共に行く2人と共に来る2人
「とっ、いうわけでパトリックにクレアさんを助けさせて、そのまま逃しちゃう事にした。」
今いる転移者4人に方針を話したんだが、いきなりのことでみんな戸惑ってるみたいだな。特にヨシエ委員長は。
「九十九君?私は、最初からそうなって欲しいと思っていたけど、その、アリシアさんは大丈夫なの?」
「ヨシエさん。私のことは気にしないで。昨日よく話し合って決めた事だから。」
「えっ?でも。」
「この間はごめんなさい。トキヒサが都合よく利用されるのが許せなかったの。自分と考えが合わなかったのもあったけど。でも今回は大丈夫。トキヒサが自分の意思で決めた事だから、私は応援するだけ。」
「そう、だったんですね。・・・。」
「なぁ、委員長。悩むことあるのか?クレアさん、だっけか。時久なら助けてあげられるんだろ?」
「九十九君達はね、下手すると人間社会でもう生きていけなくなるかもしれない程の事をしようとしているのよ。何も知らなかった私なら、手放して喜んだでしょうね。」
「え?そんなになのか?」
「大丈夫さ、なんとかなるって。」
「なんとかって、いくら時久でも難しいんじゃないか?」
「難しいさ。でもな、俺はもっとすごい事を解決してきたんだ。昔のことだから、その感覚を失っていたけどね。昨日、それを思い出せたんだ。」
「一体何が?」
「ちょっとな。それと委員長は信じられないかもしれないけど、俺とパトリックは親友で、こっちで唯一気軽に話せる同世代だったからな。助けてやりたいのが本音なんだよな。」
「親友っていうのは知ってた。パトリックさんから聞いていたから。きっとアリシアさんの意見を尊重するだろうとも言っていたけど。」
そりゃぁね。まぁ、あの時は俺が答えを出せていなかったから、あの決定になっただけなんだけど。
「なぁ、時久がやるって言ってるんだから、一緒にやろうぜ。俺らなんて失うものすらないだろ?」
「そんな軽い気持ちで、」
「委員長、頼む。」
「なんだか、この間と立場が逆になっているわね。」
「うーん、そういえばそうだな。」
パトリックを助けたい側が逆転しちゃってる。ヨシエ委員長は良い人なんだけど、人の事を心配しすぎなんだよな。
「ヨシエさん。クレアさんを助けに行くことはトキヒサと相談して決めたことなんで、2人だけでも行きますよ。私達は、手伝ってくれないか頼んでいるんです。」
「そう、そうね。行きましょ、みんなで。」
マコトと女子2人も頷いていて、みんなやる気みたいだな。じゃぁ早速、パトリックに会いに行こうか。
「ねぇねぇ。九十九君って、こっちに来てから何したの?」
「私も気になる。」
「え?えーっと。いろいろだよ。」
正直、詳しくは話したくないんだよな。アリシアと出会うまでは、テルペリオンと2人で魔物の群れに突っ込んだり、貴族に喧嘩売ったり、今思えばよく無事だったよな。
「いろいろ?それが何か聞きたいんだけどなぁ。」
「そうね。」
「あんまり聞かんでくれ。」
頼むから放っておいてくれ。アリシアですら知らないようなことなんだからさ。
「そんなことより、2人はどうするの?」
「ええ?一緒に行きたいに決まってるじゃん。」
「うーん。」
「ダメ?」
「ダメっていうか、危ないかもよ?」
少なくとも巨人とは戦う事になるだろうからな。積極的に狙われるようなことはないだろうけど、近くにいると危ない事には変わりないよな。
「大丈夫大丈夫。いざとなれば自分の身くらい守れるからさ。」
「任せて。」
本当か?やけに自信があるみたいだけど、テルペリオンの本気って想像以上になると思うんだよな。
「ああ、その顔は疑ってるでしょ。見てて。」
と言いながらカノンさんは詠唱しているけど、一体何が?うーん、なんか体がボヤけてきたな。
「何してるの?」
「隠れてる。」
「ん?」
「失敗失敗。やっぱり目の前では難しいね。」
「失敗?」
「大丈夫大丈夫。見てないところで使えばちゃんと隠れられるから。ゆかりがどこだかわからないでしょ?」
え?そう言われればどこだ?さっきまで隣にいたはず、だよな。
「ここ。」
おお、なるほど。確かによく隠れている。でも今回の場合はそういう問題じゃないような。まぁ、でも気をつけてもらえばなんとかなるかな。
「全然わからんかった。すごいんだけど、今回の場合は直接狙われるというより巻き込まれるタイプの危険だから、近づかないでね。」
「「はーい。」」
きっと危ない場面はアリシアと一緒にいてもらうことになるだろうからなんとかなるかな。これなら魔物に遭遇する事も無いだろうしね。




