長老の村と長老の挨拶
「なぁテルペリオン。本当にここに長老がいるのか?」
「なぜだ?」
「なぜって、ガーダンばっかりじゃん。」
四種族の長老って重要人物なんだよな?てっきり四種族の精鋭みたいな連中が守ってるのかと思ったんだが、村にはガーダンっていう種族しかいないんだよな。
「それに、四種族の長老がなんで同じ場所にいるんだ?仲間と一緒にいればいいじゃないか。」
「トキヒサ。四種族の方々は、昔は仲が悪かったんだって。で、詳しくは知らないんだけど仲直り出来たみたいで。長老が同じところにいるのは友好の証で、村にガーダン以外長老しかいないのは信頼の証らしいよ。」
「へー。」
「概ね合っている。よく知っているな。」
「ありがとうございます。」
悪かったな、知らなくて。言っておくけど、テルペリオンが何も教えてくれなかったせいだからな。っと、着いたのかな?ガーダンの出迎えが来たな。
「お待ちしておりました。テルペリオン様、トキヒサ様、アリシア様。面会の準備は整っております。」
「わかった。2人とも、さっそく面会するか。」
「あの、テルペリオン様?私は正装に着替えたいのですが。」
「ん?そのままで良いのではないか?」
「いえ、そういうわけには。」
「テルペリオン。正装に着替えるのが礼儀って聞いているんだけど?」
「私たちは、そんなこと要求したことはないんだがな。まぁいい。では着替え終わるまで待っているとしよう。」
「ありがとうございます。」
「では更衣室までご案内します。着付けの担当者もおりますので、お手伝いが必要であれば遠慮なくお申し付けください。」
「わかりました。ではテルペリオン様、失礼します。トキヒサも、また後でね。」
「お待たせしました。」
アリシアが正装に着替えて帰ってきたのはいいんだけど、この衣装はな。王都でも見たんだけど、巫女にしか見えないんだよな。くそー、写真に撮っておきたい。
「トキヒサ、どうしたの?」
「いや、とても似合っているなと。」
「え?そうかな?」
とか言いながら頬を赤くしている所も可愛らしい。
「まったく、困ったものだ。惚気ていないで、面会するぞ。」
「あ、はい。申し訳ありません、テルペリオン様。」
テルペリオンめ、余計なことを。もっとゆっくりしていったっていいのにさ。でもまぁ仕方がない。目的は長老に会うことだからな。
「ではご案内いたします。」
扉が開いて、案内役についていく長老たちが見えてきた、のはいいんだが。おかしいな、ドラゴンがいない。巨人とエルフしか見えなくて、妖精はいいとしてドラゴンが見えないのはおかしいよな。
「なぁテルペリオン。ドラゴンの長老は欠席なのか?」
「そういえば言っていなかったな。私が長老だ。」
え?そうだったの?テルペリオンっておじいちゃ、じゃなくてそんなに偉い感じだったの?
「アリシアは知ってた?」
「う、うん。というか、知らなかったんだね。」
「だって聞いてないし。アリシア達だって気さくに話していたじゃん。」
「だって、トキヒサがものすごく気軽に話しているから流されちゃって。長老だってことを知らないとは思わないし。」
「私は気にしないぞ。長老というのも気にしないでいい。」
なんというか、俺の常識知らずはテルペリオンのせいなんじゃないか?というかテルペリオンの常識を教えられたから、その辺の人とズレちゃっているのか。
「おぉい、テルペリオン。そんなところで話していないで、こっちに来ぉい。」
ってすごい唸り声だな。巨人の長老って、本当におじいちゃんなのか?たしかに髭は白いけど、上半身は裸で筋肉が・・・。
「テェルペリオン。久しぶりだな。こいつがトキヒサだな。それで、この娘・・・は貢物か?」
貢物って、なんでそうなるんだ?そんな品定めするようにアリシアを見るんじゃないよ。
「お初にお目にかかります。私はアリシア、トキヒサの妻です。」
「妻??・・・あぁ妻か。それは失礼した。」
「これこれ。節操なく人間に手を出すんじゃないよ。旦那さんが怒っているではないか。」
「節操ないだとぉ。失敬な、我々巨人族は人妻には手を出さん。」
つまり人妻じゃなかったら遠慮しないのか?貢物ってことは人間を物扱いしているみたいだし、あいかわらず物騒な種族だな。エルフのおばあちゃ、じゃなくて長老が頭を抱えているし。
「すまないねぇ。おいで、座って話そうかねぇ。」
エルフの長老が座るように勧めてくれている。のはいいんだけど、妖精は?どこにいるんだ?えーっと、
「ふぉっふぉ。わしを探しておるのかね?」
なんでアリシアの方から老婆の声が聞こえるんだ?って、頭の上になんか乗っているな。これが妖精の長老か。なんかぐったりしていないか?
「ふぉっふぉ。気にしない気にしない。どうぞお座り。」
うん。すごく長老って感じがする。それに比べてドラゴンと巨人は、パワフルな爺さんどもだな。




