囚われの人と囚われの同級生
「九十九君、早く行こう。」
「そうだな。」
ヨシエ委員長と急いでパトリックの所へ向かうけど、なんで末次さんが巨人と一緒に居るんだ?そして巨人との口論がヒートアップしているな。
「ですから、彼女と私は、」
「黙れ人間、そんな話は聞いておらんと言うておろうが。親御から許可も得ている。あとは私の好きにさせてもらおう。」
「それは手違いでして。」
「手違いだと?人間風情が、身の程をわきまえるんだな。」
取り付く島もないって感じだな。パトリックは人間の中でも身分的には最高のはずなんだけど、巨人にとっては関係ないみたいだな。
「パトリック。どんな感じ?」
「ああ、全然ダメだ。話が通じない。」
「ほう、これは珍客。テルペリオンの所の小僧ではないか。ということは、奴も近くに来ているな。」
え?俺の事を知っているのか。まぁ、テルペリオンが有名なだけなんだろうけどね。
「はじめまして、トキヒサです。えーっと、」
「デンメスだ。ははーん、合点がいったぞ。人間にしては強気すぎると思っていたが、お前と知り合いだったのだな。」
なんか1人で納得しているけど、パトリックは勝てないにしても逃げる事なら出来るだろうからね。そりゃ他の人間に比べれば強気にもなるだろうよ。
「まぁいい。テルペリオンの知り合いということなら、話を聞いてやらん事もない。ドラゴンの長老に免じてな。」
「ありがとうございます。それで、どこまで話を聞いていましたか?」
「この娘を娶りたいのだろ?」
話自体は聞いてくれていたのね。いつの間にか、助けに行くが娶りに行くになっちゃってるのが気になるけど。
「おい、パトリック。なんか話が飛んでいないか?」
「仕方がないだろ。そういうことにしないと話にならないんだよ。独り身の人間は何をされても文句が言えない。」
そう言われれば、巨人の長老も人妻には手を出さないとかなんとか言っていたような。あれって巨人の共通認識だったのか。
「当然だ。人間の夫婦を害する行為は、この世界の理に反する事。であるから、本当に娶れるのであれば問題ないが、」
「では、」
「生活は?」
え?生活って、巨人がそんなことを心配するとは意外だったな。もっと理不尽な理由を言ってくると思っていたんだけど。
「それは大丈夫です。2人でも生きていけます。」
きっとエルフの遺跡の事を考えているんだろうな。まぁ、エルフの里でも好きに使っていいとか言われたし、特に問題ないと思うけど。
「2人で?お前にそんな力があるのか?」
「はい。」
「ふーむ。」
何を考えているんだ?実際2人でも問題ないからな、パトリックは強いし。そろそろ末次さんの話に変えたくなってきたな。
「2人で生きていかねばならんのだな。ならば、それが出来ると証明してもらおうか。」
「証明、ですか?」
「私と戦え。」
これはまたシンプルなことで。勝てって意味じゃないよね?それなら問題なさそうだけど。
「それは、望むところです。」
「よかろう。しばし待て、テルペリオンとも話がしたい。」
話は終わったみたいだな。それじゃぁ末次さんのことを確認してみようかな。
「デンメスさん。お聞きしたいことがあります。」
「小僧、何か問題でもあるのか?」
「今の話には問題ないと思います。お聞きしたいのは、もう1人の女性についてです。」
末次さんの事を見ながら聞いてみたんだけど、末次さんは大丈夫かな?なんか心ここにあらずって雰囲気。
「この娘はな、どうも転移者のようだ。テルペリオンに自慢してやろうと思ってな。ちょっと見ていろ。」
何をするんだ?っと思って見ていたら、末次さんに魔力を注ぎ込んでいるのか。ってちょっと待て、注ぎすぎだって、苦しんでいるじゃないか。
「やめて!!」
ヨシエ委員長の声も全く聞こえていないようで、そのまま魔法の発動をはじめている。止めようと思って前へ出たんだけど、無理だどうにもできない。
「はっはっはー。どうだ面白いだろ。我々はこういった魔法が苦手なんだがな、こいつを使うと面白いように魔法が使える。全く便利なものだ。」
嬉しそうにしているけどさ、当の末次さんは倒れちゃってるよ。クレアさんが介抱してくれているみたいだけど。俺とヨシエ委員長も心配で駆け寄ろうとしたら、パトリックに止められたんだが。
「おい、止めるなって。」
「待て待て。いくらお前でもそれはマズいって。テルペリオン様が来てからにしろよ。」
「でもな。」
テルペリオンの魔力をどれだけ受けきれるか試したことあるんだけどさ、だから限界まで受けきったときの危なさはよくわかっている。あれはダメだ。
「知り合いなのか?」
「そうだな。」
「だったら、なおのこと待て。テルペリオン様に一度任せた方が良い。」
「わかったよ。」
言いたいことはわかるけどさ、放っておけないって。




