるかわからないから、破壊すら出来ないかもしれないけどな。

 「じゃぁ、転移者組全員で行こうぜ。みんな他人事じゃないしな。」

 そういえばマコトは力持ちになれるんだったか。地味だけど、役に立つな。

 「よし、というわけでなんとかなりそうだけど、委員長はどうするつもりなの?」

 「それは、ここからデンメス様の家まで距離があるわよね。話しながらにしましょ。時間はたくさんあった方が良いから。」

 そうなのか?まぁ考えがあるならいいんだけど。時間をかけて何をするつもりなんだ?


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