第403話 サクラの呟き その11
「美咲ちゃん、晩御飯だよー!」
「わっ!? 姉さん、びっくりするんだけど!?」
フルダイブを終えてVR機器を外して、携帯端末に切り替えたばっかなんだけど、いきなり部屋に突っ込んでこないでー!? なんか昨日もこんな感じだったよね!?
「晩御飯はお寿司だよー! さっき届いてたから、すぐに食べられるからねー!」
「おぉ! そうなんだ!」
なんか2日続けて豪勢なご飯だね! 姉さんが帰ってきてるからってのが気合を入れてる理由ってのもありそうな気がする!
あ、どっちかというと奮発してるのはお父さんなのかな? 姉さんがお金を出してる可能性もあるのかも?
「ところで、なんでお寿司なの?」
「いやー、お父さんが帰省する度に私が何か用意するのを気にしてたみたいでね? なんか盛大に張り切っちゃったみたい?」
「あ、そうなんだ?」
お父さんが奮発してるのが正解だった! もう届いてるって事は出前を頼んだのかな? ふふーん、まぁどっちでもいいや! 昨日のバーベキューに続いて、今日はお寿司なのですよ!
◇ ◇ ◇
今日は姉さんの部屋の隣にある、別の和室での晩御飯! ここは客間だけど、そこまで使用頻度は高くないんだよねー。古い家で半分くらいは和室だから、こういう時には丁度いい部屋!
おぉ、美味しそうな握り寿司がいっぱいなのですよ! これはあれだね。またSNSに飯テロをしないといけないやつ!
携帯端末で写真を撮って、文字を入力して……えーと、特に誰の姿も映ってないし、窓ガラスにも姿の映り込みもないね! うん、これでよし!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
今日はお寿司パーティーなのですよ!
お寿司たち.jpg
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飯テロ投稿はこれで完了なのさー! 昨日と今日は豪勢な晩御飯だったからこうやって撮ったけど、日常的に投稿するのもいいかも?
あ、そうやってる間にお箸やお茶が人数分だけ用意出来た! 一家全員揃ったから、もう食べれるねー! 姉さんとお父さんは、しっかりとお酒を持ってるね!?
「さーて、それじゃ美咲ちゃんが色々と吹っ切れたお祝いで、カンパーイ!」
「姉さん、ちょっと待って!? そういうお祝いなの、これ!?」
「うん、そうだよー!」
「それは聞いてないよ!?」
「今初めて言ったからそれで当然!」
はっ!? お母さんはなんか微笑ましい感じで見てきてるし、お父さんは照れ隠しなのか顔を背けてきてる!? 姉さんの旦那さんの聡さんは苦笑いをしてるし、兄さんは……あ、兄さんだけはいつも通りだー!
なんだか落ち着かない気分だけど、兄さんがいつも通り過ぎるのもなんか気になるよ!? むぅ、なんだか釈然としない!
「……俺の顔を見てどうした?」
「なんか兄さんだけはいつも通りだなーって?」
「なんだ? 何か特別に反応して欲しかったのか?」
「そういう訳じゃないけど……まぁいいや! お父さん、ありがとう! いただきまーす!」
「あぁ、しっかり食ってくれ」
まだ今日の昼にあった事を完全に整理し切れた訳じゃないけど、それでもお祝いとして用意してくれたなら、全力で食べていくのみなのさー! うふふ、美味しそうなお寿司がいっぱいだー!
何から食べようかなー? ここは目玉の大トロから行くべき!? 普通の赤身のマグロも好きだし、サーモンとか、アナゴとかもいいよねー! うーん、悩む! よし、決めた! 最初はやっぱり一番の大物の大トロからで!
「美咲ちゃん、美咲ちゃん!」
「はむっ? ねへはん、はーに?」
むぅ……口に入れた状態で呼びかけられたから、変な返事になっちゃった!? あ、姉さん!? 今、写真を撮ってたよね!?
「うーん、やっぱり美咲ちゃんは美味しそうに食べるね! よーし、もう1枚!」
「いきなり不意打ちで写真を撮らないでー!? 兄さん、聡さん、姉さんを止めてー!?」
「盗撮防止でいきなりは撮れないはずだけど……聡くん、家族限定でその辺の制約は緩めているのかい?」
「確かホームサーバーに接続時に限定して、そんな設定をしていた気も……」
そうなの!? 携帯端末は身に着けるタイプの形状が多いから、そういう機能はあるって聞いたことはある気がするね!? でも、その制限を緩めてる状態なんだ!?
私が使ってる携帯端末はヘアバンド型だけど、姉さんのは眼鏡型だもん! 写真を撮る時には本体の一部がちょっと光るから、撮るタイミングは分かるけども!
「俊くん、聡さん! 今は止めないで! これは大事な撮影だから! 記念撮影だからー!」
「記念撮影ならみんなでしようよ!? なんで私の食事シーンだけを盛大に撮ってるの!?」
その写真は一体どこに需要があるのさー!? あ、姉さん自身に需要があるから、気にするだけ無意味かも!?
「大丈夫! 見るのは私……まぁ精々友達までだから!」
「待って!? 姉さんの友達に私の写真を見せびらかすの!? 姉さんの交友関係は広いんだから、それは全然安心できる要素じゃないよ!?」
「はぁ……これじゃ食事にならんな。姉さん、同意があっても撮れなく設定しようか?」
「それもそうだね。葵だけで済ますなら見逃そうかとも思ったけども、他の人にも見せる気なら……そういう訳にもいかないね」
「……え? 待って、待って、待って!? 聡さん、俊くん、待ってー!?」
ふぅ、兄さんと聡さんの2人がかりで姉さんが連行されていったから、落ち着いてお寿司が食べられるよ。まったく、姉さんは昼間の件で色々と状況が分かったのに、それでも変わらないよね。
というか、食べる姿が影響してくるのって、試食とかを頼まれてる件な気がする! むぅ……それならある意味、大切なサンプルの写真? でも、『サクラ』の方でやる話なんだし、リアルの私の写真は意味ないような?
あ、そんな感じでドタバタしてたら、メッセージに新着が来てた! おぉ、結月ちゃんからのメッセージだね。なんか家族以外からのメッセージが来るのは新鮮な気分。『水無月』さんとして、いつも通り見に来てくれてたのもなんか不思議な感じだよねー。
えーと、内容は……『配信、お疲れ様ー! お寿司、美味しそうだね!』ってなってるね。シンプルな内容だけど、こういう話題で会話するのは本当に久しぶり!
「ふふっ、返事をしなきゃねー! あ、どうせなら姉さんの事を書いちゃえ! 『美味しいけど、姉さんに食べてるところを写真に撮られて困った事になってたよー!』で、送信!」
この辺の内容はどうしてもSNSには載せられない部分だもんね。……まぁ載せてもいいんだろうけど、『サツキ』=『立花サナ』を知ってる人が姉さんの同業の方々の中に結構居そうな気がするから自重で! 私は姉さんよりも、ちゃんと自重は出来るのですよ!
あ、結月ちゃんから返事が来たね。えーと……『葵さん、何をやってるの!? なんだか自由奔放な人なんだね?』ってなってる! うん、姉さんは自由奔放で間違いないよね!
「『止めてって言っても止めてくれなくて、困ってた! そして、姉さんは兄さんと聡さんに連行されていくのでした!』で、返事を送ろうっと!」
あ、地味にさっきから声に出てるような……? お父さんとお母さんがこっちを見てるし、やっぱり声に出てたみたいだー!? わわっ!? お母さんが近付いてきたし、食事中にこれは流石に怒られ――
「……あれ? お母さん?」
怒られるかと思ったら、なんか抱きしめられたよ? ……え、なんで?
「美咲ちゃん、ずっと1人でいて心配してたんだから! ……お母さん、ホッとしたわよ」
「……自分で好きで1人でいるのなら、別に構わん。だがな、望んでもいないのに孤立しているのは親としては見てられないんだ。……良かったな、美咲。またちゃんと友達が出来て……」
「……あっ、うん!」
そっか、お父さんにもお母さんにもずっと心配をかけてたんだ……。昼間は偶然に偶然が重なった結果だけど、その辺も全部伝わってて……こういう風に言ってくれてるんだね。
「ただし、食事中に声を出しながらメッセージのやり取りはどうかと思うわよ?」
「今日くらいは大目に見るが、流石に声に出すのは止めておきなさい」
「はーい!」
うん、怒られるには怒られるんだね! まぁそこは怒られても仕方ない部分だし、声には出さないようにしつつ、お寿司を食べていこうっと! 食べ終わったら、実況外のプレイも始めていこー!
そういえば兄さん達は中々戻ってこないけど、どうなったんだろ? まぁいいや、今のうちに好きな寿司ネタをどんどん食べていくのですよ!
「2日続けて、美味しい晩御飯でした!」
「よかったね、サクラ」
「はい! まぁ姉さんが騒々しいですけども……」
「そこはまぁ……我慢して?」
「ああいう部分がなければ、文句なしの自慢の姉なんですけどねー」
「……サクラに年の離れた弟か妹がいれば、似たような事をしそうだけど?」
「いえいえ、それはないですね!」
「そして、自覚はないんだろうなー」
「だから、それはないですって!」
「そう断言する根拠は?」
「え、根拠と言われても困るんですけど……。でも、そんな機会はまずあり得ないですから、問題ないですよ!」
「まぁ弟か妹は厳しいだろうけど……サツキに子供が出来て、サクラが叔母になる可能性はあるんだよ? その時に一切、可愛がらないと断言は……?」
「はっ!? その可能性は十分ある気がします!? ……そんなの、なってみないと分かりませんよ!」
「さて、そうなった時にサクラはどういう反応を示すのか!?」
「……姉さんみたいに自重知らずにはならないように気を付けます。というか、そういう話になるってことは、そう遠くないうちに私に甥か姪が出来るんです!?」
「ん? 言ってみただけで登場の予定はないよ?」
「……言ってみただけなんですか」
「なんか露骨にガッカリしたところが、サツキと同じ行動に繋がる片鱗があるんだよなー」
「そんな事はないですよ!?」
「さて、次回は『第404話 実況外の探検録 Part.20』です。お楽しみに!」
「なんか、今回は作者さんに盛大に揶揄われた気がします……」




