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再会と再戦

 テルペリオンが見えてきた。正確には、もうただの銀色のドームになってしまっている。そのドームが小さく、そして色も薄くなっているのは気のせいではないだろう。こうして立っているとテルペリオンの最期を思い出す。ちょうどこのあたりから飛び立っていた。

 深呼吸して魔力を感じる。今ならわかる、自分がどれだけ魔法を使いこなせていなかったのか。体の中を魔力が巡っているのを感じる。どうすれば魔法を発動できるのかわかる。

 「行くか。」

 ここまで1人で来たので、周りには誰もいない。だから、ただきっかけを作りたくてつぶやいただけだった。

 魔源樹の魔力を両脚に巡らせ、地面を蹴って一気に上空へ飛び上がった。そして両脚の魔力を風に変換し高度を保つ。ドームの中の魔王がどうなっているか目を凝らすが、魔王の城しか見えず、中の様子はわからない。

 待っていても埒が明かないし、どうせ戦うのなら先手を取りたい。両脚の風を操りドームへと直進する。と同時に両腕にも魔力を巡らせる。両腕をクロスして魔力の障壁を作り、そのまま突っ込んだ。

 魔源樹でできた魔王の城が崩れていく。ガレキが積みあがっていく中で魔王を探した。先に見つけて自分からしかけたかったが、目論見通りには行かなかった。

 「騒がしいな。」

 振り返ると魔王。ただ1人で立っていて、気だるそうにしている。ガレキが降り注いでいるにもかかわらず、何故か魔王の周りには何も降っていない。

 「また会ったな。」

 「んん?ああ、あの忌々しいドラゴンのおまけか。何用かは知らんが、結界を壊したことは誉めてやろう。」

 城を壊されたことは気にしていないようだった。それにテルペリオンがいなければ無力な人間だと思っているのだろうか。

 「これを見て、何も思わないのか?」

 もはや跡形もない城を示しながら問いかける。周りを一瞥した魔王は、肩をすくめながら魔法を発動した。ガレキが四方に吹き飛んで、遠くに落ちていくのが見える。

 「この程度なんだというんだ?どこぞの王族なんだろうが、残念ながら私には通じんよ。」

 俺の事をパトリックのような王族と勘違いしているようだった。それを聞いてわかったのは、クラスメートの心など何も残っていないという事。油断してくれているようなので、不意を打ってもいいのだが、それは違う気がした。この戦いは魔王側の魔源樹に対するメッセージでもあるのだから、全力の魔王を打倒した方がいい。

 「確かにこの程度なら王族でもできるだろうね。じゃぁ、これはどう?」

 魔源樹の魔力を練り上げていく。王族でもありえない数の魔源樹から、ありえない量の魔力を集める。それを見ていた魔王は困惑していて、その表情が険しいものに変わっていく。思えば、ずっと余裕の態度を取っていたので、魔王のそんな顔を見るのは気分がいい。

 「貴様、何者だ。」

 「勇者だよ。魔源樹の体を持ち、魔源樹の暴走を止めるために、魔源樹から力を借りた存在さ。」

 「ほう、面白い。」

 それだけ言って観察するように見てくる。俺も魔王の体がどうなっているのか気になっていたので、魔力の流れを追ってみる。わかったことは、5カ所に魔力の中心があることと、人間の魂は存在しないこと。

 「なるほど。貴様、その体の元々の持ち主ではないな。完全に魔源樹の魂となった者の体を使うことで、同じく完全な魔源樹の魔力を全て引き出しているわけか。いいだろう。貴様の体を使えば、全ての魔源樹を支配できるというわけだ。」

 この体を使うというのは、要するに杖にしてしまうという事だろう。魔王はアレンと違って人間の心を保ったままの魔源樹なので、全ての魔源樹から魔力を得ることはできないらしい。魔力の総量では俺が勝っているが、魔王は5つ同時に魔法を使うことができる。なので、余裕で勝つことは難しいだろう。

 「たとえ王族であっても、杖なしでは魔法は使えんからな。最初に気付くべきだったか。」

 魔王は独り言をつぶやきながら杖を取り出し、戦闘態勢に入っている。俺は杖を持たない。正確にはこの体そのものが杖で、つまり体全体で魔力を扱える。なのでテルペリオンと共に戦っていた時と、ほぼ同じ戦い方をすることができる。

 魔王が杖を取り出そうとした瞬間から魔法の準備はしていた。指先に魔力を集中させ、最も先制攻撃に適した魔法を用意する。準備はすぐに終わった。横に跳び、狙いを定め、発動。

 『指先に輝く小さき光』

 杖を持った手を狙い撃つ。命中はするが、魔法自体はギリギリで発動されてしまい、立っていた場所の地面が陥没しているのが確認できた。魔王は舌打ちしながら睨んでくるが、続けて数発を打ち込む。

 2本目の杖で防がれてしまい、お互いに後退し距離を取る。先制攻撃は痛み分け、というより両者とも失敗に終わった。わかっていたことだが、一筋縄ではいかないと再認識する。


挿絵(By みてみん)

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