表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/112

旅立つ人達と旅立ちの詠唱

 「ねぇねぇ。九十九君、委員長って、いつこっちに来たの?」

 「え?みんなと同じくらいのはずだけど?」

 「嘘。」

 「いや、そんな嘘つかないって。」

 「でもさでもさ。委員長、なんか大人っぽくなってなかった?」

 「わかる。」

 それは同意。エルフの奴ら、一体どれだけヨシエ委員長を追い詰めたんだ?

 「委員長とは後で話そうぜ。それより、誰が残る?委員長と時久は誰かに会いに行きたいみたいだけど。」

 「それなんだけどね。マコトはトキヒサの方に行って欲しいの。」

 「そうなのか?なんで?」

 「あなた達は加護を受けていたから、そうじゃない人達を残して欲しいそうよ。」

 「と、いうことは、俺・トキヒサ・委員長と一緒に行く2人を決める方が早いか。」

 それで、揉めに揉めた結果、川井花音と伊藤ゆかりが付いてくることになった。まぁ、委員長とずっと一緒にいることになるかもしれないし、こうなるだろうとは思ったけどね。

 「決まったなら、3人は出発の準備をしなさい。1日しか泊まれないんだからね。」

 

挿絵(By みてみん)


 「それじゃ、ルーサさん。あとはお願いします。」

 「任せてちょうだい。でもいいの?エイコムまで残ってもらっちゃって。」

 「人を訪ねるだけだしね。それにみんなはもう無力ってわけじゃないから。」

 「それもそうね。こっちは心配しないで。」

 「ああ、じゃぁ行こうか。」

 「さきに、そのクレアって人の所に行くんだっけか。」

 「そう、行くというか、エルフ達にテレポートしてもらうんだけど。」

 「先に時久の屋敷に行けばいいんじゃないか?」

 「俺のところは、遠くて届かないらしいね。クレアさんのいる街までならなんとかなるらしいから。そこから屋敷に向かおうと思っている。」

 俺とアリシアと、もう1人くらいならテルペリオンに運んでもらえるんだけどね。全部で6人となると難しいからな。みんなもう登録済みで、運び屋に頼んでも問題ないだろうから、一旦別の街を経由することになったんだよな。テルペリオンは飛んで行くことになっていて、もう既に飛び立ってしまったらしい。せっかちな奴だ。

 「というわけだ。それじゃ、お願いします。」

 エルフ数人が円陣を組んで詠唱すると、一瞬で景色が変わって気がつくと街の外れに着いたみたいだな。6人全員ちゃんといるみたいだし、もしかしてテルペリオンより便利かも?

 「なぁ、時久。」

 「どうした?」

 「俺たちも、テレポートでこっちに来たのか?」

 「ん?どうだろうね。その辺はエルフ達に任せよう。この世界のことはエルフが一番詳しいからね。」

 「それはわかってる、けどな。どうしても気になるよな。」

 気持ちはわかるんだよな。待っているだけなのも嫌だし、でも俺たちだけで調べられる事ってなにかな?

 「ねぇねぇ。今日はどうするの?」

 「どうするって、クレアさんの実家の場所はわかっているから、さっそく行ってみる?」

 「あっ、ちょっと待って。クレアさんもいきなりだとびっくりするだろうから、私が先に話を通しておくね。」

 「アリシアが?」

 「うん、貴族同士のお付き合いもあるから大丈夫。」

 「そうか。じゃあ任せようか。みんなも良いよね。」

 「わかりました。アリシアさん、よろしくお願いします。」

 「ふふ、みんなって人間の街でゆっくりできるの初めてなんじゃない?せっかくだからゆっくりすれば?」

 「そういえば、前はテルペリオン様にいろいろ聞かれていただけで終わったな。」

 「ねぇねぇ。九十九君、何しようか?」

 「え?うーん。俺が決めていいのか?」

 「「「「よろしく。」」」」

 そう言われてもな。いわゆる娯楽施設っていうのがあまり無いからな。まぁ初めてなんだし、珍しい食べ物とか、新しい服を買いに行くとか、その程度でも十分なのかな。

 というわけで、4人を引き連れて街を練り歩いてみたんだけど、想像以上に好評だった。ただ街を歩いているだけなんだけどね。思えば3人はこっちに来てからずっと炭鉱生活で、街でゆっくりする時間なんてなかっただろうからね。ヨシエ委員長は知らないけど。

 「時久、ここで10年も生活していたのか。」

 「どういう意味だ?」

 「ちょっと羨ましくなったというか。」

 「あのな、下手するとずっと炭鉱生活だったかもしれないんだぞ?」

 炭鉱ならまだましだよな。テルペリオンに出会っていなかったらどうなっていたことか。

 「あれあれ?あそこにいるのアリシアさんじゃない?」

 「本当だ。」

 ん?どこだ?ってあそこか。たしかにアリシアだな。

 「おーい、アリシア。どうした?」

 「あっみんな、えーっと。宿で詳しく話すんだけど、クレアさんとは会えそうに無かったわ。」

 「アリシアさん。何かあったんですか?」

 「ヨシエさんと、みんなはピンとこないと思うんだけどね。クレアさんは、巨人様への貢物に選ばれちゃったらしくて。」

 は?貢物?なんだそれ、俺も知らないぞ。

 「アリシア。貢物ってどういうこと?俺もよくわからないんだが。」

 「えーっと、ほら。長老様にお会いした時に、私を見て貢物と思っていたでしょ。巨人様は定期的に人間の貢物を要求してくるんだけど、」

 「え?それにクレアさんが?」

 「そうみたい。」

 「そんな、クレアさんが。なんでそんなことに。」

 「詳しくは聞けなかったけど、やっぱり皇太子殿下との件は関係してそう。」

 「あの時アリシアさんがあんなにも必死に九十九君を説得していたのは、こういうことだったんですね。」

 「・・・そう、ね。ここまでの事になるとは思わなかったけど。」

 「まぁ、宿にもどるか。そこでどうするか考えよう。」

 パトリックとクレアさんを訪れて終わりだと思っていたんだけどね。どうも、それだけじゃすまなさそうだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ