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夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
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クエスト

 ギュッタは、一階のパブの裏にあるいつもの酒樽の結界を使って、ファイアは2階のベランダから飛び降り、秘密の結界からギルドへと移動した。

 流石にコルセットとハイヒールではギュッタを負ぶって飛び降りるのは無理だ。

 さらに狼亭のしっかりした食事のお陰で、ギュッタのサイズもなんとなく大きくなり、血色も良くなっている。


 ギュッタは、マリアに挨拶と魔導教本の返却が遅れたことを詫びたが、マリアは全く気にしていなかった。


 マリア

「ギュッタ! 大変だったわね、『怖くて落ち込んでいたら、どうしよう』 て、心配したわ」

 ギュッタ

「ご心配ありがとうございます。 逆に魔道士として生きる自信がつきました」

 マリア

「あなた、度胸が座っている! それに今日の服とても似合っている、あなたの夢にぐっと近づいた感じがするわよ!」

 ギュッタ

「ありがとうございます!」


 マリアは、ギルドの奥に行こうとしたギュッタを引き留めた。

「ねえ、本棚見て~! 中級の魔導教本も購入したのよ。世の中物騒になったお陰で、ギルドが繁盛しているもんだからお金に余裕ができたの、皮肉な話ね。フフ」

 本棚には、赤色の初級魔導の棚の下に橙色の中級テキストが並んでいた。


 ギュッタが棚に見入っているとふいに声をかけられた。

「おい、ファイアの奴はどこへ行った?」


 ギュッタ

「ザンジバルさん、あなたでしたか。 俺のクエスト依頼主って」

 今日のザンジバルは頭からスッポリとフード付きのマントを被り、グルージャ神教僧の衣装を着て変装している。


 ザンジバル

「正確にいうと、今度は私が代行者だ。 依頼主が多忙であること、それに奴を他人には見せられない。 このクエストの依頼を任務外、つまり私人で代行する」

 ギュッタ

「今日は、仮装パーティですね。恐らくファイアさんはいつもの席に座ってますよフフフ」

 ザンジバル

「俺は仮装ではない。聖魔道士になるため、出家し世俗僧になった」


 ギュッタがザンジバルの志の高さに驚いているのを他所に、ザンジバルは怪訝な顔をしながら、灯りのないギルドの隅へと向かった。

 ギュッタは呟いた。

「中将は凄いよ、夢なんてもんじゃないや…」


 ザンジバル

「ウゲッ!! お前…」

 ギュッタは叫びそうになったザンジバルの口を押さえた。

「今叫んだら、ファイアさんに濃厚接吻されますよ!」

 ファイアは故意に低い声で

「いらっしゃ~い、可愛がってあげるわよ~。いつもの格好だったらギュッタの肩身が狭かろう?」


 ザンジバルは、女装し奥のブースに座っているファイアを繁々と見回しながら、ブースの向かいに座った。


 ザンジバル

「兄者から聞いていたが…これは凄い! 一級品だ…何を言おうとしたか忘れた」

 ファイア

「ギュッタに依頼が来たクエストの事だろ~」


 ザンジバルは目を閉じて話している、ファイアの女装で気が散って仕方がない様だ。

「プリエト駐在クラノス軍の装備担当者からの求人依頼だ」

 ファイアは眉間に皺を寄せ

「ギュッタに入隊させて昔の俺みたいに、夢を奪うんじゃ…ないだろうな! お前が軍隊ではないと言うから紹介したんだぜ、説明しろ!」


 ザンジバルは、気色ばむファイアの手を取り話しかけた。

「最後まで聞け」

 ザンジバルの依頼で、クラノス軍・御用武器商人が、ザイオン・ノーザンパクト加盟国へ鉄鉱石の買いつけに行った。

 この国には、ザイオン支配から独立を目指す地下組織があり、組織への資金援助とクラノス軍の鉄材確保という、一石二鳥の取引だ。

 御用商人は、半月ほど前に鉄鋼石のサンプルを持ち帰った。

 クラノス王国は、現在自国に大規模な鉄鉱石の鉱脈がなく、南の大陸からの鉄鉱石に頼っている。

 ザンジバル

「古代のへパイトス産ほどではないが、南大陸の鉄鋼よりかなり良い。ただ大量に輸入できない」

 御用商人は、南大陸産の鉄鋼と錬金して、強い合金を製作中だ。

 合金の魔導強度実験をしたいが、実験場所が見つからなかった。

 斬撃強度は実験しやすいが、魔導の使用は簡単に許可が降りない。

 ザンジバルは急遽、プリエトのクラノス軍駐屯基地の魔導練習棟の使用許可を出した。

「若い魔導兵を実験に参加させたいが、人手不足で無理だ。1日70ギルで1ヶ月20日前後、そこそこの稼ぎだ」


挿絵(By みてみん)


 ファイアはクッションの入った胸を撫で下ろし

「武器商人が実験するはずだったが…。な~んだ、そんなことか」

 ザンジバル

「ギュッタ? 何を笑っている」

ファイアがギルドに現れるときの姿は、誰が見ても殺し屋というスタイルなので彼なりに気を遣った様ですが…

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