第721話 昼食を作って
高校での色々な予定は済ませて、結月ちゃんの家までやってきた! もう12時を回っちゃってるから、すぐに台所まで行って、お昼の準備開始だー!
それにしても……お店の建物が別で、隣に一軒家がある感じなんだねー。てっきり一緒の建物かと思ってたんだけど、全然そんな事はなかったよ。
「さて、それじゃ早速、リゾットを作っていこうかい」
「ササっと材料、出しちゃうねー!」
「うん!」
手慣れた様子で、楓さんと結月ちゃんが調理道具や食材を用意していってる。普段から料理をするから、本当に慣れてるんだろうねー。……うん、私の手際より遥かにいいよ。
「……あの、私は何をすれば?」
初めて入る台所だから、どこに何があるか分かんない! 探せば見つける事は出来るとは思うけど……手際が良すぎて、私が入り込む隙間がないよ!?
「美咲は……玉ねぎをみじん切りにしててくれるかい? 全く料理をしない訳じゃないみたいだし、そのくらいは出来るよね?」
「それくらいなら、問題なーし!」
ふっふっふ! 玉ねぎくらい、みじん切りにするのは簡単なのですよ! 流石にその程度も出来ずに、多少は料理が出来ると主張する気はないし!
「包丁、そっちの中ねー!」
「あ、うん!」
シンク下の扉を開ければ、包丁が何本か収納されてるね。……もっと色々な種類があるかと思ったけど、案外そうでもなかった? あ、多分だけど、お店の方にあるのかも?
まぁいいや! 私の家にもあるような普通の包丁を取って、玉ねぎの皮を剥いて、みじん切りにしていこー!
◇ ◇ ◇
それから、私は玉ねぎ以外の食材も切るのを担当しつつ、楓さんが炒めていくって感じで進めていってる。結月ちゃんは、なんだか席を外しちゃってたけど……あっ!? チーズの塊を持ってきて戻ってきた!
「結月……チーズを塊で買ってたとはね。それ、店のかい?」
「ううん、これは自前で買ったやつ! お店の方じゃチーズを使うメニュー、そう多くはないけど……色々と作ってみたかったから、夏休みに合わせて買ってみたんだよねー!」
「おー、そうなんだ!」
1㎏のチーズって、袋に入ったものなら見たことあるけど、塊そのものとかは初めて見た! これから開封するみたいだけど……これ、結構いいチーズな気がする! パッケージに日本語が書いてないし!
「ねぇねぇ、結月ちゃん! そのチーズ、SNSの載せてもいい?」
「え? いいけど……あれ!? 美咲ちゃんの場合、商品名を出すのって大丈夫なの!?」
「……どうなんだろ?」
別に宣伝をしようって訳じゃないんだし、普通に載せる分には問題なさそうだけど……。
「問題はないとは思うけど……SNSに載せるのは完成した分だけでいいんじゃないかい?」
「……その方がいいかも?」
今の私の『サクラ』は、明らかに知名度は上がってきてるんだし……何をどこまでやっていいのか、その辺は把握しておかないと! 今はさっぱり分かんないから、どこかで兄さんか聡さんに確認してみよー!
ステマは危ないって話はあったんだし、そういう確認は大事! 『サクラ』で実際に商品の宣伝をしてるんだから、ちゃんとしないと――
「あっ!? チーズを取ってきてる間に、もう大体の作業が終わってる!?」
「元々、そう材料は多くないからね。ほれ、サッサとチーズの準備をしな」
「うん! そうするよ!」
おー、なんか専用の削る器具みたいなので、粉チーズになっていってるねー! これなら、あっという間に下準備は完了かな?
◇ ◇ ◇
生米は半透明になるくらいまで炒めて、他の具材も全部を炒め終わって、味付けのコンソメを入れて、弱火で煮て……仕上げに結月ちゃんが削っていたチーズを投入!
「よし、こんなもんだね」
「いい感じに出来たね!」
「おー! 美味しそう!」
ちょっと煮るのに時間はかかったけど、それでも手順としては簡単な感じだったよね! まぁ結月ちゃんと楓さん、どっちも手慣れているのが大きい気もするけど!
「美咲ちゃん、SNS用にササっと撮っちゃって! お腹空いたー!」
「あ、うん!」
良い匂いがしてるし、私もお腹は空いた! こうやって自分で作ってると、早く食べたくなってくるよねー!
楓さんが手早く盛り付けてくれてるし……おー、パセリと黒胡椒がパパッとかかって、完成したのですよ! ササっと写真を撮って……。
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友達と作った、チーズリゾット!
美味しそうに出来ました!
チーズリゾット.jpg
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ふふーん! 飯テロ、投稿だー! 今回はお母さん作じゃなくて、私もちゃんと調理には参加してるからね! 1人で作った訳じゃないけど、それでも不恰好にならない程度にちゃんと食材は切れたし!
「さてと、それじゃササっと食べようか。こういうのは冷えたら美味しくないからね」
「冷房が効いた中、暖かいのを食べるのもありだよねー!」
「あはは、確かにそうかも!」
少し前に配信で出た雑炊の話題から、このリゾットを作る事になったけど……うん、良いものが出来た! こういう感じになるとは、思ってなかったねー。
合間で使い終えた調理道具は片付けておいたし……食べられる状態にもなった! 結月ちゃんと楓さんも座ったし、お昼を食べていこー!
「「「いただきます!」」」
そんな風に声が被りつつ、チーズリゾットを食べていくのさー! スプーンで掬って、パクリと一口……。
「っ!」
「あっ! これ、美味しい! 楓、成功だよ!」
「いい味加減だね。美咲は……随分と美味しそうに食べてるじゃないかい?」
「だって、今まで食べた中で一番美味しいもん!」
リゾットとかまともに食べた覚えはないけども……これ、すっごい美味しい! チーズの濃厚な味がしっかりと出てるし、食べるのが止まらないかも!
「なんとなくだけど、美咲の配信が宣伝になる理由が分かった気がするよ」
「美咲ちゃん、本当に美味しそうに食べるからねー! 作った方からすると、嬉しい反応だよ!」
「……え? あはは?」
そう面と向かって言われると照れるけど……美味しいものは美味しいもんね! 自然と満足感が顔に出ても仕方ないのですよ!
「それはそうと……昼からはどういう服を買うんだい?」
「あ、具体的にどんな服が欲しいの? 帰る時間も考えたら、そう時間はかけられないし……ある程度、先に決めておいた方がいいかも?」
「えっと、外出用の服を何着かかな? お盆に、姉さんのとこに遊びに行く予定なんだ! あと、フルダイブで同じのが使えるやつ!」
部屋着は今あるので十分だから、必要なのは姉さんのとこに遊びに行く時に着ていく服! フルダイブ用のデータが一緒にあれば、それを使えばこの前みたいな打ち合わせでも問題ないよね!
「美咲ちゃん、お盆に葵さんのとこに行くの!?」
「うん! あ、姉さんのとこから配信は出来るようにしてくれるって事になってるから、配信はいつも通りにやるよ?」
「おー、そうなんだ! あ、もしかして、それで姉妹配信って話が出てたの!?」
「……え?」
あ、そういえば、その件は結局聞けてない!? ……どこかで、その話もちゃんとしないとね。
「……あれ? なんか予想外の反応なんだけど……」
「……あはは。他の件が色々あって、まだその話が出来てなくて?」
「あ、そうなんだ!」
姉さんにはエフェクトの作り方のコツや、ドラゴンのモーション作りの話も聞きたいし……今日の配信が済んだら、聞いてみないとね。
「遊びに行くなら、動きやすい服装の方がよさそうだね。スカートよりはズボンかい?」
「うん、その方がいいかなー?」
「美咲ちゃん、真っ白な清楚系なワンピースとか似合いそうだけどなー! 麦わら帽子も添えて!」
「結月ちゃん、姉さんと同じ事を言ってる!」
「え、そうなんだ!?」
「まぁ確かに似合いそうではあるね。どこのヒロインだって感じだけども……」
「……あはは」
そんなに似合いそうなのかなー? んー、折角だし、そういうのも買ってみるのもあり? まぁ出来るだけ動きやすい格好の方がいいよね! 出来れば、露出は控えめで!
ともかく、買い物に行くのは食べ終わってからだから、今はチーズリゾットを食べちゃわないと! あー、うん。やっぱり美味しいね、これ!
「そういえば、作者さんって料理はするんです?」
「いや、基本はしないよ?」
「ふっふっふ! それなら料理の上では私が上ですね!」
「全く何も出来ないとは言ってないんだけど……」
「いえいえ、見栄を張る必要はありませんから!」
「……まぁそういう事でいいや」
「料理が出来ないと認めましたね、作者さん!」
「……少なくとも、レシピを見て、手順通りにやるくらいは出来るけどね? 実際に作る機会が、あまりないだけで」
「……え、出来るんです? それすら無理って人、いますけど!」
「手順すら分からなくて、その描写が出来る訳ないでしょ」
「はっ!? それもそうでした!?」
「まったく、この主人公の思い込みは……。さて、次回は『第722話 買い物に出掛けて』です。お楽しみに!」
「次は、お買い物だー!」




