第40話 2回目の配信
「やっと帰宅ー! 暑かったー!」
忌まわしき学校が終わり、我が家へと帰ってきたのです! 今日は金曜日、明日は休み!
テストの最終日が終わった翌日には機械が採点を終わらせて全部の結果が返ってくるんだから嫌だよね……。今日はテストの問題解説の日だったから、もう頭を使いたくないー!
もう、学校とか全部VR空間で良いじゃん! なんでわざわざ1時間もかけて、電車に乗って通わないといけないの!? そこの学校を選んだの、私だけど!
「うがー! 学校は全てVR空間になってしまえー!」
「……帰ってきて早々にうるせぇな。そんなものを日本中で毎日やればネットワークの帯域を圧迫しすぎて、まともな挙動が出来なくなるからまだ現実的なもんじゃねぇよ」
「兄さん、帯域ってなーに?」
「……説明が面倒だな。大雑把に言うなら、人が多すぎて渋滞するんだよ」
「おぉ、なるほど!」
なんとなく分かったような、分からないような気もするけど、とりあえず何か問題があるんだね!
でも、一昔前にはVR機器自体も夢物語って言われてたのが実現したらしいんだから、学校も全部VR空間にという夢物語も現実にしてしまえー! うん、実現しても私は卒業してそう!?
「そういや、昨日のはどうにか使えたか?」
「うん、問題なしだったよ!」
昨日、兄さんに準備してもらったダイジェスト録画機能は上手く録画出来てたー! ちょっと予定外に進化が発生しちゃって焦ったけど、今朝には公開できたもんね!
学校の休み時間の時に軽く確認してみたけど、多くはないけど再生はされてたし! まぁまだ初回だから、その辺はこれから頑張っていくまで!
「もし問題があれば言えよ。格安とはいえ、金を受け取った以上は無責任のつもりはないからな」
「あ、そうだ! それなら兄さん、これと配信用のVR空間の連動って出来るー!?」
「……問題じゃなくて追加案件かよ。あー、SNSか。これなら標準で対応してるから、メニューから連携を開いてログインすればいいだけだ」
「おぉ、それなら自分でも出来そう!」
「……流石にただのログインくらいは自分でしてもらわないと困るぞ」
「はーい、頑張ります!」
そう言いながら、兄さんは自分の部屋に行ったねー! 放置……じゃない、今回の為に眠らせていたSNSのアカウントと配信用のVR空間は連動出来るみたいだし、ログインだけなら自分でも出来るはず!
それじゃ私も部分の部屋に戻って、少し休憩してからモンエボも実況をやっていこー!
あ、そういえばよく考えてみると兄さんの万が一のサポート付きなんだね。そういう意味では今後は色々と安心なのさ!
◇ ◇ ◇
自室で冷房で涼みながら、動画のコメントとか、呟きへの返信コメントとかを確認している間に6時近くになってきた。
今はまだコメントはそれほどなかったけど、興味を示してくれて見てくれている人は何人かいたから、テンションが上がっているのですよ!
さてさて、それでは兄さんがボタン1つで配信用のVR空間を作れるようにしてくれているから、今日の分の配信を始めよう!
おっと、その前に開始の告知をしないとね! その為に放置……じゃない、眠らせていたアカウントを起こしたのです! えっと、配信用のVR空間にフルダイブして、メニューから連携でログインだったよね?
あ、これだー! ……えっと、IDとパスワードなんだっけ!? はっ! こういう時は兄さんお手製のID管理ツール! 生体認証でぺたりとな!
よし、ログイン出来たー! それじゃこれで配信開始の告知を入力して、それが終われば配信開始なのですよ! あ、先に配信開始しとかないと、動画へ行けないかな?
<配信を開始しますか?>
という事で、先に配信開始ー! 前回の続きだから【初見プレイ】Monsters Evolve part.2で!
えっと、確かミツルギさんが動画のアーカイブへ飛べるようにしてたよね? あれと同じようにしたいけど……あ、配信のシェアってのがある! 多分これのはず!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
これから第2回の配信をやっていきますねー!
配信会場はこちらです!
【初見プレイ】Monsters Evolve part.2
URL:*tp://***
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よし、これで良いはず! ふふーん、今日はこれでどのくらいの人が来るかなー?
「さーて、今日も元気にモンエボも初見での配信プレイをやっていきますよー!」
昨日はダイジェストになってる配信外でのプレイの方で幼生体の最大Lvまで行っちゃったからね! 今日はチュートリアルの出てたところから開始なのですよ!
あ、でもそれはそれなりに人が集まってきてからかな? まぁ、その辺りは様子を見ながら決めればいいのさー!
◇◇ ◇
配信を開始して、10分が経過した。ライオンを操作しつつ、草原の川へとやってきたけど……。
「誰も来ーなーい!?」
うぅ、昨日はドサッと何人か集まってきてたのに、今日は誰一人としてまだやって来ないのさー!? 視聴者さん0で何を配信しろと!?
「むぅ、仕方ないですね! 今の内に、昨日のライオンへリベンジに行きましょう!」
進化のチュートリアルが出てキャンセルをした後、進化ポイントはそれなりに貯めた。だけど、その前に遭遇して私を倒したライオンはまだ倒せてないんだよね!
他にいた私のライオンの敵討ちは大体したんだけど、そこで寝る時間になったのさ! ゲームをするのは好きだけど、寝る時間を削ってまではやらないのです!
「それではライオンを倒しに出発です! ……流石に1人で実況プレイは寂しいなぁ……」
誰も見る人がいない実況プレイってこんなに虚しいんだね。……うぅ、昨日のはただのマグレだったのー!?
いなり寿司 : お初です! って、何かアバターがいきなり泣きそうになってるんだけど!?
「おぉ!? 今日初めての視聴者さんだー! 初めまして、いなり寿司さん!」
やったー! これで1人じゃない! しかも、いなり寿司さんって見覚えがあるよ! 確かSNSでミツルギさんの書き込みにコメントしてた人!
いなり寿司 : あ、他にまだ誰もいないのか。初めましてっと。
ミナト : あらら、ちょっと遅れちゃった。やっほー、サクラちゃん!
「ミナトさんも来ましたー! ミナトさん、こんにちはです! あれ、時間的にはこんばんはですかねー?」
あ、他にもコメントはないけど視聴者さんが4人になってる! うぅ、ただ皆さんが来るタイミングが少し遅かっただけっぽいのさ!
そっか、そういえばそうだよね。私だってリアルタイムの配信を見る事はあるけど、最初の最初から毎回見てる訳じゃないし、人がやってくるまでに少し時間がかかるって事もあるんだね!
あ、よく考えたら他の人のアーカイブとかって開始の10分くらいは、無言だったりするよね! あれって、視聴者さんがやってくるのを待機してる時間だったりしたの!?
今まであの時間の意味がよく分かってなかったけど、そういう事なんだ! ふっふっふ、これで私は配信者として少し賢くなったのです!
ミツルギ : ふぅ、少し遅れたか。おっす、サクラちゃん。
「おぉ、ミツルギさんもやってきたのです! もうこんばんはでいいや! ミツルギさん、こんばんはー!」
やったー! ミツルギさんもやってきたー! 全然人が来なくて寂しかったけど、これで今日の配信も頑張ってやれる!
さっきは少し心が折れかけたけど、もう大丈夫なのですよ! ふっふっふ、頑張っていくのさー!
いなり寿司 : 開始早々、アバターの方の感情がもの凄い豊かだな。泣きそうな顔から、満面の笑みまでの変わりようが凄い。
ミツルギ : まぁそこがサクラちゃんっぽいとこだしな。
ミナト : そうそう、感情豊かなのは良い事だよ。あ、サクラちゃん、ダイジェスト動画の方は見たよー! 今日は進化から開始かな?
いなり寿司 : あ、昨日のアーカイブとダイジェスト動画は一応ながら見ではあるけど、見たぞー。
ミツルギ : ぶっちゃけ言うと、ダイジェスト動画を見てて6時過ぎてるのに気付かなかった。
「ミツルギさん、そうなんですか!?」
あ、そっか。私は配信してる側だから気にしてなかったけど、普通に考えたら視聴者さんには見る時間が必要なんだったー!?
うぅむ、配信者側になってみて初めて気付く事も結構あるんだ……。
ミナト : サクラちゃん、余計なお世話だったらごめんね? でも、一応これは言わせて。配信開始は10分くらい少し前倒しにして、人が集まるだけの時間は用意した方がいいよ?
ミツルギ : 確かにそれはあった方がいいな。サクラちゃん、昨日もいきなり始めてたしな。
うっ、思いっきりミナトさんに指摘されてしまったよー!? でも、それについては思いっきり痛感したからね!
「ミナトさん、余計なお世話じゃないですよ。……正直誰も来ないと思って凹んでたんで、次からは待機時間をちゃんと作ります!」
今回ので大反省したから、次は同じ失敗はしないのさ! 次からは6時開始の時は、10分前からVR空間は作って配信開始にして、実際のゲームプレイ開始までの待機時間を作るのです!
ミツルギ : え、サクラちゃん、凹んでたのか!?
いなり寿司 : あー、泣きそうになってた理由はそれか。
ミナト : あらら、それなら昨日の内に教えてあげておけばよかったね。
イガイガ : おーっす! 5分前で見当たらなかったから今日は何か急用でもあってやらないのかと思ったけど、そういう理由だったか。
「そういう思われ方もあるんですね!? イガイガさん、こんばんはです!」
ふむふむ、配信をやっていく上で色々と注意点はありそうだね! でも、それは次からの反省点! 視聴者さんもやってきたし、今はゲームの配信をやっていくのさー!
「それでは、昨日の配信後に進化が可能になったので、そこからやっていきますねー!」
ライオンへのリベンジは、進化した後のお試しに取っておくのです! さーて、進化はどうやってやるんだろう?
昨日貯めた進化ポイントが21ポイントあるけど、これが役に立てば良いんだけどね! あ、そういえばスキルツリーは全然弄ってないままだー!? ま、いっか!
「さぁ、2回目の配信の始まりですよー!」
「新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「あっ!? そういえばそうでした! あけましておめでとうございます!」
「という事で、新年の元旦から第2章の始まりです」
「あれー!? 私の存在は無視されてませんか!?」
「とまぁ、こんな感じのポンコツ主人公のサクラですが、今年も見守って――」
「私はポンコツじゃなーい! あ、そうだ! 作者さん、お正月ならお年玉を下さい!」
「……なぜ? 夏だよね?」
「それはそれ! これはこれです!」
「……はい、これ」
「わーい! って、いつものカンペじゃないですか! いえ、それに見せかけた電子マネーのコードという可能性も! えーと『今年も応援してくださる方はブックマークや評価をお願いします!』って、やっぱりいつものじゃないですか!?」
「えー、次回は『第41話 進化の条件』です。お楽しみに!」
「作者さん、お年玉は!? あれ、スルーなんですか!?」