第682話 完全体の敵
ふふーん! 完全体に進化してからの色々な確認は終わったし、荒野エリアの名前は変更したし、そろそろ出発だー!
「とりあえず、見通しが良い場所を進んでいきましょうかねー?」
今はまだ夜だから、森の中には入らない方がいいよね! 今日の配信の半分を過ぎた頃には昼になってるはずだし……そういえば、今何時だろ?
「わっ!? もう18時半になってるんです!?」
待って、待って!? まだ全然探索は出来てないのに、思った以上に時間が経ってたー!?
ミツルギ : あー、まぁ今日は色々と確認する事があったからなー。
いなり寿司 : 普段より進みが悪いのは……まぁ仕方ないか。
サツキ : そんな日もあるさー!
ミナト : その原因の1つに、サツキさんの件もあると思うけどねー?
咲夜 : 確かにそうだよなー!?
サツキ : ……あはは? あー!? 思いっきり頷いてる!?
富岳 : 旦那さんに同意したくなってくるな。
神奈月 : 確かに……。
「……その辺を気にし始めたら、また時間がかかりそうですし、気にせずにいきましょうか! とりあえず、敵の完全体を1体、見つけてしまいたいですねー!」
まだ進化してから1度も見てないんだし、早く見たいところ! 敵の進化系統の名前も全部は分かってないし、その辺も早めに把握したいよね!
「えーと、どの方向に進みましょうかねー?」
4エリア分ある広いエリアって話だけど……多分、ここから南側に進むと河川域の下流に繋がってるよね? これ、確認しとこうかな?
「ちょっと質問です! ここから南に進むと、割と早い段階で河川域の下流に繋がってたりします?」
金金金 : あー、位置関係的にはそうなるのか?
ミツルギ : 質問だから、答えるのは問題ないな。サクラちゃんの思っている通り、現在地から南に進めば川の下流に繋がってるぞ。
ミナト : ある程度、東の方まで進んでから南に進めば、更に下流にもなるねー。
咲夜 : ここの東端、海岸沿いでもあるからなー!
ヤツメウナギ : ちょ!? そこは言い過ぎだから!?
イガイガ : 相変わらずの咲夜さんだな……。
咲夜 : はっ!? しまった!?
「えーと……どこかで海に繋がるとは思ってましたし、それがこのエリアの東端だったんですね。まぁそれくらいの内容なら、スルーしましょうかねー」
ネタバレはネタバレだけど、予想出来る範囲ではあるもんね! ミナトさんが言ってた更に下流ってのは、多分河口な気がするし!
「よし、決めました! 海に行きましょう、海!」
目的地、決定! うふふ、東の端が海岸なら、東に進めばいいのです!
サツキ : 目的地、海に決定!
水無月 : 決定!
ミツルギ : 今回、割とあっさり決まったな。
イガイガ : くっ!? 悩んでサイコロタイムに突入とはならなかったか!?
こんにゃく : まぁサクラちゃんが迷わない時って、即決だもんな。
「あはは、まぁ迷う時は散々迷うんですけどねー! それじゃ海に向かって出発です!」
朝日が海から昇ってくるの、見れないかなー? うーん、流石にあと20分くらいで昇り始めるし、流石に厳しいかも? まぁいいや!
とりあえず、出発なのですよ! えーと、見えてる先は……あ、ちょっと背の高い草むらが多いかも? んー、何がいるか分かんないし……。
「出来るだけ、草むらや森の中に入るのは避けたいですねー。あ、タヌキ発見です! えーと、『鋭敏なタヌキ』って……進化系統、俊敏ですかねー?」
弱点は生命、屈強、器用になってるけど……俊敏系統なら、移動速度は速いだろうし、堅牢が高めなのは厄介かも?
ミツルギ : 『鋭敏な』は、俊敏系統で間違いないぞ。
サツキ : 素早いタヌキ、登場!
ミナト : 堅牢と知恵も高いから、ちょっと厄介かもねー。
いなり寿司 : 完全体で俊敏系統のタヌキ……あれを解放していたら厄介か?
富岳 : Lv1だから、流石にまだ解放はされていないと思うが……。
「タヌキに何かあるっぽいですね? まぁどういうスキルか知りませんけど、まだ私に気付いてないですし、先手必勝です!」
ミナトさんでも厄介って言う手段がありそうなのは気になるけど、完全体に進化したてだと、まだ使えない可能性もあるっぽい! まぁどんな手段があったとしても、戦うまでなのさー!
「新スキルのお試し、いきますよー! 『破壊の咆哮』!」
うふふ! 完全体から使えるスキルを持っているのは、私も同じ! どんな使い勝手か、ここで試しちゃえ!
「えーと……あ、もう溜めが始まってますね! なんか、口の辺りが光ってますよ!」
わー! これまでの溜め攻撃と違って、明確に溜めてるエフェクトが出てくるんだ! これ、敵が同じような攻撃を使ってきた時の目安になるかも!
サツキ : ずばり、完全体からの攻撃用のスキルにはエフェクトが出るのさー!
ミツルギ : 見ての通り、そんな感じだな。何度か、始末しに出てきた完全体からの攻撃で、そういうのは見てるだろ。
イガイガ : 昨日の実況外のプレイで出てきたサソリの攻撃とか、まさにそれ。
「あ、確かに昨日のサソリの針、光ってましたもんね! なるほど、これは完全体の持つ攻撃の特徴ですか!」
そっか、そっか! 既に同系統のスキルは見てたんだね、私! そして今、私はそれを使えるようになっている!
「普通に動けるの、いいですねー! あ、もしかして、エフェクトがないと溜めてるかどうかすら分からないからこそ、こういう演出なんですかねー?」
エフェクト無しでのパッと見じゃ、溜めてるかどうか分からなさそうだもん! 『放電』や『放火』と同じような発動感覚で、発動の兆候が分からないのは危険過ぎる気がする!
富岳 : ゲーム的な都合としては、そんな理由だろうな。まぁ特別感も演出しているとも思うぞ。
チャガ : 『破壊』系統のスキルは、モンエボでの最強格になってくるからな。
真実とは何か : それが真実なのである!
「あはは、それじゃその最強格のスキルの威力がどの程度なのか、しっかり見ていきましょう!」
でも、これってどのタイミングでも発動出来るし、どの程度溜めたら、どのくらいの威力になるのかが分からないね!? んー、とりあえず溜められるとこまで溜めようかなー?
「そういえば、どのタイミングで凝縮が出来る……あ、もう今の時点で出来ますね!?」
わー! 凝縮なしの状態で、横への範囲は『獅子咆哮』よりも少し狭い感じ? 射程は……最大がどこまでかは分かんないけど、見える範囲には届くね!
ミツルギ : かなり自由度が高いからな、『破壊』系統のスキル。
咲夜 : でも、使い始めの頃は加減が分かりにくいのが欠点!
神奈月 : あー、あるある。過剰威力にしてしまったり、逆に溜め足りてなかったりなー。
G : どの系統のスキルかによっても、微妙に違ってくるからな。こればっかりは、操作してる種族で慣れていくしかねぇ!
イガイガ : 扱い切れれば、必殺技だけどな!
「おー! 必殺技、いいですね!」
これ、言葉通りで必ず殺す技なんだろうねー! 今の加減が分かりにくいのは、私に限った話じゃないみたいだし、使い慣れていけばいいのですよ!
「とりあえず、ギリギリ当たるとこまで凝縮して、放ってみますね! それでどの程度の威力なのか、確認します!」
多分、最大まで溜めたら即死なんだろうけど……そこまでやったら、加減は分からないもんね! どのくらいの溜めで、どの程度の威力なのかは、ひたすら使って慣れていくのです!
「破壊の咆哮、いっけー!」
おー! なんか衝撃波が光ってるというか……レーザーみたいな感じだー!?
「やった! 直撃で……え、あれ!?」
待って、待って、待って!? タヌキに当たったはずなのに、当たった瞬間に丸太と葉っぱが舞ったのはなんで!?
富岳 : サクラちゃん、油断するな! カウンターが来るかもしれん!
「え? あ、はい!」
何がどうなったのかがよく分かんないけど、今のってカウンターなの!? ぐぬぬ!? 堅牢が高いんだし、カウンターで攻撃を仕掛けて……。
「……あれ? 何も……ないです?」
カウンターどころか、タヌキの姿がどこにも見えないんですけどー!?
ミツルギ : あー、カウンターではなく逃亡パターンだったか。
ミナト : シンプルに『変わり身』だけだったみたいだねー。もう逃げて、どこかに消えちゃったかな?
水無月 : 『変わり身』って、忍者だー!?
紅葉 : タヌキは人を騙すって言うけど、そういうのに関係してるのかい?
富岳 : 思いっきり関係してるな。『変わり身』は成熟体の俊敏のスキルツリーにあるんだが……まぁ見ての通り、1撃を無効化した上で姿を見失わせるスキルだ。
チャガ : 完全体になれば『影分身』ってスキルもあるんだが……これは実体を持つ分身だからな。撃破時の見た目が『変わり身』とほぼ変わらんから、要警戒だぞ。
「実体を持つ分身とかあるんです!? ……今までそんなタヌキには遭遇してないですけど、完全体ってとんでもない事になってません!?」
ぐぬぬ! 折角、新スキルのお披露目だと思ったのに、倒せずに逃げられたー!? 知恵も高いかったから、賢いタヌキでもあったのかも……。
「このタヌキ、なんなんですかねー!?」
「え、タヌキだけど?」
「そういう意味じゃないですよ!? タヌキがタヌキなのは分かってます! 私が言ってるのは、動きの話ですよ!」
「……サクラ、モンエボのタヌキが普通のタヌキな訳がないでしょ?」
「うっ!? まぁそう言われれば、そうかもしれませんけど……。いえ、それでもおかしいですよね!?」
「根で歩く植物とかいるのに?」
「……それはそれ、これはこれです!」
「衝撃波を放つライオンが、普通いるとでも?」
「うぐっ!? そう言われると、まだタヌキの方が現実味がありそうな気がしてきました……?」
「化け狸なんてのは、普通にあるからね。さて、次回は『第683話 気を取り直して』です。お楽しみに!」
「なんか、思いっきり誤魔化されてるような気が――」




