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皇太子の質問と皇太子の愉悦

 「そろそろ何があったか教えてくれていいんじゃないか?」

 王城を抜け出した後、俺とパトリックは先にクレアさんの所へ行くことになったんだけど。頭と手に別々に乗るはずだったのが2人で頭に乗ることになってしまった。テルペリオンには3人まで乗れるからって、ヨシエ委員長も一緒に行くことになったからなんだけど。

 「何って、昔の記憶を見てきたんだ。」

 「なんだそれ?」

 転移者が詠唱魔法を使えることと、それを使って自分の記憶を遡ってみたことを話すと、パトリックはなんだか笑いをこらえていやがる。

 「何を笑っているんだ?」

 「いやぁ、噂でしか聞いたことなかったからな。俺と出会う前って、こんな感じだったんだなと。」

 「耳元で変なこと言わないでくれ。」

 テルペリオンの頭に乗るのはコツがいるから、パトリックには後ろから掴まってもらっているんだけど。いつもならアリシアがいるポジションなんだよな。変なこと言われると、こそばゆいというかなんというか。

 「それで?アリシアさんをどうやって説得したんだ?」

 「説得?」

 「大変だったんじゃないのか?」

 うーん、それが大変ではなかったんだよな。拍子抜けするほどにあっさりとしていたというか、そもそも反対の理由が思っていたのとは違ったというか。

 「まっ、いいや。どうやって抜け出そうか迷っていたところだしな。」

 「やっぱり飛び出すつもりだったんだな。」

 「そりゃな。」

 きっと、こうなってしまったのを自分のせいだと思っているだろうからな。知った時点で助けに行こうとするとは思っていたけどさ。

 「なぁ、クレアさんとはいつ出会ったんだ?」

 「ん?3歳の時だな。そういえば言っていなかったか。」

 「ああ、幼馴染だったのか。」

 ヨシエ委員長の入れ込みようがすごいなぁとは感じていたけど、そういうことだったのか。同情する要素にはなるな。

 「ヨシエさんには悪いことしちゃったかな。なんか雰囲気変わってなかったか?」

 「そうだな。」

 エルフの里での出来事を説明すると、背中越しでよくわからなかったけど、急に黙りこくってしまったということは責任を感じているのかもしれないな。

 「そんなことになっていたのか。応援してくれたから、つい巻き込んでしまったのは良くなかった。」

 「おいおい。あんまり思い詰めるなよ。2人で後悔されてもフォローしきれんぞ。」

 「わかっているさ。今はクレアの事に集中しよう。」

 ならいいけどさ。ところで、そろそろ着く頃合いかな。

 「テルペリオン。あとどれくらいだ?」

 「もう見えてきている。」

 「わかった。」

 いきなりテルペリオンが巨人の家に突撃するのは良くないらしいから、近くで降りてもらって歩きで家まで行くことになっているんだよな。上位種族同士の礼儀があるとか言っていたけれど、難儀なもんだな。

 「ありがとうございます。テルペリオン様。」

 「気にするな。何事もなければいいな。」

 よく言うよ。本当は巨人と戦うことになるのを期待しているくせにさ。でも逆に言えば何後もなく収まるとは思っていないみたいだな。

 「はい。それじゃ行こうか。」

 「はいはい。」

 ヨシエ委員長が挨拶とお辞儀を済ませた後に、巨人の家に向かって歩いているんだけど、家は一応見えているというのに全然近づいている気がしないな。それだけ家が大きいということなんだろうけど。まっ、みんなで仲良く行く必要もないか。ヨシエ委員長を1人にするのは良くないけど、パトリックだけ1人で行かせる分には問題ないよな。

 「パトリック。先に行けば?」

 「え?いいのか?」

 「いいんじゃない。1人だけでも話は進むだろ?俺らが行っても意味ないけど。」

 「そうか?わかった、じゃぁ先に行くな。」

 と言うとすぐに、ものすごい勢いで加速して巨人の家に疾走してしまったけど。そんなに早く助けに行きたかったんだな。

 「なんか、パトリックさん元気になったね。」

 「元気というか、なんというか。」

 「多分、思っていることが違うかな。私と初めて会ったときは、もっと追い詰められているような感じだったから。」

 「そっちか。昔はあんなもんだったけどな。」

 俺に会いに来た時もなんだか様子がおかしかったからな。あの感じのパトリックの事しか知らなかったのなら、今の雰囲気は印象が違って見えるのかもな。

 「うーん。九十九君が味方になってくれて嬉しいんじゃない?」

 「そうか?」

 「きっとね。」

 喜んでいるなら、別にそれでいいけどさ。はしゃぐのは全部上手くいってからにすればいいのにな。っとそろそろ俺たちも巨人の家に着いたな。案の定パトリックと巨人が揉めているようだけど。って、あれは?

 「なぁ、委員長。巨人の横にいる子って。」

 「ん?クレアさんじゃなくて?」

 「もう1人いるじゃん。」

 「本当だ。ってあの子は。」

 もう1人、名前を覚えていた同級生がいたけど、あの子は末次心愛で間違いないよな。見間違えるわけないし。


挿絵(By みてみん)

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