第714話 サクラの呟き その18
今日の晩御飯は冷しゃぶで、さっぱりしてて美味しかった! いつも通り、その写真もSNSに上げておこー!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
晩御飯の、冷しゃぶ!
ゴマだれが良いですよねー!
冷しゃぶ.jpg
コメント【0】拡散【0】いいね【0】
何気なくやってるけど、これも日課になってきたねー。さーて、晩御飯も食べ終えたし、姉さんに通話を――
「美咲、ちょっといいか?」
「わっ!? 兄さん、どうしたの?」
姉さんと通話をしようと思ったら、いきなり兄さんがドアをノックしてきてびっくりした!? でも、このタイミングで兄さんが声をかけてくるって事は……姉さん絡みの予感!
「ある程度、予想は出来てると思うが……姉さん関係だ。姉さんだけに話させるとややこしいから、聡さんが俺も交えて4人で話したいって言っててな? 今から、いけるか?」
「あ、うん! 丁度、姉さんに通話をしようとしてたとこだから、大丈夫だよ!」
「それなら丁度いいか。俺の部屋まで来てくれ。そっちで話すぞ」
「はーい!」
という事で、自室から兄さんの部屋まで移動! 色々と話した方がいい状態だろうし、兄さんと聡さんが間に入ってくれれば、話は進みやすいよね!
◇ ◇ ◇
兄さんの部屋で、姉さんと聡さんの用意が出来るまで待機中! これ、今日の午前中に課題をやってた時みたいな接続方法かな?
「よし、繋がったぞ」
「やっほー! 美咲ちゃん! 俊くん、準備ありがとねー!」
「手間をかけさせてすまないね、俊くん」
「いえ、これくらいはなんて事ないですよ」
兄さんってあれだよね。聡さん相手だと、ちょっと口調が変わるよね。まぁ聡さんは姉さんと同い年だから、兄さんからしても5歳は年上なんだし、そういうのは関係してそう!
「さてと……美咲ちゃん、葵が配信中にいきなり無茶な事を言ってすまない……」
「……えっと、それは姉妹配信の話ですか? それとも日替わりの浴衣の宣伝の話?」
「おい、配信中に何やってんだ、バカ姉」
「その言い方、酷くない!?」
「どう考えても、配信中にする話じゃないだろ! はぁ……聡さんが俺も交えて話がしたいって連絡をしてきた理由が、よく分かったわ」
「すまないね、俊くん。後で、多少の手間賃は渡させてもらうからさ」
「あー、流石にこれで金を貰うのは気が引けるんで……常識的な範囲で、何か食べ物でも送って下さい。両親も喜ぶと思うんで」
「そうだね。それじゃ、そうさせてもらうよ。……葵、嬉々として選び出すのはいいけど、注文の確定前には僕に見せるように。いいね?」
「分かってますとも!」
その流れって聡さんが確認しなきゃ、姉さんが大量に注文して、消費で困るパターンだー!? 聡さん、そこはちゃんと阻止して下さい!
「さて、それじゃ本題に入るけど……まずは、葵がやりたがっている件の中で、本当にやるなら急ぎになる件からいこうか」
「ずばり、姉妹配信――」
「それは優先度、一番下だからね? 美咲ちゃん、衣装替えの件に浴衣の日替わりの着せ替えをやるのは……実際、どうだい? 向こうは既に乗り気なんだけど……」
「あっ! はい! 浴衣の日替わり着せ替えなら、変なものでもないですし、大丈夫ですよ!」
これって確か、レンタルの浴衣の宣伝って話だったもんね! 配信の中で急に話を出されて、ちょっと困ったやつ!
「美咲ちゃんにはやる意思ありだね。俊くん、1週間ほど、データの反映を任せる事は出来るかい? もちろん、その分の報酬は出すよ」
「まぁ衣装データの反映程度なら、そう手間でもないんで、問題ないですね。美咲、データさえ取り込んでおけば、着せ替え自体は自分で出来るよな?」
「うん! それくらいは問題ないよ!」
今の『サクラ』の着物だって、普通に自分で着付けしたもんね! 浴衣の着付けも自分で出来るし、アバターでも着せ替えはリアルと同じ手順で出来るもん! むしろ、自動で着せ替える手段の方が怪しいくらい……?
「それなら、明日の17時頃までには1週間分……7着の浴衣のデータと、これまでと同じ感じで紹介用のデータを用意するから、明日から頼めるかい?」
「え、明日から!?」
「……随分と、急ですね?」
「ふっふっふ! サクラちゃんの着せ替えは、順番待ち状態になっておりますとも!」
「……え?」
「あー、このバカ姉がそもそも主導してる内容か……」
「俊くん、その呆れ返った反応はなにさー!?」
「……あはは」
そういえば、元々、私の『サクラ』を着せ替えたい人達って多かったんだった! その先陣を切るのが、浴衣のレンタル宣伝を兼ねた人って事なの!?
「美咲ちゃん、着せ替えの件は僕の方でしっかりと選別はさせてもらうからね。少なくとも、宣伝という体裁を準備出来る人に限定はするつもりだから、葵たちの着せ替え人形にされる事は心配しなくていいよ」
「あ、はい! え、でも、別に宣伝って形じゃなくても、私はいいんですけど……」
わざわざ、私の着せ替え衣装を用意してくれるのなら、お金を取るなんてつもりは特にないんだけど――
「美咲、そこは宣伝じゃないと問題が出てくるから、宣伝として受けておけ。それを生業にしてる人が、不用意に無償で出すと……今だと、ステマと判定されて違法になりかねんからな」
「まぁそういう事になるね。僕らの顧問弁護士の仕事を、無用に増やす訳にもいかないからさ」
「違法になるんです!? あー、そっか。配信の中でも、言ってましたもんね」
いなり寿司さんが、浴衣を用意してくれる呉服店の人に注意してたっけ。ステマって……確か、ステルスマーケティングだったよね?
宣伝とは言わずに、有名人に宣伝させるやつ! あれ、何年か前に完全に違法になったってニュースを見た覚えがある!
「そうならないよう、調整は僕の方でやるからね。葵も、不用意な発言は抑えるように。違法行為は、冗談じゃ済まないからね?」
「……はい」
うん、ここは本当に聡さんに任せておいた方がよさそう! 下手に私や姉さんだけで話を進めると、冗談抜きでいなり寿司さんの仕事が増えそうだし!
今考えても、いなり寿司さんが姉さんとリアルで知り合いな上、弁護士さんだったのはびっくりだよねー。まぁそのおかげで、配信も色々安全になった気もするけど!
「それじゃ、詳細は後でデータを作るから、『サクラ』の着せ替えの件に関しての意思確認はこれくらいにしておいて――」
「次は姉妹配信――」
「葵、まだ確認する事があるから、今日はその件は控えておいてくれるかい? それは急がないからね」
「えー!?」
姉さん、なんでそんなに姉妹配信をやりたがってるの!? そもそも、姉妹配信って何をやるつもりなの!? 普段からコメント欄にいるのに、私の配信画面に出てくる意味ってある!?
「……聡さん、他所からの勧誘の話ですか?」
「俊くんの考えている通りだね。美咲ちゃんに来ている勧誘の情報を転送してもらったけども……思った以上に、大手からかなり来ているよ」
「……え? あ、そういえば、勧誘がどうって話もありましたっけ?」
今日の配信の前に、兄さんとそんな話をしてたもんね。今の今まで、すっかり忘れてたけど!
「美咲ちゃん、その辺は本当に無頓着だね? 前にシャットアウトした評判の悪いところからじゃなく、評判のいい大手の事務所からの所属の勧誘なんてのも来ていたよ? まぁ胡散臭い宣伝の依頼も結構あったけど……大真面目な宣伝案件もあったりするね。新作ゲームの試遊なんかもあったりするけども……」
「……え? そんなの、来てたんです!?」
待って、待って、待って!? なんか色々来てるってのは、兄さんに見せた時に分かってたけど、そんな重要な内容だったの!?
「このままその勧誘に乗っちゃって、企業所属の配信者になっちゃうってのも一つの道だね! お姉ちゃんとしては、色々と制約がかかるようになるから寂しいけど……美咲ちゃんがその道を選ぶなら、応援するよからね!」
「姉さん、待って!? 私、企業所属の配信者になる気はないよ!?」
そりゃモンエボの配信はやってて楽しいけど……今の私としては、もっとイラストやデザイン関係をやりたいもん!
「え、そうなの?」
「うん! 今は私、姉さんの弟子みたいなもんだし! 色々と教えて欲しいから!」
「……美咲ちゃんは、配信者よりもデザイン系をやりたいのかい?」
「そうなります!」
「み、美咲ちゃん!? そんなにお姉ちゃんの事……大事にしてくれてたんだ!?」
少し前の私なら、絶対にこういう風には断言しなかった。でも、今はそれを目指そうって気にはなったもん!
それを出す場として『サクラ』での配信はありだけど……企業に所属して、配信者をメインにするのは……なんか違う!
「なら、企業所属はやめておいた方がいいね。『サクラ』のアバターを美咲ちゃんが作ったものだとしても、企業所属となれば少なからず使用に制限がかかるだろうし……それ以外にも、色々としがらみが出来るからさ。そういうのが合わずに、独立しているのが葵だしね」
「姉さんは、色々と社会不適合者ではあるからな」
「俊くん、その言い方は酷くない!?」
「……聡さんなしでやっていけるなら、今の言葉は撤回するが?」
「……ごめんなさい、無理です!」
姉さんが、兄さんに言い負かされたー!? うん、でも内容的には納得!
「美咲がそういう意見なら、所属の勧誘系は全て断っておくぞ。まだ未成年だし、俺が保護者として断るので問題ないだろ」
「あ、うん! それでお願い!」
私が直接断るよりも、兄さんが保護者として断ってもいけるよね! 姉さんならともかく、聡さんではそれはやりにくいだろうし!
「色々な宣伝依頼に関しては……まぁここは、ひとまず、僕が間に入って調整しようか。美咲ちゃん、それでいいかい?」
「あ、はい! それでお願いします!」
宣伝に関しては……まぁ既に色々やってるんだから、特に断る理由もないよね? 新作ゲームの試遊依頼ってのも気にはなるけど……ちょっとそれは時間が取れなさそう?
「それじゃ、今度こそ姉妹配信について――」
「葵、今日はここまでだよ。日替わりの浴衣の件、これからデータを作らないといけないんだからね」
「えー!?」
「俺も、今日はこの辺りにしてくれると助かるんだが? 姉さんの我儘に付き合う気はないぞ」
「俊くんまで!?」
「姉さん、また明日ねー!」
「美咲ちゃんもなの!?」
という事で、大事なお話は終了! 具体的な内容については、まぁ聡さんが整理してくれるみたいだけど……思いっきり、頼りっぱなしになっちゃってるのが少し気になる。
どこかで兄さんや聡さんにお礼をしたいけど、どうすればいいんだろ? 明日、結月ちゃんや楓さんに相談してみよっかな?
「姉さん、随分と姉妹配信を推してきますね!?」
「まぁサツキだし?」
「……それもそうですね」
「納得、早いなー」
「だって、姉さんですし?」
「まぁ確かにそうなんだけど……」
「それにしても、色々とビックリな状況なんですけど!」
「人生、どこで転機が訪れるかは分からないものだからね。でも、サクラ? 企業所属は断ってもよかったの?」
「あ、はい! 今の私は、何をやりたいかははっきりしてますし!」
「それなら、サクラの意見を尊重しようか。さて、次回は『第715話 実況外の探検録 Part.34』です。お楽しみに!」
「今日もそろそろ終わりですねー!」
「そうなるね。その後、3週間ほどお休みを入れるので、ご了承下さい。詳細は活動報告まで!」
「なんだか、章が終わったらお休みって形になってますね?」
「連載と同時に、電子書籍の作成もやってるからねー。作成中の2ヶ月くらい、一切休みなしだったりするんだよ」
「っ!? それは休んだ方がいいですね!?」
「という事で、あっちの第19巻もよろしくお願いします! 執筆環境を新調したから、出費が結構痛いのよ……」
「そうなんです!?」




