第743話 海のギャング
「わっ!? わわっ!?」
ここにいた敵の正体が、エリアボスのウツボなのは分かったけど……すぐに水の中から飛び退いたのに、普通に陸部分でも追いかけてくるんだけど!?
「思った以上に大きいですね!? わっ!?」
待って、待って、待って! どう考えても、普通の魚の動きじゃないよ!? 見た目、普通の魚じゃないけど! 1メートル……ううん、2メートル近くはありそうだし、長くて……魚というより、ヘビみたい! 大蛇だよね、これ!
魚とは思えない鋭い歯があるから、ヘビともまた違う気もするけど!
金金金 : おー、活きの良い、デカいウツボだな。これが敵の正体か。
咲夜 : ウツボって、それなりに陸地でも動けるしなー。
ミナト : ウツボはウナギ目ウツボ科だから、ウナギの仲間ではあったりするからねー。まぁウナギよりも凶暴だし、海のギャングなんて呼ばれたりするから……攻撃力は凶悪だよ?
チャガ : エリアボスでもあるなら、尚更に凶悪か。まぁ進化が屈強系統ではないだけマシだが……。
「ウツボって、ウナギの仲間なんです!? 確かに、細長くて、ニョロニョロしてますけど……どう見ても歯の鋭さは別物な気がするんですけど!? っ!?」
ぎゃー!? 水が無くなった潮溜まりの中で回避してたら、避ける場所が無くなったー!
「ぐっ! これ、痛いですね!?」
避け切れずに、思いっきり右前足に噛みつかれて……これ、マズいかも!? 凄い勢いでHPが削られてる!
「離して下さい! 『咆哮』! あ、効いてないです!?」
ぐぬぬ! キャンセルさせようとしたけど、あっさりと弾かれちゃった!?
富岳 : あー、弱点は『堅牢』と『器用』か。流石にエリアボスだと、今のサクラちゃんの知恵では弱点じゃなければ厳しいな。
ミツルギ : 遠距離攻撃は持ってなかったか。となると、最初にここで遠距離攻撃を仕掛けてきてた個体は……既に撃破済みになるか。
ミナト : エリアボスからの攻撃かと思ってたけど、単なる溜め攻撃だったみたいだねー。
「それはいいんですけど、これ、どう引き剥がしたらいいんですかね!? 『放電』『放電』! あー!? HP、すぐに回復されてます!?」
待って、待って、待って! ダメージは入ってるのに、即座に回復され過ぎだから!
こんにゃく : このウツボ、『胃袋』持ち?
いなり寿司 : 生命系統の個体だから、その可能性はあるな。
咲夜 : 噛みつき攻撃だから、『捕食回復』の可能性もあるんじゃね? 回復速度的に、『捕食回復Ⅲ』くらいまで解放してる可能性もあるだろ!
神奈月 : 両方って可能性もあるぞ。
G : それはあり得るな。ウツボは素で生命と屈強が高くなりやすいし……生命力は凄まじいぞ。
イガイガ : さぁ、サクラちゃんはどう凌ぐ!?
金金金 : 距離が取れれば、チャンスもありそうだが……この状態は厳しそうだな。
サツキ : サクラちゃん、頑張れー!
水無月 : 頑張れー!
「ただでさえ、エリアボスな上にLv差もあるのに、噛みつかれた状態は厳しいですね!? 『放電』『放電』! っ! 全然、ダメです!?」
ダメージが入らない訳じゃないのに、完全に回復量が上回られてたら、どうしようもないよ!? どんどん私のHPが減っていってるし……うがー! それなら、これならどうだー!
「『爪刃乱舞』! これで、思いっきり岩に叩きつけ……って、巻きついてきました!?」
待って、待って、待って!? 少し強引に振り回して、ウツボをムチみたいにして叩きつけられたらと思ったら、前脚に巻きついてきたんだけど!?
咲夜 : あー、更にダメージ量が増えたな。
いなり寿司 : スキルは使ってない巻きつき攻撃だろうけど……屈強のステータスも高いから、通常攻撃の威力も高めか。
金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。このウツボ、エリアボスじゃなくても、普通に強くねぇ?
ミナト : ウツボはかなり強い部類だねー。残念ながら、オフライン版ではプレイ可能な種族じゃないんだけど……。
富岳 : 生命系統と屈強系統で進化してる場合では、ウツボは避けた方がいい種族だな。下手すると、サメとかよりも強い場合がある。
ヤツメウナギ : このウツボ、避けたくなる要素が満載のパターンだなー。
チャガ : かなり攻撃性が高いのに、少し不利になるとすぐ岩の隙間に逃げ込むからな。遠距離でも仕留めにくい、厄介な相手だ。
G : 低くあって欲しい要素が、全て高いという最悪のパターン! 場所的にウツボの可能性はあると思ってたが……ここまで、状況が悪いとはな!
イガイガ : やっぱり、サクラちゃんの引きはとんでもないな!
真実とは何か : それが真実なのである!
「そんなのがエリアボスになってるんですか!? えい! えい! この! 噛みつきをやめてください!」
うがー! 巻きつかれたまま、なんとか前脚を振り回して、岩にウツボを叩きつけてるけど……全然ダメ!? 朦朧でも入ってくれれば、少しは違うはずなのに……!
「全然、離してくれないんですけど!?」
ぐぬぬ!? このままじゃ、私のHPがどんどん削られて、死んじゃうよ!? ……死ぬのは想定してたけど、まさかここまで一方的な展開になるとは思ってなかった!?
ミツルギ : まぁ、ウツボからしたら……離す理由はないんだよな。
神奈月 : これ、サクラちゃんはほぼ詰み状態じゃね? ここから逆転出来る余地ってある?
富岳 : 正直に言えば……ないな。朦朧が入れば、僅かだけど逃げるチャンスはあるが……。
チャガ : 朦朧は、運頼りだからな。こうも巻きつかれた状態じゃ、上手く頭を岩に当て続けるのも難しいだろうよ。
ミナト : んー、まぁ確かに、これは難しいかも?
咲夜 : ミナトさんでも難しいって思う状況!
「その情報、絶望的過ぎるんですけど!?」
あの簡単に無茶な方法を言うミナトさんでも、難しいって断じちゃう状況は厳しい過ぎませんかねー!?
ミナト : このウツボ、色々と構成に隙が無さ過ぎてねー。この構成なら、噛みつかれるのは一番避けたい事なんだけど……もうそうなっちゃってるからさ? せめて、縄張りが使えれば、可能性もあったんだけど……。
サツキ : 縄張り、まだ再使用時間中だー!?
水無月 : 切り札が使えないのが痛いんだ!? うー、あと少し経てば使えるのに!
「なんで、こういう時に限って、使えない状態なんですかねー!? 『放電』『放電』『放電』! あ、回復量が少し減ってます? 『放電』『放電』『放電』!」
少し噛みつきの圧迫感も緩んだ気がするし……って、わー!? 今度は、全身での巻きつきの締め付けが強くなった気がする!?
こんにゃく : あー、スキルが切り替わったか?
ヤツメウナギ : 切り替わったんだろうが……状況はさっぱり変わらんな。
咲夜 : 『胃袋』だろうが、『捕食回復』だろうが……サクラちゃんの受けるダメージの方が多いしなー。
ミナト : 縄張りが使えるようになるまで耐えれば……んー、この様子だと保たないかも?
「勝てるとは思ってなかったですけど、ここまで圧倒的だとは思いませんでしたよ!?」
ぐぬぬ! もう私のライオンのHPは尽きそうだし……Lv差をもう少し埋めないと、縄張りがあっても厳しいよね。うー! このまま一方的に仕留められるのは気に入らないけど、どうにかする手段が……あ、これはどうだろ!?
「一か八かです! 『疾走』!」
確か、崖上に登れる道がこの南の方に……ううん、別にそこじゃなくてもいい! 少しでも高い場所までいければそれで十分!
ミツルギ : ん? なんで崖に向かって駆け出した?
G : おっ、これは何かする気だな!
イガイガ : どうする気……って、崖を跳び上がり始めた!?
咲夜 : いやいや、そこは無茶なルートだよな!? てか、駆け上っても意味ないだろ!?
サツキ : あ、踏み外した!?
「あはは、思ったほど駆け上がれませんでしたねー! でも、ある程度の高さにはいけましたし……これで、どうですかねー!」
落下し始めた中で身を捻って、ウツボの頭が尖った岩の向くようにして……そのまま、落ちるのです!
「うぐっ!? あ、やりました! ウツボに『朦朧』が入って、力が抜けましたよ! ここから、少しでも反撃を――」
<サクラ【至妙なライオン【雷】】が死亡しました>
<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>
……え? 落下では死ななかったのに、なんで立ち上がって距離を取った瞬間に死んだの?
金金金 : 呆けている狐っ娘アバター。あー、まぁ気持ちは分かる。
ミナト : 上手くウツボを外せたけど……自分の状態異常の確認を忘れちゃってたね。サクラちゃん、ウツボの噛みつきが外れた時点で、『出血』になってたよ?
富岳 : すぐに大きく動いたから、それで一気に残りの生命が削れてたな。
ミツルギ : 今の死因は、それになるなー。
真実とは何か : それこそ、真実なのである!
「あー!? 出血になってたんですか!?」
ぐぬぬ! 一か八かの賭けで上手くいって、ウツボを引き離せたと思ったのに……そんな死に方、酷くない!? むぅ……納得、いかないー!
「うがー! ちょっと良い線行ってた気がするのに、死にました!?」
「あー、うん。まぁそういう事もあるよ」
「なんか反応、雑じゃないです!?」
「だって、サクラが死ぬのは決定事項だし?」
「決定にしないで下さいよ!?」
「でも、実際に死んだでしょ?」
「それは……そうですけど!」
「まぁLv差があり過ぎたから、今のを凌げても結局死ぬからねー。さて、次回は『第744話 リベンジに向けて』です。お楽しみに!」
「あのウツボ、絶対にリベンジしてやります!」




