第732話 磯場に到着
うがー!? チドメグサを急いでアイテム欄から取り出して、すぐに食べる!
「……ふぅ、なんとか出血は止まりました」
踏み外して落ちた時は焦ったよ! むぅ……『移動守護』で大丈夫だと思ったのに、今のって駄目なんだ……?
イガイガ : やらかしの回収速度、早いわ!
G : 『移動守護』があろうとも、サクラちゃんはサクラちゃんだったか。これで一安心だな。
「何が一安心なんですかねー!? あー、折角、胃袋を満タンにしたのに、もう使い切っちゃいました……」
ぐぬぬ!? それどころか、HPが8割くらいまで減ってるし……全快するまで、いきなり足止めだー!?
むぅ……華麗にぴょんぴょんと降りて、綺麗に着地するつもりだったのに、なんでこうなったの!?
金金金 : 不満顔の狐っ娘アバター。さっきの降り方、大丈夫だと思ってたっぽいなー。
ミツルギ : そうみたいだけど……流石に『移動守護』でも、崖を降りる補助までは無理だからな?
富岳 : 大型種族なら特にだな。元々の足場が狭いとこは、どうやってもフォローは出来ん。
ミナト : 跳び上がるのなら、それくらいの足場でもいけるんだけどねー?
神奈月 : いやいや、登るのも難しいから!? ライオンの足、1つ分程度の面積でどうしろと!?
ミナト : 着地するのは後ろ足、1本だけでいいんだよ。他は、崖に寄りかかりつつ、少しの出っ張りに爪をかける感じでね? その状態から、片足で次の足場へジャンプ!
神奈月 : 相変わらず、無茶言ってるー!?
こんにゃく : 理屈を説明されても、実行出来る気は全くしない!
ミナト : でも、降りる場合は下がまともに見えないからねー。さっきのサクラちゃんみたいなのは落下の勢いもあるから、中々難しいんだよねー。登る方は、降りるよりも簡単なんだよ?
富岳 : まぁ簡単に言えば、普通の猫が高いところに登って、そのまま降りれなくなるのと同じような理屈だ。
サツキ : ライオンは猫科だしねー!
「……むぅ、足場が狭過ぎたのが原因だったんですね。あー、確かに降りられなくなってる猫って、確かにいますよねー!」
そっか、そっか。身近な例で、降りられないパターンってあったんだね! 姉さんも言ってるけど、ライオンも猫の一種だし……そういう影響もあるんだ!
いなり寿司 : まぁ『移動守護』は万能じゃないと思っておいた方がいいぞ。曲芸の類いの移動は、ほぼ無理だと思ってくれたらいい。
ミツルギ : そうなるなー。少し気を気を付ければ通れるような場所を、安定して通れるようにするスキルって認識程度でいいぞ。
咲夜 : 元から不安定過ぎる場所には、無力!
真実とは何か : それが真実なのである!
「それで、さっきの大転落ですかー。中々、手厳しいですね!? まぁそれでも、生きてるだけマシですかねー?」
あれ? でも、自分で飛び降りた場合って死ななかったような気がするよ?
ミツルギ : ちなみにだが……落下でダメージを受けても、HP1は必ず残るから、広い場所に向かって飛び降りる方がまだマシだぞ? さっきみたいな場合だと、岩のあちこちにぶつかって、『出血』になるからな。
咲夜 : 実際、そうなってたしな! むしろ、危険視すべきは『出血』と『朦朧』!
こんにゃく : 落下ダメージでHP1になり、『出血』の継続ダメージで死亡なんて事も……まぁあるな。
富岳 : 交戦中だと、自分で飛び降りてもHP1が残る事はないのは要注意だな。
ミナト : あ、着地場所の地形によっては、一発でアウトな場合もあるから、そこも要注意ねー!
「一発でアウト……あ、尖った岩の上とかです?」
さっき転がり落ちた時でも、あちこちで出血してたんだから……そんな場所の上に落ちたら、無事とは思えないもん!
ミナト : うん、正解! その辺の岩、冗談抜きで一発アウトな場合があるからねー!
いなり寿司 : むしろ、あの落ち方でHPが8割も残ってたのは運がいい方かもな?
神奈月 : 間違いなく、胃袋のお陰はあるな。
こんにゃく : あと、さっき上がったばかりの堅牢もか。かなり増えたから、軽減効果はかなり出てるはず。
ミツルギ : あー、確かにそれはあるだろうな。そうじゃなければ、さっきので死亡だったかもな?
「堅牢が上がってなければ、危うく死ぬところだったんですか!?」
危ない、危ない!? 『移動守護』を過信して自分から落ちた形になっちゃってたけど、その過程で手に入った堅牢のステータス強化が命拾いした理由だったんだね!
「……まぁ過ぎた事はいいとして、周囲の警戒をしないとです! あ、水溜まりがありますねー! これ、中に何かいますかねー?」
落ちた事ばかり気にしてて、周囲の事を全然気にしてなかったよ!? 私より格上に敵ばかりなんだし、まだマップが使えないんだから……って、わー!? 水溜まりを覗き込んだら、見切りに反応!?
「わっ!?」
とりあえず、大急ぎで跳び退いて回避……わっ!? これ、窪みに脚が入ってバランスが……あっ、普通に踏ん張れた? あれ?
金金金 : 不思議そうな狐っ娘アバター。あー、後ろの右脚が、岩の窪みに入ってるな。よく、バランスを崩さなかったな?
ミナト : あ、これは『移動守護』の効果が出てるね。そういうちょっとした段差でバランスを崩しかける程度なら、ちゃんとバランスを整えてくれるよ。……正直、そういう自動補正は邪魔だけど。
富岳 : どうしても自動補正は、感覚に狂いが出るからな。サクラちゃんが不思議に思ったのも、そのズレだろうよ。
「あ、そういう事なんですか! でも、便利ですね、これ!」
自分の感覚とのズレが出るのは……多分、慣れるしかなさそう! ふふーん! 自分で自覚出来る、バランスの崩れは無視出来るのは大きいはず! 回避先に足場、気にしなくて良さそうだもん!
神奈月 : 超上級者以外は、それに慣れた方が動きはスムーズだぞ!
こんにゃく : 超上級者は、自前で地形もちゃんと把握して、回避行動も全てコントロールする無茶な事を平然としてるだけだからな! それが出来ないなら、自動補正に慣れた方がマシ!
「あはは、確かにそれは無茶苦茶ですね! それはそうとして……さっき攻撃してきたのは、何ですかねー? 水が飛んできてた気がしますけど……そこの水溜まりの中からでしたっけ?」
慌てて跳び退いたから、水溜まりの中は今は見えないんだけど……何かがいたから、攻撃されたんだろうね?
ミツルギ : 水溜まり……そういう場所は『タイドプール』って呼ぶんだが、まぁ色々といたりするからなー。
ミナト : もしくは、『潮溜まり』とも言うよー! 海水の潮汐の関係で、潮が引いた時に岩場に海水と一緒に色々と取り残された場所!
金金金 : オンライン版だと潮の満ち引きはあるが……オフライン版だとどうなんだ?
富岳 : オフライン版では潮汐での変化はないな。エリアによって完全に固定状態になっている。
咲夜 : つまり、ここは常に取り残されっぱなし!
金金金 : あー、そういう風になるのか。
「あー、潮溜まりってどこかで聞いたような覚えはありますねー! はっ!? という事は、そこの水溜まり……潮溜まりの中には、逃げ場のない魚とかいるんです!?」
もし、そうだとすると……絶好の攻撃チャンスな気がするよ!?
金金金 : 嬉々とし始める狐っ娘アバター。まぁ潮溜まりなら、そういう事になるのか?
ミツルギ : まぁサクラちゃんの思っている通りではあるな。ただ――
「なら、ひたすら攻撃あるのみですね! 『放電』『放電』『放電』『放電』!」
ふっふっふ! さっき見た限り、この潮溜まりってそんなに広くはなかったはず! つまり、この攻撃から逃げる手段を――
「わっ!?」
えっ!? 何か飛んできた!? ぐぬぬ!? 見切りの反応頼りに、横へ跳び退いて回避ー! ふぅ、回避成功!
「今、何が飛んできました? 尖った石みたいに見え……あっ!? 巻き貝が飛んで……じゃないです!? これ、『頑健なヤドカリ』ですか!?」
待って、待って、待って!? 潮溜まりの中から出て来れないと思ったのに、あっさり出てきてるんだけどー!? しかも、そこそこ大きいよ!?
金金金 : まぁ、海の生物だからって、陸に上がれないのばっかじゃないよな。
ミツルギ : 出てくるのもいるから注意しろって言おうとしたんだが……その前に動き出したしなー。
「っ!? また見切りに反応……わっ!? 今度は、『鋭敏なカニ』ですか!?」
ぐぬぬ!? 魚ばっかで仕留めやすいかと思ったのに、全然そんな事はなかったよ!? 今、出てきたのは2体だけど……なんか他にも出てきそうな気がしてきた!?
「作者さん、作者さん!」
「ん? サクラ、どうしたの?」
「お年玉、貰いに来ました!」
「え、自分が落ちる落ちるのだけじゃ不満だった?」
「それ、字が違いません!? 『落とし』って意味じゃないですよ!?」
「……サクラ、お年玉ってのは年始に貰うものだよ?」
「だから、貰いに来てるんじゃないですか!?」
「こっちは年始だけど、そっちは夏休みでしょうが!」
「ここではそれは関係ないですよ! あの私とこの私、同じとは言い切れませんし!」
相変わらず無茶言ってるね、この主人公は!?」
「なのでお年玉を――」
「おーい、サツ――」
「待ってください! 作者さん、それは卑怯です!?」
「いやいや、ここは自発的に配りたがる姉に任せるのが一番――」
「新年、あけましておめでとうございます! 今年もよろしくねー! はい、作者さん、次回予告!」
「強引に〆に来た!? いやまぁいいけどさ。さて、次回は『第733話 潮溜まりでの戦い』です。お楽しみに!」
「今年も頑張っていきますよー!」
「ところで、サクラ? 妙にサツキを避けたがってるのは……何故?」
「普段は尊敬してますけど、明確に暴走するのが分かる時は避けたくなるんですよ!」
「……なるほど」




