たわいない会話
6月23日の木曜日。
登校して来た谷之坂に会話を振られていた。
「雨ってマジで最悪だよね!靴下濡れて気持ち悪いんだよ、ホントさぁ!?家から出ない時に降ってほしいわ〜そう思わん?」
雨で濡れた靴下を脱ぎながら、同意を求めてくる彼女。
「俺も雨は好きじゃないよ。まぁ外のキツい体育がある時は降ってくれとは思うかな。嘉田瀬は居ないけど一緒じゃないの?」
「体育でかぁ……私はそんな思わんかな、身体動かすの好きだもん!澪那は寝坊したらしい、好きなユーチューバーの遅めの配信見てて珍しくね。放課後には晴れててくんないかなぁ〜もう靴も大災害だし、ホント最悪ぅ!」
「へぇ。それはご愁傷様だね。アレの無料10連、引いた璃奈は?」
「ううん。今から引くよ。見守ってて!!」
靴下を袋に入れ、裸足のまま座面に載せて、スマホを取り出し、入れてるゲームアプリを起動させ、ゲームのキャラの無料10連ガチャを引いた彼女。
「来るか?来いっ、来い!!——ンだよぅっ!?何回くんだよこいつぅ!?もう全然新キャラ来ねぇマジで!?」
片手でスマホを掴み、もう一方の手で髪を掻き乱し、絶叫する彼女。
「ドンマイ。まぁこんなもんよ、ガチャは。明日は出るかもね」
「はぁぁぁあっ!!どんだけ裏切んだよ、めがステはぁぁっっ!!」
ご乱心な彼女が落ち着くまで待つことにした。
窓に視線を移すとまだ分厚い黒い雲が空を覆っており、雨が降っていた。
「カズぅ〜ラーメン食べたい。放課後食べに行こ?」
「また急だなぁ。良いよ。ローファーのまま行くの?」
「あぁ〜そうだった、一旦帰ってからにする」
思い出し、煩わしそうに応えた彼女だった。
「夏休みの予定どうなってる?」
「お盆のどっかにお墓参りに行くくらいが決まってる。璃奈はー?」
「未定だよー。海行くー?」
「唆られるか唆られないかでいうと微妙だわー!」
「ふぇ〜そうー……どうしよねぇ」
「あ、あのっ……此処——」
「ごめんね。今どくよ」
谷之坂の前に男子が佇み遠慮がちで退去してもらおうと声を掛けた。
彼女は立ち上がり、俺に声を掛け、会話を終わらせ教室を出ていった。
「じゃあ、放課後ね」
谷之坂が居た席に腰を下ろした鈴原というクラスメイトは顔だけを向け、謝って来た。
「ごめんね、無理矢理退かすように——」
「良いよ、鈴原くん。璃奈が迷惑かけて、悪かったよ」
「こっちこそ——」
「鈴原くんは悪くないよ、うん」
彼が正面に向き直ると同時にスマホを操作し始める俺だった。