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ドラゴンの嘆きとドラゴンに乗って

テルペリオンは、

シルマリルの物語で登場する銀の木が語源です。

 「一体誰なんだ?魔源樹を切り倒したのは?」

 「そんなこと言って〜。信じてないって、顔に書いてあるよ。」

 「そりゃそうでしょ。」

 朝食を早く切り上げて、魔源樹の確認に出掛けるのはいいんだけど、どうにもな。

この世界に転移してから一番驚いたことが魔源樹の存在だった。

なにせ、人間が死ぬと遺体は残らず、魔源樹という樹木になるんだから。

んでもって、人間は自分の祖先の魔源樹から魔力を引き出して魔法を発動させるという原理らしい。自分の祖先というのが重要で、転移してきて祖先が誰一人としていない俺は、

魔法が使えないというわけだ。

 「でも本当なら、ゆるせない。」

 この世界の人はみんな魔源樹を一番に大切にしている。

魔源樹を切り倒してしまえば他人の魔力を奪うことができるから、当然なんだろうけど。

だから魔源樹の警備の厳重さときたら。

どうやったら魔源樹を切り倒せるんだ?うーん。やっぱり信じられないな。

 ってアリシア?急に腕を絡ませてきてどうしたの?

 「トキヒサ。なんだか難しい顔してるよ?」

 「いや、だってね。」

 「確認してからでいいじゃない。考えこんじゃうのは良くないところだよ?」

 「あっはい。」

 「ふふ〜ん。よろしい。」

 確かにアリシアの言う通りだよな。

そもそも確認のために出掛けるんだし。

というかそんなに頬をスリスリされるとだな。

 「アリシア。」

 「ん?なに?」

 「大好き。」

 「ちょ、ちょっと。どうしたの?いきなり。」

 「まったくだな。」

 おっこの声はテルペリオンか。

あいつは庭で寝てるんじゃなかったか?

あぁなるほど、窓のところまで首を伸ばしているのか。

 「おいおい。何か問題でも?」

 「いいかげんにしろと言っているんだ。どこかに行くのか?」

 聡いね、ドラゴンというのは。

できればアリシアとじゃれているのも察してくれるとありがたいんだが。

 「それがな、魔源樹が切り倒されたらしいんだ。これから確認に行くところ。」

 「ほう、それはそれは。いつもの雑魚魔物より歯ごたえがありそうだな。」

 「かもね。準備したら出発するから、乗せてって。」

 「かまわんぞ。久しぶりに面白そうだ。」

 テルペリオンのやつ、やけに嬉しそうだな。

まっ、来る日も来る日もスケルトンだのガーゴイルだの、

同じような魔物ばかりと戦っていたからな。気持ちはわかる。

 「テルペリオン様。今回は私も同行しますので、よろしくお願いします。」

 「・・・そうなのか?・・・なんだ、ただの旅行か。」

 「おいおい。」

 テルペリオン?なんか露骨にがっかりしてないか?そんなに戦いたいのかよ。困ったもんだ。

 「旅行ではないのか?」

 「なんというか、魔源樹が切り倒されたって情報があったのは本当だよ。」

 「つまりその情報の信憑性が薄いんだな。それでアリシアも連れて遊びに行こうというわけか。」

 本当に聡いやつだな。その通りなんだけど。

アリシアが困っちゃってるじゃないか。

 「言い方が。遊びじゃなくて確認ね。

魔源樹が切り倒されたって言われたら確認しなきゃいけないでしょ。」

 「それこそ言い方だな。

いやはや、出会った時とはだいぶ変わってしまったな。

あの時は猛獣のようだったというのに。

今やただ惚気ているだけの嫁コンだな。」

 嫁コンって。そんな言葉をどこで覚えてきやがったんだ。

ん?アリシアさん?すっごい照れてるけど、別に褒められてはいないですよ?

 「うん、まぁ。期待させて悪かったよ。でも行かなきゃいけないんだ。頼めるか?」

 「ふん、まぁ良い。その代わり今度、私の用事にも付き合ってもらおう。」

 「え?なにそれ?わ、わかったけど。」

 テルペリオンの用事って何?うーん。

まぁ今はいいか。話を広げると長くなりそうだし。

ちょっと待っててもらって、俺とアリシアは旅支度をしないと。

一応、長引いちゃったときの事も考えて1週間分くらいの準備はいるからな。




 ふむ。思ったよりアリシアは準備に時間がかかっているな。

もう昼過ぎだし、天気も悪くなってきちゃった。

そういえばアリシアと旅行、じゃなくて遠出するのは久しぶりだったな。

準備時間を見誤っていた。

 「ごめんごめん。待たせちゃったね。」

 ア、アリシア?その大きな荷物はなに?

俺の10倍くらいの大きさになっていやがる。。

テルペリオンに運んでもらうから、なんとかなるとは思うけど、流石に怒りそう。

 「多かったかな?どれくらいになるかわからないからさ。」

 どうだろうね。後ろのベンジャミン?目を逸らさないで説明して欲しいな。

・・・ダメだ、もう関与しないつもりだな。

 「えーっと、テルペリオンに頼めば一日で帰ってこれるからさ。1週間分でいいんじゃない?」

 「そうか。ちょっと待ってて。ベンジャミン、手伝って。」

 うーん。また時間がかかりそうだな、これは。

それにしても、こんなに大量の服をどこからかき集めたんだ?

でも思ったよりは早いな。あらかじめ整理されていたみたいで、俺の3倍くらいに収まっていく。

 「お待たせ。遅くなっちゃったかな?」

 「大丈夫じゃない?」

 とはいえ待たせすぎちゃってるかな。

アリシアの荷物を持って、テルペリオンのところに急ごう。

庭で待ってくれているはず。


挿絵(By みてみん)


 「なんだ?この荷物の量は。私は荷運びじゃないんだぞ。」

 あちゃー、怒っちゃったよ。減らしといて良かった。

文句言いながらも荷物を足に固定させてくれているから、大丈夫そうだな。

アリシアが申し訳なさそうにしちゃってる。あとで励まさないと。

 それにしても、子爵様の屋敷が郊外にあって良かったな。

おかげでテルペリオンがいても問題ないし。

とか考えてたら固定も終わったな。

それじゃ、問題の街に出発しますか。


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