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戸惑う同級生と戸惑うトキヒサ

「ルーサさん。ちょっと待って。」

 夜勤の鉱夫に被害が出たって聞いた後に、ルーサさんは血相を変えて飛び出してしまったんだが。酒場の外に出ると、ドワーフでごった返していて全然追いつけねぇ。ダメだ、完全に見失った。勘定をお願いしたアリシアとエイコムとは妖精が泊っている宿で落ち合うことにしているし、仕方がないからそっちに行こうかな。と思って歩いているんだけど、大騒ぎだな。そんなに大事なのか?

 「あ、トキヒサ。どうだった?」

 「見失っちゃった。エイコムは?」

 「エイコムさんは事情を聞きに行ってくれてる。すぐに戻るって、あっ帰ってきた。」

 戻ってくる。のはいいんだが、このドワーフ混みの中を、よくもまぁ簡単に歩けるよな。そしてよく見ると、ルーサも一緒だったみたいだな。どこで合流したんだ?

 「ルーサ様、着きましたよ。トキヒサ様もおられたんですね。」

 「俺も今戻ったところ。で?何があったの?」

 「ちょっと待って。夜勤に出ていたのは4人だけで、3人はまだ残っているから。一緒に聞いてもらいましょ。」

 「ん、そうなの?じゃぁ場所も変えた方が良いな。」

 「中で話しましょ。ちょっと狭いけど。」

 「ルーサさん。それなら私たちの宿に行きましょ。2人も良いよね。」

 「俺はいいけど。」

 「はい。問題ありません。先に行って準備しておきますね。」

 「良いのかしら。ちょっと身なりが。」

 「エイコム。その辺も準備しておいてくれ。」

 「わかりました。では。」

 「ありがとう。呼んでくるから、ちょっと待ってて。」

 それでルーサは残っている3人を呼びに行って、しばらくして戻ってきたんだけど、思っていたより時間がかかったな。なにかあったのか?

 「お待たせ。」

 「よろしくお願いします。って九十九!?」

 そういうお前は、蓮実誠か。なんだか、同級生に会っても最初のころに比べて驚かなくなってきたな。後ろの2人の女子の名前はわからない、驚いているみたいだけど。

 「ちょっとマコト、あれほど失礼のないようにって言ったじゃない。2人も早く挨拶しなきゃ。」

 「待ってくれルーサ。要人って九十九の事なのか?」

 「トキヒサ様でしょ。ちゃんと名前で呼びなさい。」

 「と、時久様?」

 時間がかかったのは、そんなことを話すためだったのか。かつての同級生に様付けされるのはやりにくいな。単にいつも通りでいいと言ってルーサが納得するかわからないし、そうだなぁ。

 「ルーサさん。俺には気を使わなくて良いですよ。その方が喋りやすいし。」

 「え?でも。」

 「その代わり、テルペリオンにはちゃんとするように。それじゃ行こうか。」

 これでなんとかごまかせたか。俺たちの宿までの道中、ルーサが口を酸っぱくして注意しているのが聞こえるけど、まぁ大丈夫でしょ。テルペリオンは様付けに慣れているから任せちゃおう。


挿絵(By みてみん)


 宿に着くとエイコムがいろいろと手配してくれていて、3人には軽くシャワーを浴びてもらい、着替えてもらい、軽く食事をしてもらって、って悠長じゃないか?

 「なぁエイコム。こんなにゆっくりしてていいのか?」

 「ガーゴイル絡みの事案でして、朝にならないと何もできません。詳しくはまた後で。」

 「そうか、わかった。」

 「トキヒサ。喋ってきたら?友達でしょ?」

 「ん、まぁ。」

 「本題が始まったら話せないと思うよ。すぐに寝ることになるだろうし。」

 「それも、そうだな。」

 と言っても、何を話せばいいんだ?

 「おーい。九十九。突っ立ってないでここに座れよ。」

 無頓着に声をかけてきやがる。・・・なんだか懐かしいな。席が1つ空いているのは、誰が気をきかせたんだろうな。

 「なぁなぁ。驚いたぞ、九十九が要人なんて。」

 「まっ、いろいろあってね。そっちこそ変わらないな。大変だったんじゃないのか?」

 「そりゃぁな。正直、限界だったな。」

 「そうか。」

 「ところでさ、末次さんは一緒じゃないの?」

 「え?違うけど、どうして?」

 末次って、末次心愛さんの事だよな。なんでそんなこと聞くんだ?

 「どうしてって、こっちに来る前に九十九に駆け寄ってたじゃん。覚えてないの?」

 「いや、全く。」

 駆け寄って来ていた?そんなことがあったら覚えているはずだけどな。

 「そうか。他にも誰か来てるのか?」

 「まぁ、な。その話はまた今度にしよう。」

 今までの4人の状況は、このタイミングで話すには重いからな。

 「ねぇ。九十九君、雰囲気変わった?」

 「あっ、私も思った。」

 「ん、そりゃね。俺は10年前にこっちに来たから。」

 「10年。そう言われりゃ、老けたか?」

 「言い方が。」

 「ねぇねぇ。じゃぁさじゃぁさ、あそこにいる綺麗な人とは付き合ってるの?」

 「アリシアのこと?付き合っているというか、妻だけど?」

 「「「妻!?」」」

 なんかヨシエ委員長の時と全く同じ反応だな。そんなに驚くことなのか?

 「九十九、やるじゃないか。」

 「ねぇ。夫婦生活はどんな感じなの?」

 「10年ってことは、27歳?なら普通ね。」

 あぁもう、いっぺんにしゃべるな。ちょっと盛り上がりすぎじゃないか?

 「ちょっとマコト、早く食べなさい。これから大事な話があるんだから。」

 「はいよ。ルーサもちょっと食べれば?」

 平和なもんだ。炭鉱生活が終わると思って安心しているんだろうな。そりゃ良い生活をして欲しいけどさ。どうしたものか、っと全員食べ終わったみたいだな。

 「食べ終わったわね。それじゃ、よく聞いてね。」

 「どうしたんだルーサ?あらたまって。」

 「いいから。残りの4人は夜勤に行っているでしょ。実はさっき炭鉱にガーゴイルが侵入してね。4人全員、行方不明なの。」

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