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転生令嬢は恋愛しま戦 かかって恋、愛てになるぜ!  作者: 犬宰要
入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛
10/46

09_二人目の攻略対象者は何様? お子様? オレ様。

 ユウヴィーの学園生活は授業に出て、疑問点をまとめ、図書館で調べ、わからない場合は講師に聞き、その日を終える。という学園ものの恋愛育成ゲームでひたすら知力を上げるような過ごし方をしていた。図書館にいない日はない、というくらい彼女は引きこもり、光の魔法と瘴気について調べていた。

 

(瘴気が繁殖するのは、瘴気そのものに意思があるから、か……うーん、ウイルス的な存在だと仮定して、考えると瘴気に汚染されると統一された汚染状態にならなかったり、地域によって瘴気問題が違ったりするから、当たってそうだなぁ)

 

 様々な瘴気に対しての症状、考察と光の魔法の効果、伝説などを読み漁って考えた事だった。

 

 そんな彼女は身だしなみが最低限であり、まだ恋する村娘の方が魅力的に映るような状態だった。

 

「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢」

 

 考え事をしているユウヴィーには聞こえておらず、本が山積みになってるテーブルの反対側に、腕を組んでる人の存在すらも目に入っていない。

 

「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、ちょっと聞いているのかしら?」

 

(うーん、実際に瘴気と瘴気を掛け合わせた場合、どうなったかと記されてる本は読んでみないとわからないわね)

 

 あたりがざわざわとしだして、ふと顔を上げると怖い顔をしたエリーレイドが立っていた。

 

「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、ちょっと、よろしい、かしら?」

「あ、はい。すみません」

 

 積み上げた図書を返却しようとするとエリーレイドが司書員を呼び、片付けさせた。図書館から出て歩いてすぐのところにベンチがあり、雨除け屋根もついていてくつろげる場所に案内された。周りには誰もいなく、二人きりとなった。

 

「なぜ呼ばれたか、わかりますね?」

「いえ、わかりません」

 

 はぁ、とエリーレイドはため息をつき、手をおでこに当てながら伏目がちになっていた。

 

「いいですか、サンウォーカー国の貴族として身だしなみはしっかりしてください。まさかこんな事を指摘しないといけないレベルの野女だとしたら、国としての威信に関わります。わかりますね?」

 

 ユウヴィーはヒロインとして行動しろ、とか言われるものだと思っていたが、まさか貴族社会の常識的な事を言われるとは思いもしなかったのだった。

(ぐっ、そうだったここは爵位が割と高い人たちが通うとことだった……)

「すみませんでした、以後気を付けます」

「よろしい、では今日はもう帰って休みなさい。目の下のクマも大分酷くてよ」

「はっ、そうさせて頂きます」

 

 エリーレイドは言うだけいうと立ち去っていった。頭を下げ続け、足元の使い魔のスナギモを見るおとなしくしていた。数秒たち、頭を上げるとエリーレイドの後ろ姿とその使い魔が歩いていった。

 すでに夕刻となっており、空は橙色と赤色が溶け合うような色をしていた。

「帰ろっか、スナギモ」

「わふっ」

 普段は、日が沈んだ後に自室に戻るため、今日は早めだった。

 

 自室に戻るとハープが何やら勉強している様子で、挨拶をした後に備え付けのシャワーを浴び身だしなみを整えた。

 

「ユウヴィーは、知ってる?」

「え、何が?」

 突然話しかけられ、ユウヴィーは驚いた。普段お互い朝と夜くらいしか一緒にいないため、挨拶くらいしかしてなかったのだ。

「なんでも遅れて転入してきた人がいるんだって、しかも、隣国の王太子なのよ。もちろん、お付きの人とかいるだろうし、そこそこ地位も高いと思うのよね。狙い目かもしれない、他国に嫁ぐのもありっちゃありだと思うのよね。くふふ」

 ユウヴィーは自分には縁がないことだと思い話半分聞く事にした。

「へぇ、遅れて転入してきたんだ」

「そうなのよ、それでね――」

 ユウヴィーは、腹が減ってきたので、ハーブを誘って一緒に食堂に行こうと誘う事にした。

「あ、よかったら食堂に行かない? お腹減っちゃってさ」

 ユウヴィーとハープの仲は、良好だった。最初は爵位こそハープが上だが光の魔法を使い、聖女になる器かもしれないと噂され講師も認めてた。そのため、ハープが態度を自分よりも上の爵位へとる態度をしたため、ユウヴィーがやめてとお願いしても変わらなかったので、お互いこれから卒業まで同室なのだからせめて、この部屋内だけは普段通りでと頼んだのだった。だが、ハープから「じゃあ一緒の口調に」という事になったのだった。

 

+

 

 学園の食堂は広い。決められた席、というのが存在しないものの生徒たちの居心地のいい場所が次第に固定化されていた。国、爵位、派閥などで決められてるわけでもないのに、自然と座る場所やエリアが決められているようになっていた。座席の数も生徒の数よりも遥かに多く、ガラガラではないにしろ空いている状態が常であった。

 そんな食堂の一角で、長机に様々な料理が置かれ、誕生日席に一人座っている人を見かけた。周りの席には誰も座っておらず、左右に従者がただ佇んでいた。

 

 ユウヴィーは普段、この時間帯に来ない事もあって変な人もいるなぁという思いだった。周りの反応や声を彼女は察知し、どうやら毒見を待っているとわかったのだった。

 

(バカじゃないの?)

 

 そう思うのも、彼女が光の魔法を使え、不浄や毒などに対する抵抗があるからだった。また、光の魔法ではないにしろ、浄化の魔法を使えないとここの講師になれない。ましてやこの学園で毒殺を試みる暗殺者が学園内に侵入するという不名誉な警備体制は各国の沽券に関わる。

 

 そういったのを入学前の貴族教育で学んだのもあり、彼女はバカだと思っていたのだった。

 

 それに見かねたユウヴィーは、出された物に何も手を付けなかった長机の誕生日席にいる人の所に行き、ユウヴィーは彼に言った。

「学びに来る場所で毒を盛られる心配? 解毒の専門魔法講師がいるの知らないの? それとも好き嫌い? 食べれないのならそもそも食堂に来ることないじゃない」

 

 ユウヴィーは、言った後に、しまったと思った。

(でも、食べ物をただ眺めているだけは、食べ物に失礼だ。食し、糧とし、わが身の血肉にして生きるからこそ、強くなる。それに大抵の毒なら私にだって解毒できるしね。もし、毒とかで苦しんだら私が解毒すればいっか)

 ユウヴィーは、自分の領地で一人で猟をしている最中に腹の足しにとキノコを食べて、片っ端から解毒と浄化をしていた。川の水も本来湯沸かしたり、いろいろ手間をかけないと腹を下したり、寄生虫などの問題があるのに、光の魔法で解決して飲んでいたのだった。

 

「フッ、オレ様に意見を通すとは、なるほどエレガントじゃねーか」

 彼は不敵な笑みを浮かべて、ユウヴィーを見つめてきた。物怖じしない彼女が珍しいのか、ジッと値踏みするように目をそらさないで見ている。

 

 ユウヴィーも負けじと見つめ返す。誰もそれを喧嘩を売っていると指摘しない。

 

「フッ、目をそらさず、魅了もされねぇとは面白れぇ女だ」

 

 そこでユウヴィーは思い出すのだった。

 

(こいつ攻略対象の一人だ――ッ!)

 

 ユウヴィーは無礼を承知で踵を返し、その場を去った。この場所にこのまま留まり続けていてはイベントが進んでしまうと思ったからだ。名乗らせなければ、自分の名前も紹介しなくて済むからイベントも進まないだろうという判断だった。

 だが、しかし――

「おーほっほっほっ、あら特待生のディフォルトエマノン令嬢じゃありませんこと!」

 

 去ろうとした際に、悪役令嬢に絡まれるユウヴィー。

 

「あぁん? 特待生? するとお前が噂の女だったのか、どおりで面白れぇ女なわけだ」

 

 ユウヴィーは心の中で舌打ちした。

 

「申し遅れましたわ、わたくしは公爵家のエリーレイド・パテンター・サンシェードよ。ご存じよね」

 ユウヴィーは頭を下げ、貴族流儀の挨拶をおこなう。

「ふん、貴族の流儀もできるんじゃねぇか」

 スッと攻略対象者の隣国の王太子は席を立ち、彼は彼でこの挨拶に参加した。

 

(あ、これ自己紹介されるパターンじゃん! スチルゥゥゥ!)

 スチルとは、超美麗な一枚イラスト絵である。昨今ではライブ2Dがデフォルトであるが、この乙女ゲームではライブ3Dスチル絵であり、どの角度からでも後から見れる仕様になっていた。さらには、没頭連動型VR拡張パックを購入していればスチル絵の中に入れる為、ユウヴィーはそのことを思い出し興奮と逃げたい気持ちで混乱していた。

 

「オレ様は、フリーザンネック王国の王太子、フォーラズ・ブラウソ・フリーザンネック」

 

 ユウヴィーと二人目の攻略対象者が出会った瞬間だった。



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