ドラゴンの用事とドラゴンの身分
「四種族の長老に会いに行く?」
「そうだ。」
「四種族って、何?」
「何と言われてもな。そのままの意味だ。詳しくはアリシアに聞けばいい。」
「そうか。」
ということは、この世界では常識的な事なんだな。
なんというか、戦ってばかりでそういう知識を覚える暇が無かったんだよな。
「以前から会ってみたいと言われていてな。トキヒサ、お前について話すためだ。」
「え?そうなの?じゃぁ悪かったな、先延ばしにさせちゃったみたいで。」
「それは問題ない。いつでもいいと言われていたからな。ただ、転移者が増えてきていることを考慮すると、早めに会った方がいいだろうな。」
「じゃぁ委員長も一緒の方が良いんじゃない?」
「あの娘にとっては刺激が強い話になるやもしれんし、ゆっくりさせた方が良い。」
「刺激が強い?」
「可能性の話だ。それに確認すべきことは確認してある。」
「あぁ、だから委員長と2人で話していたのか。それで、いつ行こうか?」
「突然すぎるのも無礼になるからな。1週間後に出発しよう。伝令を出しておく。」
「わかった。」
1週間か。準備するには十分な時間かな。
「戻ったぞ。」
「お帰りなさいませ。トキヒサ様」
「アリシアは戻ってる?」
「アリシア様は、まだ外出中になります。」
「そっか。」
けっこう時間がかかっているな。もうすぐ夕食の時間になるっていうのに。ならベンジャミンに四種族のこと聞いてみるかな。
「お飲み物をご用意いたしましょうか?」
「あぁ、お願い。それと、聞きたいことがあるんだけど。」
「はい。なんでございましょうか?」
「四種族って何?」
「四種族ですか?上位種族の方々の事になります。」
「へー。上位種族って?」
「上位種族は、ドラゴン・巨人・エルフ・妖精の方々になります。トキヒサ様も爵位を頂いたわけですから、このような話は覚えていた方が良いかもしれません。」
「げっ、勉強しろってこと。」
「はい。私でよろしければ、お付き合いさせていただきます。」
それは、勘弁してほしいな。ベンジャミンはそういうことになると容赦なさそうだし。
「まぁ、そのうちね。それで、その四種族の長老に会いに行くことになったんだよね。」
「なるほど、そうでしたか。たいへん名誉なことですよ。」
「そうなんだ。アリシアも一緒なんだよね。」
「は?」
え?そんなに驚くことなの?アリシアを誘うのは良くなかったのか?
「そのことをアリシア様はご存じなのですか?」
「まだ知らないけど、まずかった?」
「・・・。」
なんか言ってよ。っと、噂をすればアリシアが帰ってきたみたいだな。
「ベンジャミン?どこ?ってこんなところに。あっトキヒサも帰ってたんだ。」
「う、うん。」
「え?どうしたの?」
「アリシア様。心してお聞きください。」
「え?え?え?」
「トキヒサ様が四種族の長老様にお会いになるそうです。」
「え?おめでとう。それだけ?」
「アリシア様もご同席することになっているそうです。」
「・・・。え?」
「ほら、テルペリオンの用事って言うのが四種族の長老に会いに行くことでさ。一緒に行きたいって言っていたから、そのまま頼んじゃったんだけど。ダメだった?」
「ト、キ、ヒ、サァ?」
痛い痛い。胸倉をそんなに強く掴むなって、そしてそんなに揺らすなって。
「どうしてそうなるのよ。一言、聞いてくれればいいのに。」
「ゴメンってば。そんなにすごいことだとは思わなくってさ。」
「そんなことも知らなかったの?今度ベンジャミンにこの世界の常識を叩き込んでもらいますからね。」
「だってさ。」
「だってじゃない。どうするのよ。」
「アリシア様。どうか落ち着いてください。お断りするわけにもいきませんから、準備を進めませんと。」
「それもそうね。それで?いつ行くの?」
「1週間後に出発。ってちょっと待って。悪かったって、でも1週間もあれば十分じゃない?」
「そんなわけないでしょ。1週間しかないなんて。」
「なぁ、そんなに大事なことなのか?」
「トキヒサ様。上位種族とお会いできるだけで我々にとっては名誉なことですので。ましてや四種族の長老となりますと。」
「そうなの?でも委員長なんてエルフの里で暮らす事になったじゃん?」
「ヨシエさんは保護されているだけでしょ?ちょっと意味合いが違う。」
「なるほど。」
「とにかく早く準備しないと。」
「準備たって、ただ会いに行くでしょ?」
「ふさわしい身なりというものがあるの。トキヒサはテルペリオン様から加護をもらっているから適当でもいいけど、私はそういうわけにはいかないの。もう、こんなことになるなんて思わないから、全部王都でそろえなきゃいけないじゃない。トキヒサも手伝ってよね。」
「わかったって。」




