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記憶の話と記憶覗き

 「さて、よく来たね。トキヒサさん、それとアリシアさん。」

 「はい。お招きいただきありがとうございます。」

 「そう、かしこまらんで下さい。テルペリオンが人間に加護を与えたと聞いたときは驚いたものです。」

 「そんなに意外だったんですか?」

 「テルペリオンが、というよりもドラゴンが、というところがねぇ。ドラゴンというのは孤高を好む種族。誰かと協力すること自体、めずらしいのさ。」

 「ふぉっふぉ。テルペリオンは珍しい生い立ちでのぅ。もしかしたら、それが」

 「待て。そんな話のために来たのではないぞ。」

 「ふぉっふぉ。すまんすまん。」

 「では本題を話すとするかね。トキヒサさん、テルペリオンから話は聞いているんだがね。あらためて転移前後の事を教えて欲しいんだよ。」

 「はい。」

 「だから、かしこまらんでも、まぁいい。転移前に木の根が見えた、そうだね。」

 「そうです。」

 「トキヒサさんにしか見えなかったのかい?」

 「たしか、そうだったと思います。」

 「その点についてはもう1人に確認してある。木の根は見えなかったそうだ。」

 もう1人ってヨシエ委員長の事か。そんなことを聞いていたんだな。

 「で、どうなったんだい?」

 「どうって。気がついたら、こっちに来ていましたが。」

 「そうさねぇ、じゃぁどうやって移動したんだい?」

 「えっと、そう言われても。眠くなっちゃって、起きたらこっちでした。」

 「眠くなった?」

 たしか、そんな感じだったはず。なんとなくしか覚えていないけど。

 「もう1人はなんと?」

 「わからん。移動方法は聞いていなかった。確認しておこう。」

 「そうかい、頼んだよ。それで、気が付いて近くに世界樹があったんだね?」

 「そうです。」

 んで、その後も色々聞かれたんだけど、覚えていないことが多いからな。やっぱりヨシエ委員長を連れてきた方が良かったんじゃないか?

 「やはり世界樹が呼び寄せたのではないのか?この世界そのものを作った存在だ。異世界から人間を連れてこれても不思議ではない。人類は減っているしな。」

 「だがよぉ、なんでそんなことするんだ?世界樹だったら人類そのものを創造すればいいじゃねぇか。わざわざ連れて来たりするかぁ?」

 「ふぉっふぉ。それにの、世界樹の仕業にしては不安定じゃの。トキヒサ殿だけ先に連れてきたり、てんでバラバラの所に転移したりの。」

 「では何故だ?」

 すごい白熱した議論が。というか人類を創造って、なんだかすごいワードが平気で飛び交っているな。蚊帳の外って感じになってしまったが、ダメだ話に割って入る余地がない。しばらく待つしかないな。

 「今日はこれまでにするかね。結論を急いでもしょうがないからの。他にも転移者がいるという話があることだし。」

 「あの噂話か。裏が取れたのか?」

 「ふぉっふぉ。裏も何も妖精の言うことじゃぞ?」

 「おめぇよ。それを自分でいうかぁ?」

 やっと終わったと思ったら他の転移者の噂話って長老から聞いたことだったのか。それにしても妖精由来だったとは。長老はアリシアの頭の上に乗っているだけだけど、妖精ってもっとイタズラ好きというかいい加減な奴らだから、本当かどうか疑わしいな。

 「まぁいい。他に手がかかりもないしな。とりあえず探しに行こう。構わんな?トキヒサ。」

 「あぁ、それはいいけど。」

 「ふぉっふぉ。決まりじゃの。ではの、トキヒサ殿。最後に記憶を覗かせてもらっていいかの?正直、これが一番の目的だったんじゃが。」

 「記憶、ですか?構いませんが。」


挿絵(By みてみん)


 あー、頭がズキズキする。あんまり深く考えないで記憶を覗いてもらったけど、こんなことになるとは。おかげで宿泊部屋で倒れる事になってしまった。だから最後に後回しにしたんだな。ヨシエ委員長を連れてこなかったのは、これが理由なのか?

 「トキヒサ。大丈夫?」

 「んー、大丈夫。」

 「まったく、記憶を覗かれるのだから、そうなって当然だろ?」

 そんなの知らないって。アリシアはいつの間にかいつもの服に着替えちゃってるし。

 「どうかした?」

 「いや、何でもない。ところでテルペリオン。」

 「なんだ?」

 なんかブレスレット越しに話すのは久しぶりだな。

 「俺の記憶から何かわかったのか?」

 「新しくわかったことは無かったな。お前が転移してきた場所の手がかりがわかった程度だ。」

 「そうか。」

 「ねぇ、長老様が泣いていたんだけど。昔、何かあったの?」

 「泣いてた?んー、なんかあったっけ?転移した後は大変だったけど。」

 転移前の記憶も見たのか?でも泣くほどの事じゃないよな。アリシアはそんなに心配しなくて大丈夫だって。そんなことよりも、

 「テルペリオンは世界樹が俺たちを連れてきたと思っているのか?」

 「他に思いつかない、という方が正確だな。異世界から人間を連れて来るのにどれだけの魔力が必要か。想像もできん。」

 「そうか、じゃぁ他の転移者に会っても意味ないかもな。」

 「それはわからん。」

 「わからん、ね。アリシアはどう思う?ずっと黙っていたけど。」

 「だって、長老達の前で私が話せるわけないじゃない。それに私はよくわからないし。ねぇ、トキヒサ。他の転移者ってどういう人だったの?」

 どういうって、言われてもな。あんまり覚えていないんだよな。スポーツマンの蓮実誠と、何故かよく話しかけてくれていた末次心愛さんは覚えているんだけど、他の人はな。

 「あんまりよく覚えていない。2人だけよく覚えているけど。」

 「へー。どんな人?」

 「どんなって、そう言われると困るよな。」

 「んー。それもそっか。」

 「妖精の言うことだ。あまり期待しすぎない方が良い。」

 本当に信用がないんだな、妖精って。


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