第717話 今日は高校へ
電車でガタンゴトンと揺られながら、今日は高校へ!
昨日、楓さんが心配してたのもあるし、料理部とコンピュータ部へ入部しに行くのですよ!
もう夏休みに入ってるから、電車の中は空いてるねー。いつもの通学時間よりは少し遅めだし、元々混雑するタイミングでもない気がするけど!
「結月ちゃんに、今から行くって伝えとこ!」
もう既に電車の中ではあるけど、高校までは距離があるから、今からでも大丈夫! 結月ちゃんの家、高校に近いしね。
楓さんは結月ちゃんのとこに泊まるって言ってたし、問題ないはず! 到着時間を伝えておけば、間に合うよね。
「あ、もう返事がきた」
早いね、結月ちゃん! 『分かった! お店の方に寄ってくれれば、一緒に行けるよー!』って……おぉ! 確かに大した手間ではないから、それはありだね!
「うん、それが気楽かも?」
1人で夏休みの職員室に行くのはちょっと勇気がいるし、料理部の2人が一緒なら行きやすいよね! 楓さん、副部長なんだし!
「『それでよろしくお願いします!』……これで、よし!」
結月ちゃんに返事を送って、予定は決定! あ、そういえばお昼からは服を買いに行こうって話になってたっけ! お昼は、どこかで食べる感じかな?
「……友達と外でお昼って、いつぶりだろ?」
中学生の頃のあの騒動がある前は、たまーにあった気がするけど……その頃の友達とは、もう縁が切れちゃってるしね。家族での外食はあったけど、友達とは……3〜4年ぶりくらい?
あ、でも結月ちゃんの家で食べたのは……あれはカウントしていいのかな? あれ、姉さんの友達のとこへオマケで着いていってただけだし……まぁそれが大きな変化に繋がってた気もするけど。
「まぁいっか!」
その辺の細かい事は、結月ちゃん達と合流してから決めちゃおう! 文化祭の方の作業の進捗も聞いておきたいしさ!
あ、文化祭といえば……ふふーん! 電車での移動中に、頼まれているドラゴンから作っていこうっと! まずはざっくりとしたデザインから……。
「ドラゴンといえば、やっぱり翼の生えた大きなやつだよね!」
イメージ的には、昨日の配信中に遭遇したあのドラゴン! 翼の生えてない、ヘビ的に細長いのもいるけど……そういえば、どっちが良いかってのは聞いてたっけ? あ、翼ありの巨体とか言ってた気はする?
「一応、確認しとこ!」
うふふ、折角話せるグループメッセージを用意してくれてるんだから、疑問に思った事は聞けばいいのですよ!
という事で、『これからドラゴンのデザインを始めるけど、翼のある大きな西洋系のドラゴンでいいですか?』って書き込んでみよー!
「あ、もう返事がきた! やっぱり、そっちでいいんだね!」
すぐにコンピュータ部の人達から、それでいいって反応が返ってきたし、思ってたイメージで問題なさそう! 何か体色で揉め始めたけど……まぁ色については後で考えるのでよさそうかな?
ともかく、サクッとラフデザインをやっていこー! ちゃんとイメージを固めてからじゃないと、フルダイブの方で作っていくのも大変だしね。
◇ ◇ ◇
「わっ!? ここで降りないと!?」
ぎゃー! ドラゴンのデザインに集中してて、降りる駅に着いたのに気付くのが遅れたー!?
「ふぅ……なんとか、セーフ!」
危ない、危ない! 危うく、乗り過ごして次の駅まで行くところだった! 視界の端に表示させたままにしてたグループメッセージで、気になる内容をチラッと見てなければ、そのまま気付かずにいたかも?
「……あはは、私の入部、紅一点って騒ぎになってるんだ?」
楓さんがこれから私が、料理部とコンピュータ部の両方に兼部とはいえ入部する事を伝えたら、なんか凄い反応になってるみたい?
まぁコンピュータ部、女の子は誰もいなかったもんね。部長さん同士があれだけバカップルぶりを発揮してたし、色々と思うところはあるのかも?
「でもまぁ、これで堂々と参加出来るんだし、それでもいいよね?」
別にチヤホヤされたい訳じゃないけど、歓迎されてるのは素直に嬉しいしね。それに……コンピュータ部では、私自身の頑張りだって言ってくれた佐渡くんもいるんだし……。
「うー! 暑っいね、電車から出ると! 夏の暑さ、凶悪……」
なんか顔が熱くなってきちゃったし、急いで結月ちゃんの家まで行こー! まだ10時になったばかりだから、お昼時には少し早いし、混雑してる事はないはず!
◇ ◇ ◇
暑い日差しの下を歩きながら、結月ちゃんの家の定食屋へ到着! あー、冷房が効いてて、生き返るー!
「おっ、葵の妹さんがきたね」
「あ、こんにちは! えっと……」
「花苗だよ、花苗。葵が色々やらかして、大変みたいだね?」
「……あはは、まぁなんとかやってます」
「葵は、昔から暴走癖があるからね。振り回されて、大変でしょ?」
「……否定し切れないですね」
当たり前だけど、お店の方から入ったら普通に姉さんの友達の花苗さんがいたよ! おー、この時間帯でも、人は少なくても他にもお客さんはいるんだね?
というか、姉さんって友達からもそういう風に思われてるんだ!? うん、我が家の家族全員の認識とも一致するね!
「結月と楓ちゃんは奥にいるから、そっちから入っていくといいよ。ま、色々とあるだろうけど、頑張って」
「あ、はい!」
多分、花苗さんは色々とバレてるのも知ってるんだろうね。文化祭の件も当然知ってるだろうし……うん、本当に頑張ろ!
という事で、明らかにお店の関係者以外は立ち入り禁止に見える扉を開けて、奥へと入っていくのさー! あ、和室にちゃぶ台が置いてあって……ここ、休憩室って感じ?
結月ちゃんと楓さんが座ってるし、お店の方じゃ邪魔になるから、こっちで待ってたみたいだね。
「おっ、美咲が来たね」
「美咲ちゃん、ようこそ! 暑かったでしょ!」
「うん、暑かったー!」
またすぐに高校まで行かなきゃいけないけど、今は少し涼ませてもらおうっと! 夏の日差し、殺人的に凶悪なのですよ!
「美咲、少しここで待つのでいいかい?」
「いいけど……すぐに高校には行かないの?」
「コンピュータ部と料理部の顧問、両方ともに既に話は通してるんだけどね? 11時くらいまでは、補講をやってる最中だから手が空かないそうでね」
「今から行っても、暑い廊下で待つ羽目になる可能性が高いんだよ!」
「あ、そうなんだ!? それなら、終わるまで待った方がいいかも……?」
そっか、そっか。私は今回、なんとか赤点は回避したから補講はないけど、そうじゃない人もいるもんね! そっかー、先生の手が空いてないんじゃ、仕方ないよね。
「さてと、それじゃ今の間に夏休みの課題を少しでも進めておこうかい」
「えー!? 今日はやらなくてもよくない!?」
「そうやって面倒がると、後々が大変な事になるのは経験済みのはずだけどね? 結月はこう言ってるけど、美咲はどうしたい?」
「そういう事なら、少しでも進めておきたい! 今年は、余裕を持って終わらせたいし!」
「美咲ちゃん!? うー!? 真面目にやる気だー!?」
「多数決で、やる事に決まりだね。まぁ11時までだから、そう長い時間じゃないさ」
「結月ちゃん、面倒な事は早めにやっちゃおう!」
「……はーい」
ものすごく嫌そうな結月ちゃんだけど、嫌な事は早めに終わらせるに限る! 自分だけだと誘惑に負けて、絶対に後回しにして、夏休みの終盤で後悔するんだから……ここは楓さんの力を借りるのですよ!
「あ、そうそう。コンピュータ部の連中に、入部の件はもう言ってるけど……そこは問題ないね?」
「うん、問題ないよ! あそこで堂々と作業出来る方が、色々と便利だとは思うし!」
料理部だけの入部でも文化祭の手伝いは大丈夫そうな気はするけど、やっぱりコンピュータ室の設備を使わせてもらうなら、コンピュータ部にも在籍してた方がやりやすいもんね!
「ねぇねぇ、楓? あのはしゃぎっぷりは、大丈夫なの?」
「あー、まぁ佐渡ってストッパーもいるからね。部長のバカップルっぷりに比べれば、大丈夫だろうさ」
「あ、それもそだね」
「……佐渡くんって、ストッパーなの?」
確かに、私が手伝いをするってなった時にも、気を遣ってくれてたけど……ちょっとその辺、気になる?
「佐渡は、副部長だからね。……あの部長同士のバカップルへの妬みを抑えてもいるよ」
「ちなみに、料理部の方で抑えてるのは楓ね!」
「あ、そういう感じなんだ!?」
そっか、そっか。あの部長さん同士のバカップルっぷりに対して、特に問題が事が起こらないのは……それぞれの部の副部長が抑えているからなんだね。
それは凄いとは思うけど……あれは、少し痛い目をみてもいい気もする! 流石に、色々と自重させた方がいいような……?
「ふふーん! 連載、再開です!」
「1週間ほど再開がズレ込んで、すみません……」
「作者さん、なんで遅れたんです?」
「あー、『帯状疱疹』ってのになっちゃってね」
「……何かの病気です?」
「まぁ病気ではあるかな。身体の半身に帯状の発疹が出るヤツで……まぁ右腕に盛大に出ちゃってね。右手は痛いわ、体力は落ちまくってるわ……うん、休憩期間が、療養期間になるとは思わなかった……」
「それ、嫌ですね!? もう大丈夫なんです?」
「まだ発疹から水ぶくれに変わった部分が治りきってないのと、軽い神経痛は残ってるけど……まぁ全快まで、どうしても時間のかかる部分だから、仕方ないね。とりあえず、執筆に支障がない程度には回復はしたよ」
「それならいいですけど……」
「いやー、体調には気を付けないといけないと、痛感したね。本格的に体調を崩さないように、お休み期間を設けていたつもりだけど……疲れは溜まっていたらしい」
「無茶はしないで下さいね!」
「うん、まぁそのつもりではいるよ。さて、次回は『第718話 用事を済ませて』です。お楽しみに! あ、しばらくサクラのリアル回が続きます」
「そうなんです!?」




