委員長の後悔と委員長の決意
「どうだった?」
ヨシエ委員長の様子を見に行ったルーサさんが戻ってきたから、早速どうだったか聞いてみたんだけど、なんだか浮かない顔だな。
「どうって、これは予想外ね。」
「予想外?」
「彼女、心を繋げられるようになっているわ。」
心を、ってそれはエルフのコミュニケーション手段じゃなかったか?言葉ではなくて、心で語り合うんだったか。
「時久。それってどんな感じなんだ?」
「俺はできないからな。テレパシーみたいなもんだけど。」
テルペリオンとリンクはしているけど、これはブレスレットと魔力の供給を通して模倣しているだけだからな。テレパシーというより電話って感じだし。
「へー。でもなんでそんなもんに?」
「トキヒサ達と一悶着あったんでしょ?そのことをとても後悔していたようね。」
「後悔?」
「皇太子達を助けていたわけじゃなかったこと、アリシアの気持ちを考えもしなかったこと、結局自分のことしか考えていなかったこと。エルフ達に散々指摘されたそうよ。」
「ルーサ、なんでエルフはそんな追い詰めるようなことを?」
「マコトは知らないでしょうけど、エルフってそういう奴らなのよ。人の感情なんて全く理解しないわ。」
「・・・。」
「とにかく、その後悔から人の心を知りたいと願った結果、繋げられるようになったみたいね。」
なったみたいって、そんな簡単な話じゃないはずなんだけどね。どんな追い詰められ方をしたんだ?まぁでも、確かに予想外ではあるな。
「それで、これからどうしようか。」
「放っておくわけにもいかないでしょ?みんなで行くわよ。」
「大丈夫なのか?」
「どういうこと?」
「いや、勝手に心を読んで混乱したりしないかなと。」
「その心配はないわ。エルフ達も制御の仕方はちゃんと教えていたみたいね。」
「そうか、じゃぁ俺とアリシアはここで待っているな。」
「なんでよ?」
「なんでって、俺らは色々あったからさ。」
「そんな情けないこと言わないの。あなたたちが一番頼りになる事に変わりないんだから。それともあとでゆっくりとか考えているの?みんなと一緒に勢いを付けた方が話しやすいでしょ。」
「まぁそれはそうなんだけどさ。一体何を話せば良いんだ?」
「知らないわよ。それに話すことがわからないのはみんな一緒。ほら、行くわよ。」
正直、俺はいいんだけどさ、アリシアがね。勢いでって、本当にそんなんで大丈夫なんだろうな。でもルーサさんにも一理あるし、みんなと一緒に行くかな。アリシアは、緊張してそう。そりゃぁね。
「ヨシエさん、入るわよ。ほら、みんなも入りなさい。」
「よーし。委員長、久しぶ」
「馬鹿、やめろ。」
「え?俺は場を和ませよ」
「いいから、こっちに来い。」
「・・・。九十九君、久しぶりだね。みんなも、また会えて、嬉しいな。」
「・・・委員長。元気だった?」
「うん。・・・。あのあとね、この世界のこと教えてもらった。」
「そう、か。委員長、本当は全部教えてあげようと」
「わかってる。九十九君は悪くないよ。」
「だけど、」
「本当に大丈夫だから。」
「・・・。」
「私、あの時、何してたんだろうね。」
「それは、」
「助けてあげたいって思っていたはずなのにね。なんの助けにもなってなかったし、それどころかすがっていただけだし。自分が何をしたかったのか、まだわからないの。」
「ヨシエさん。」
「あっルーサさん、心配しないでください。おかげでこれからどうしたいか、考えをまとめることができましたから。九十九君、お願いがあるの。」
「お願い?」
「そう。私、もう一度パトリックさんとクレアさんに会いに行きたいの。2人とちゃんと向き合いたくて。」
「いや、それは、」
「同時じゃなくていいの。1人ずつでも会いに行きたくて。なんとかならないかな?」
「・・・まぁ、1人ずつでいいなら、なんとかなるけど。」
「じゃぁ、お願いします。」
「あ、うん。」
「・・・えっと、実は、もう一つお願いがあって、アリシアさんと2人きりになりたいんです。」
アリシアと?まぁ話したいことがあるならいいけど、なんでまた。
「私はいいですよ。」
「ありがとうございます。みんなごめんね、あとでゆっくり話しましょ。」
みんな不満そう、というか2人きりにして大丈夫か心配しているみたいだけど、この様子なら大丈夫じゃないかな。前に揉めちゃったのは、2人とも余裕が無かったからであって、今は2人とも落ち着いて話せるだろうからね。ルーサさんと一緒に部屋を出るように促して。部屋を出てからも何を話すのか気になってしまったけれど、ヨシエ委員長の泣き声が聞こえてきたから、それ以上は聞こえないように遠くへと離れることにした。




