妖精の指定と妖精の話
Q&Aについてですが、
特に読まなくても今後の話の展開は理解できますので、ご安心ください。
あくまで世界観を深堀するためのものとなっております。
へー、ここがダンボグの街か。ドワーフの国に来るのも久しぶりなんだけど、特有の煤まみれた感じに炭鉱夫の無頓着が合わさって、まぁすごいことになっちゃってるな。すぐに汚れるというか、汚れから逃れられないというか。アリシアはいつもと違って身軽そうなローブを着ていて、これはこれで雰囲気が違っていいな。
「それで、どこに行けばいいんだっけ?」
「はい。滞在地の場所を伺っておりますので、そちらに参りましょう。」
「はいよ。それじゃ案内頼んだ。」
一緒にいて思ったことなんだが、ガーダンってすごく頼りになるな。旅の準備とか情報の整理とか全部やってくれるし、手合わせしてもらったら強かったし。テルペリオンの力が無かったら勝てないな。
「こちらです。」
と言われて、ただただエイコムに付いていく。これは要人警護として重宝されるのも納得だな。長老に感謝しないと。女性じゃないと入れないところもあるから、そういうところでアリシアの警護をエイコムに任せられるからな。
「この宿に泊まっているそうです。」
「そうか、それはいいけど、妖精がドワーフの宿に泊まっているのか?」
「はい。そのように聞いています。」
うーん。妖精がわざわざお金を払って宿をとっているのか?全然想像つかないんだが。
「問い合わせて参りますので、少々お待ちください。」
「あ、ああ。頼んだ。」
半信半疑っていうのが正直なところだな。イタズラされているだけな気もするし、ちゃんと宿をとる律儀な妖精かもしれないし。でもな、そんな妖精に会ったこと無いんだよな。っと戻ってきた。
「こちらで間違いないそうです。不在だそうですが。」
え?本当にここにいるんだ。意外だな。
「そ、そうか。不在って事は、出かけているのか?」
「はい。それと、長老から使者が来た時の伝言があるとのことでした。」
「伝言?」
「なんでも、夜に酒場にいて欲しいと。場所は伺っています。」
やけに律儀な妖精だな。イメージと全然違うんだが。
「トキヒサ。夜まで時間があるし、泊る所とか探す?」
「それもそうだな。エイコム、どこか良い所はあるかな?」
「アリシア様もいることですし、もっと街の中心部で宿泊した方がよろしいかと。この辺りは、どちらかというと労働者の一時的な滞在場所ですので。」
「へー、そうなんだ。じゃぁ行くか。」
労働者の滞在場所、ねぇ。まぁそういう雰囲気だよな。テルペリオンには、妖精の話を聞いてから話せばいいかな。
「エイコムさん。これ、どうやって食べるんですか?」
「これはですね。このよう、に。」
アリシアは骨付き肉の食べ方がわからないらしい。エイコムは、すっごい豪快。アリシアもぎこちなく真似しようとしているけど、前歯で噛みちぎるのは無理だと思うんだよな。
「アリシア。無理しないで、これで切り分けて。」
ナイフとフォークを渡すと、慣れた手つきで食べ始めている。それにしても、いつになったら来るんだ?妖精は。指定された酒場で待っていて、時間も合っているはずなんだけどな。と思っていたら、来たみたいだな。
「そこのガーダンさん。長老の使者で合っているかしら?」
「はい。正確にはこちらのトキヒサ様が使者になります。それとその妻のアリシア様です。」
「トキヒサ?もしかして竜騎士の?」
「はい。その通りです。」
妖精か。手のひらサイズで、背中の蝶みたいな羽で飛んでて、妖精で間違いないんだろうけど、メガネ?この妖精、メガネかけてる。
「そう、ありがたいわ。もう私の手には負えなくなってきていたし、同じ転移者なら話も早いでしょうから。あっ私はルーサ、よろしくね。」
「よろしく。えーっと、妖精さんですよね?」
「そうよ。まぁ気持ちはわかるわ。仲間達は好き放題やっているから。私の報告も信じてもらえるかわからなかったし。」
「なんか、すみません。」
「いいの、気にしていないから。でも、これは覚えておいて。私達は自由に生きているだけ。イタズラするのも人を騙すのも自由。私はね、こういう生き方が好きなの。」
うーん。こういう生き方って、人助けをしたいのか?まぁありがたい話ではあるけれど。
「わ、かりました。それで、転移者はどうしているんです?」
「炭鉱で働いてもらっていて、今も夜勤に出ているわ。」
「夜勤?」
魔力が少ない人間がドワーフの街に出稼ぎに出るのは珍しいことじゃ無いから、炭鉱の街って聞いて想像はしていたけど、夜勤までしているのか。
「仕方ないのよ。あの子達って体力がないみたいで、少しでも効率的に稼がないと。」
まぁ現代の高校生だからな。最近来たんだったら、そんなもんか。むしろ、よく働いているほうかな。って達?1人じゃないのか?
「ああ別に責めるつもりではなくて。それより、達ってことは。」
「全部で7人よ。男の子3人、女の子4人ね。」
女4?まさかとは思うが、と考えていたらアリシアが割って入ってきて、
「ルーサ様。あの、女の子たちも炭鉱で?」
「それも仕方がないのよ。魔力の無い人間ができる仕事なんて限られているわ。」
「でも、それって危なくないですか?炭鉱がというより、周りの人が。」
「そこは大丈夫。ドワーフは人間の女の子になんて興味ないから。珍しがられてはいるけど。人間の街じゃなくて、ドワーフの街にいる理由もそこね。」
アリシアが心配そうにしているけど、そりゃぁ心配もするだろうな。ドワーフが手を出さなくても、出稼ぎの人間はそれなりにいるからな。そもそも、そんな力仕事が出来るのか?でも、今考えても仕方がないか、それより、
「まぁ一旦置いておいて。手に負えないというのは?」
「それはね、あの子達、人間の街に住みたがっているの。そこなら好きな仕事を選べると思っているから。」
「え?ということは、まだ話していないってこと?人間の社会がどうなっているか。」
人間の街だと、魔力が無いと仕事を選べないし、下手すると犯罪者扱いされちゃうからな。俺もそうだった。炭鉱よりまマシかと言われると、どっちもどっちだな。
「言えるわけないじゃない。あの子達は、もっと良い生活ができるって信じている。だから耐えられているのよ。ここまでよく私のことを信じてくれたわ。」
「妖精の口添えでなんとかできないのか?俺もテルペリオンのおかげでなんとかなったし。」
「残念ながら、妖精はドラゴンほど信用がないから。むしろイタズラだと思われるわね。私にできるのは、炭鉱で働かせてもらうようにお願いするくらいだわ。」
それは、そうかも。というか確実にイタズラ扱いされるな。ルーサはできる範囲で手を尽くしてくれたんだな。こんなに親切な妖精がいるとは。
「なんとか誤魔化したり、なだめたりしていたんだけど、それももう限界。本当に助かったわ。」
「そうか、ありがとう。じゃあとりあえず、俺の屋敷に来てもらうか。それからゆっくり、って何かあったのか?」
なんだか酒場が騒がしい。酔って騒いでいるというより、みんな焦っているような。
「トキヒサ様。事情を伺ってきます。」
「頼んだ。」
エイコムが話を聞いてくれている間に残った料理をかき込むか。エイコムは俺が喋っている間に食べ終えていたらしいし。
「皆様。炭鉱で何かあったらしく、夜勤の鉱夫たちに被害が出ているそうです。」
■アリシアのQ&Aコーナー
Q.魔力を持たない人間が犯罪者扱いされるのは何故でしょうか?
A.魔力を持たないこと自体が犯罪というわけではないのだけど。
魔力が少ないのには大きく2つのパターンがあって、1つは私みたいに祖先に不幸な事件や事故があった場合、もう1つは祖先が犯罪者だった場合よ。犯罪者の魔源樹は伐採する決まりになっているから、どちらの場合でも魔力が少なくなってしまうの。それで、2つのパターンを区別するために登録制度が運用されていて、魔力が少なかったり持っていなかったりする人は必ず登録する決まり。転移者は登録されていないにもかかわらず魔力を持っていないから、不正に登録を消したと思われて犯罪者扱いされてしまうのは仕方がないことではあるね。
Q.どうして魔力量で職業が制限されるんですか?
A.魔法には生活に便利なものもたくさんあって、あらゆる職種で使われている。魔法は地球で例えると電力みたいな動力源だから、職業が制限されるというより出来る仕事が限られてしまうという表現の方が正確ね。
Q.魔力が無くても働かせてあげたら?
A.そうしたいとは思うけど、魔力が無いのを地球で例えると「手足がなくて、五感も一般人の10分の1しかない」っていう状態だから難しいの。祖先に不幸な事件や事故があって魔力が少ない場合は専用の職業があるんだけど、それ以外の場合には適用されないのが現状ね。
Q.種族別の強さランキングを教えてください。
A.種族全体の強さなら、
エルフ>ドラゴン>巨人>妖精>>>人間>ワイバーン>ドワーフ>ガーダン
それぞれの強さの平均値なら、
ドラゴン>巨人>>>人間(王族)>妖精>エルフ>人間(貴族)≒ガーダン>ワイバーン>ドワーフ>人間(一般)
こんな感じね。でも魔源樹はどんどん増えているから、人間もどんどん強くなるね。それと魔物については人間と同じくらいと思ってもらって大丈夫よ。強い個体は王族並だけど、弱い個体は一般人並だし、全体としても人間と同じくらいね。
Q.アリシアさんの強さはどれくらい?
A.エイコムさんも言っていたけれど、私は探知や回復みたいな支援系が得意だから、強さと言われても困っちゃうね。
Q.トキヒサとの馴れ初めは?
A.秘密
Q.今、いくつ?
A.え?・・・22。
Q.デートするならどこが好き?
A.ウィンドウショッピング
主人公の九十九時久は27です。




