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夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
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夢の崩壊

 今日もいつもの様に、ファイアが煙草を咥えて待っている。

「よう! ギュッタ。お前、聖魔道士になって女にもてたいんだって?」

 ギュッタ

「え! 何で知っているの? …ウルヴァンさんから聞いたね」

 ファイアは1冊の本を手渡しながら話しかけた。

「それ、あまり他の連中に言わない方がいいぜ~。まあ、これ読みな~ヒヒヒ…」

 ギュッタ

「ファイアさん何? 嫌な笑い方フフフ。 題名が嫌らしいよ?」

 ギュッタはパラパラとページをめくって少しだけ読んでみた。

 ギュッタは呆れて吹き出した。

「ファイアさ〜ん、朝からエロ本?」

 ファイア

「取り敢えず読みな〜」


『麒麟の聖魔道士とお喋り魔女の恋』

 それはヤバかった!

 麒麟児と言われた優秀な聖魔道士は、楽しそうに話かけてくる魔女に心を奪われた!

「聖魔道士の身分だと言うのに…ヤバい…私は神と契りを交わした身。恋をするなど大罪だ!」


 ギュッタ

「え!! 聖魔道士って、大聖堂に居る訳じゃないですよね!? お城にいたり、大金持ちの隣にいたりしますよね!?」

 ファイア

「だからさ〜『聖』 と名のつく仕事は、どこにいてもセックスはご法度だぜ~」


 ギュッタの夢は思いがけなく崩れ去り、昨夜ウルヴァンに『聖魔道士になって女にもてたい』 と言ってしまったことが恥ずかかしかった。


 ファイア

「気にすんなよ~、気軽に行こうぜ~」

 ギュッタ

「俺、何のために魔導の勉強するのだろう?」

 ファイア

「なあギュッタ、魔導の勉強つまらないのかい?」

 ギュッタ

「ううん、凄く面白いよ!」

 ファイア

「ならば、続ければいいさ~。実際上級魔導士になれば、稼げるぜ〜。ただね、魔法ってどんな時に使う?」

 ギュッタ

「聖者たちは奇跡を起こします。へパイトス火山が噴火した時は、海竜を召喚し大津波を起こし市街地へのマグマの侵入を遅らせ…」

 ファイア

「そうだな、飢饉の時は枯井戸に水を呼ぶとか。じゃ、天変地異がない時は?」

 ギュッタ

「えーと…」

 ファイア

「戦場だぜ~。その覚悟だけはしておけよ、ギュッタ」


 もう春だというのに、ギュッタの頬を冷たい風が通り過ぎて行った。

 貧さが原因で人に見下げられたくない、貧乏から脱出するために聖魔道士になることがギュッタの夢だった。

 どの様な時に魔導を使うのかなど、考えもしなかった。


 ギュッタは心が乱れ、掃除が手に付かない。

 同じ場所を何度も穿いたり、ぼーと遠くを見つめたり。

 桃源郷の住民とギュッタは、掃除が済むと青空教室の支度を始め、ファイアは、バル爺を迎えに橋の階段を駆け上って行った。


 マリアはマスターに声をかけた

「ねえ、ギュッタの様子が変なのよ」

 マスター

「どうしちゃったのかな? ちょっと様子見てくるわ」


 マスターは青空教室の準備を手伝いながらギュッタに近づいてきた。

「ギュッタ、どうしたの? 昨日の夜悪い夢でも見た?」

 ギュッタ

「俺、聖魔道士になると、結婚できないって、知らなかったんですよ」

 マスター

「分かるよ。聖職者だけど、世俗にいても構わないからね。でも、今はグルージヤ教国の教皇様だけだよ」

 ギュッタ

「フロリバンダの騎士団に居るって以前聞きましたよ」

 マスター

「フロリバンダ陥落で行方不明だよ。聖魔道士は、戦闘第一線で戦うのが仕事だからね」

 ギュッタ

「やっぱり聖魔道士は戦闘要員ですか?」

 マスター

「そうだなぁ…上級魔導士は軍師として一旗揚げたい奴が多いよ。クラノス軍にも聖魔道士と遜色のない上級魔導が使える司令官がいるよ」

 ギュッタ

「俺、戦争は嫌いです。奇跡を起こし皆に喜ばれ、尊敬されるのが夢です」

 マスター

「奇跡を起すには、聖魔道士10人以上いるよ。でも、聖魔道士になれるのは大陸で、3人だけだよ」

 ギュッタ

「何故ですか?」

 マスター

「危険だから」

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