自信たっぷりな皇太子と自信なさげなアリシア
湖に到着したし、それじゃ早速探しますか。
広いけど、近くにいるならアリシアの探知魔法で見つけられるでしょ。
あいつ馬鹿みたいに魔力量が大きくて、逃げる時は消していただろうけど、
いつまでも消し続けられるわけじゃないからな。
「アリシア、頼んだ。」
「それはいいけど。」
まだ信用はしていないみたいだね。不満そうにしながらも探知はしてくれているけど。
「・・・いた。」
見つかった、のか。
それは良い事なんだけど、どんどんアリシアの機嫌が悪くなっていくような。
「なに?あっちにいるよ。」
「あ、うん。」
おー怖。全部パトリックのせいだ。早く連れ戻して責任を取ってもらわなければ。
「テルペリオン。頼んだ。」
待っていろよパトリック。全部お前のせいなんだからな。ちょっと違うかもしれないけど。
「トキヒサ、来たのか。」
「おい。パトリック、早く帰るぞ。」
「よくここがわかったな。」
「あの、パトリックさん、ごめんなさい。私。」
「・・・なるほど、そういうことか。
気にすることはない。どうせ、いつかは見つかっていたんだ。少し早まっただけだ。」
「そういうのはいいから。頼むから、大人しく帰ってくれ。」
「トキヒサ、悪いがそういうわけにはいかない。」
「いや、そうは言ってもな。無茶だって。」
「大丈夫だ。問題ない。」
その自信は一体どこから出てくるんだ?
そりゃお前は強いけどさ、それでも2人じゃ生きていけないだろ。
「クレアさんはどうなんですか?本当に2人で暮らせると思っているんですか?」
「ごめんなさい。いけないことだっていうのはわかっているんです。でも、2人で大丈夫だと思っていますので。」
いやいや。2人でずっとサバイバル生活を続けるつもりか?魔物だってたくさんいるんだぞ。
「信じられないって顔だな。無理もないか。わかった、付いてきてくれ。」
何だ?一体。湖の奥に行くみたいだけど、なにかあるのか?
魔源樹の森の中に入っていくみたいだが、結構歩くな。
と思っていたらここは?何かの遺跡なのか?
「前に話したろ。ワイバーンの巣の奥にエルフの遺跡があるって。
ここはな、それよりも小規模だが同じエルフの遺跡なんだ。」
へーこれがね。結構広いんだな。でもな、
「パトリック。遺跡はわかったけどさ、ただの廃墟だろ?こんなもの見せられても。」
「ただの廃墟じゃないさ。見ててくれ。」
パトリックの前にあるのは、水瓶か?
遺跡に放置されていたにしてはやけにキレイだが、って詠唱か。
エルフがよく使うって聞いているが。
ん?水瓶に水が
「どうだ。この遺跡はな、まだ生きているんだ。呪文さえ知っていれば水はいくらでも手に入るし、他にももっとある。野菜があっという間に育ったり、お湯を沸かせたり、魔物除けもあるんだ。生活するのになんの支障もない。」
なるほど、自信があるのはこれがあるからか。
これなら確かに、2人でもやっていけそうではあるな。
「それにな、このままだと俺とクレアはもう一緒には暮らせなくなる。」
「え?どういうこと?」
「王宮の人間も馬鹿じゃない。俺の気持ちはとっくに知っている。
だから間違いが起きる前に引き離そうとしているんだ。」
「そう、だったのか。」
らしくないとは思っていたけどな。
俺にこんなこと相談したり、いくら遺跡があるとはいえ急にクレアを連れて駆け落ちしたり。
「トキヒサ。もうお前を巻き込むつもりはなかったんだが、よかったら一緒に暮らさないか?ここよりもっと大きな遺跡があるんだ。何人増えようが問題ない。」
「そうか、そうしようよ九十九君。
他にも来ている人がいるかもしれないしさ、みんなを探しながら一緒に暮らそう。
アリシアさんも一緒に。」
みんなって10年前のクラスメートのことか。まぁ来ている可能性は高いと思っているけどね。
「ちょっと待ってください。私は嫌ですよ。ここにいる人だけで暮らしていくなんて。」
「でも九十九君も一緒なんですよ?」
「前にも言ったでしょ。私はハーレムを作るのが夢だったの。」
「だからその考えがおかしいんですよ。」
「もういい、あなたとはもう話したくない。テルペリオン様からも何か言ってくれませんか?」
「私はどちらでもいい。どちらも理には反していないからな。」
「そんなぁ。」
何なんだ?この状況は。アリシアだけ仲間外れになっているような。
俺もどっちの考え方に近いかと言われれば、パトリックとヨシエ委員長に近いからな。
そもそも地球で育ったんだし。
ん?アリシア?改まってどうした?
「トキヒサ。トキヒサの気持ちはわかっているの。
本当は殿下たちと同じ考え方なんでしょ。
ごめんね、私はトキヒサ達と同じ気持ちにはなれない。
ハーレムを作れるってわかった時、嬉しくって、舞い上がっちゃって、
私だけで勝手に決めちゃって。
縁談の話はさ、いったん無しにして、2人でゆっくり考えよ。
だからね、」
「アリシア。」
「お願いトキヒサ。」
「なんか、心配させちゃったみたいだね。
ハーレムの事は驚いたけどさ、そんなの関係ないんだよ。
アリシアが好きなんだ。アリシアを悲しませたりはしない。」
そんなに心配させてしまっていたとは。反省しないとな。
でも、俺の気持ちは最初から決まっているから。




