第770話 お祭り用の浴衣
一旦、姉さんと聡さんとの通話を切って、結月ちゃんと楓さんと通話! 結月ちゃんに連絡したら、手早く3人で話せるようにしてくれたね!
「美咲ちゃん、3人で話したいって急にどうしたの?」
「まぁ予想も出来るけどね。結月の浴衣のレンタルの件じゃないかい?」
「楓さん、正解! それでなんだけど、3人で一緒に浴衣を着ない? それなら、私がセットで借りて、割り引きが利くみたいなんだよね!」
「おー! 美咲ちゃんも借りるんだ!? え、でも持ってそうな気がするんだけど……」
「この際だし、折角だから借りるのもありかなーって!」
宣伝したんだし、そこを実際に自分で使ってみるっていうのもありだよねー! 持ってる浴衣って、どれも姉さんが選んだ……というか、買ってくれたものだしさ。たまには自分で選んだのを着てみたい!
「……それ、私も着るのかい?」
「あれ? 楓、乗り気じゃないの?」
「まさか、自分が着るなんて事は考えてなかったからね。そもそも、私は自分じゃ着れないよ?」
「大丈夫、大丈夫! 美咲ちゃんが昨日してた宣伝の中で、着付けの手順を教えてくれるやつがあったし! ほら、ARで視覚的に教えてくれるってもの!」
「……そういえば、そんなのもあったね」
あれ? 楓さん、あんまり浴衣を着るのには乗り気じゃないみたい? 着付けが出来ないのって、単なる口実のような気がする?
「それに、最終兵器として美咲ちゃんがいる!」
「……え? 私、最終兵器なの!?」
「だって、和服の着付けが出来るって言ってたし……浴衣もいけるよね?」
「あ、うん。それは普通に出来るよ。レンタルするのも私になるから、渡しに来る必要もあるから、そのままみんなで着ていけば、どうにか出来るけど……」
でも、楓さんが乗り気じゃないのに、無理に押し切るのも違う気がする? 結月ちゃんは乗り気だけど――
「……美咲、それは割り引きでいくらになるんだい?」
「えっと、1着あたり3000円くらいになるみたい? 正確な額は、今確認してくれてるんだけど……」
「おー! 結構な値引き幅! 楓、これなら大丈夫そう!」
「……そう、みたいだね」
やっぱり、楓さんは浴衣を着るのを躊躇ってる気がする! んー、この様子なら、私と結月ちゃんの2人分だけにして……あ、でも2着でセット割り引きって出来るのかな?
「あ、なんか乗り気じゃないと思ってたけど、楓……もしかして、前に浴衣を着て祭りに行った時、着崩れて直せなかったのを気にしてる?」
「っ!? 結月、思い出させるんじゃないよ!?」
あ、そういう事があったんだ! そっか、そっか! 外で着崩れたら、自分で着付けられなきゃ、戻すのが大変だもんね。それで躊躇してたんだ!
「楓さん、それなら大丈夫! 私が直せるからね!」
「……まぁ、それもそうだね。いざという時は、任せていいかい?」
「うん、任せて!」
ふふーん! 最近、色々と楓さんに頼りっぱなしになってるけど、私にも楓さんにしてあげる事があるんだね! うふふ、姉さんに付き合わされて覚えた着物の着付けだけど、意外なところで役立ちそう!
「よーし、楓も観念したところで、早速浴衣を決めていこー!」
「結月はあれだね。ドレス風の浴衣で決定だから」
「待って!? 楓がなんで私の分を決めてるの!?」
「ん? あれがいいんじゃないのかい?」
「あれは、美咲ちゃんの『サクラ』へのリクエストだから! 自分で着る気は一切ないよ!?」
「ほほう? つまり、自分では着る気も起きないものを、美咲の『サクラ』に着せようとした訳だね?」
「うっ!? 私にはあれ、似合わないから!」
あ、楓さんが結月ちゃんに、思いっきり反撃してるね。というか、あれって実際、どのくらいの人が着るんだろ? レンタルの一覧にはあるんだから、借りる人はいるんだろうけど……割合としては少なそう?
うん、あんまり周りから浮きたくないから、私は普通の浴衣にしとこ! 折角、レンタルするんだから、持ってないような柄がいいかな?
「私、先に自分の分を決めてるねー!」
「そうしててくれるかい? 私は、意地でも結月にドレス風の浴衣を着るのを飲ませるからさ」
「楓!? そんな部分で意地にならなくていいから!?」
「大丈夫、大丈夫。あれを着るなら、レンタル費用は花苗さんに出してもらえるように交渉もしてあげるからさ」
「うー!? そこ、取り引き材料に使ってくるの!?」
さーて、自分のを選んでいこーっと! 結月ちゃんがどの浴衣になるかは……結月ちゃんの頑張り次第!
ドレス風の浴衣は可愛いとは思うけど、私は着る気なーし! 和服はやっぱり、そのままの和服の形がいいよね!
◇ ◇ ◇
「……か、勝ったー!」
「くっ、最後の最後で負けるとはね……」
結月ちゃんと楓さん、なんだか途中からジャンケンで勝った方の意見を通すって事で勝負を始めてたけど、どうやら勝敗が決まったみたい?
「美咲ちゃん、私はこれね! 昨日、『サクラ』で着てた金魚柄のヤツ! それで、楓がドレス風の――」
「あ、それは却下で。私は……そうだね。黒に椿模様のこれでいこうかい」
「ちょっと!? 勝った方が負けた方の意見を聞くって勝負じゃなかった!?」
「だから、意見は聞いたよ。結月の『ドレス風の浴衣は嫌』って意見をね」
「それ、ズルくない!?」
「ズルくない、ズルくない」
「……あはは」
ちょっと楓さんがズルいような気もするけど、結月ちゃんもあんまり人の事は言えないような? 今の流れ、昨日の配信でのリクエストがなければ、起きなかった事だろうしねー。
「美咲は、どれにするか決めたのかい?」
「あ、うん! 淡い白地に、桜柄の浴衣にするよ」
「美咲ちゃんって、何気に桜柄が好きなの?」
「うん、好きだよー!」
桜が好きだから、アバターの名前は『サクラ』なんだし、普段の着物も桜柄にしてるもんね! あっちは、全体的にピンクが強めだけど、今回選んだのは白が基調で派手な印象はない大人しいやつ! まぁ、ピンク下地の桜柄はレンタル中で選べないって理由もあったけど!
「あ、そうそう。結月、まだ言ってなかったんだけど……」
「ちょっと待って、楓!? その振り、なんだか嫌な予感がするんだけど!?」
「花苗さんから伝言。今月中に夏休みの課題を終わらせるのを条件に、お祭り用に臨時の小遣いを1万円ほど出して――」
「絶対に、今月中に終わらせるよ! 楓、力を貸して!」
「……まだ言い終わってないのに、盛大に食い付いたね」
「当然! 貴重な臨時収入だし!」
あはは、結月ちゃんの食い付きっぷりが凄いね! でも、花苗さんから臨時でお小遣いが出るなら、お祭りのお金は心配いらなさそう? 浴衣のレンタル費用も少し安く済むし……姉さん、裏から手を回してはいないよね!?
うーん、でもお祭りに合わせて普通の臨時のお小遣いが出るの自体は普通にあり得そうな話だよね。楓さんが聞いてて、その上で条件付きなら……楓さんが交渉した結果な気もする?
「美咲ちゃん、課題頑張るよ!」
「……え、あ、うん。えっと、楓さん……今月中に終わるの?」
「部活の動き次第ではあるけど……まぁ無理なスケジュールではないね。元々、しっかりやれば夏休み丸ごとかかる程の量ではないしさ」
「ふふーん! やる気になれば、数日で終わるのはよく知ってるしね!」
「……それを知ってる理由が、夏休み最後に大慌てで片付けるって事でなければ、よかったんだけどね」
「そこは気にしない!」
「……あはは」
最初はそんな印象は全然なかったんだけど、結月ちゃんって勉強に関しては、かなりズボラだよねー。まぁ私も人の事を言えたものじゃないけど……。うん、まぁそれはいいや!
「えっと、どれもレンタルは可能みたいだし、これで頼んでおくね! 土曜日に、私が結月ちゃんの家に持っていって、それで着付けるのでいい?」
「あー、ちょい待った。それなら、元から結月の家に送ってもらうのは可能かい? その方が、色々と手間は省けるよね?」
「確かにそうかも! 届け先、私の家にしてもらったら、運んでくる必要はないよ!」
「あ、そっか! 多分、それならいけそう……?」
セット割り引きがあるなら、こうやって友達同士で借りるなんて事も想定はしてそうだもんね。支払いが私にさえなってれば、届け先は私の家じゃなくても大丈夫なはず!
「それじゃ、それで頼んでおくね! あ、結月ちゃんの家の住所教えてー!」
「うん! メッセージで送っとく!」
「美咲は、電子マネーの受け取り番号を教えてくれるかい? 私らの分、渡しとくからさ」
「あ、うん! メッセージで送っとくねー!」
さーて、これでレンタルの準備は完了だー! 結月ちゃんから住所が送られてきたら、聡さんに連絡して、実際にレンタルしていこー!
とりあえず、結月ちゃんと楓さんへ、私の電子マネーの受け取り番号を送っておくのです! 最近、サッパリ現金は使わなくなったもんだよねー。




