第241話 気を付けていても
放電で自動防御をしながら、滑りやすい足場を進んでいくのさー! ふふーん、これぞ私なりの安全策! 今はちょっと川の方に近付いてるけど、近寄ったり離れたりになってる感じだねー!
「おー、色々と敵はいますねー!」
精彩なトンボがいたり、堅固な蝶がいたり、巧みなトカゲがいたり、強烈なカエルがいたりと色々だー! あ、対岸にある木の枝に機敏なスズメとかもいるねー! Lvは12前後だけど、どれも微妙に遠いし、こっちからは手は出さない方がよさそう。
ミツルギ : サクラちゃん、適度なとこで真上にで良いから放電しとけよー。最大まで溜めると再使用時間が長くなるぞー。
イガイガ : あ、確かにそれが良いのか。
こんにゃく : 連発がしにくくなるもんな。
「そういえばそうですね! えーと、敵に当てたら意味がないので、しっかりと確認して放っちゃいましょう!」
この足場の悪い場所では戦う気はないし、今は自動防御以外では使う気はないもんね。溜めたら溜めた分だけ威力は上がるけど、その分だけ再使用時間が伸びるんだから常時展開しておきたいなら溜めすぎないようにしないと!
前よし、上よし、左右よし、後ろも確認! 放電前に最後に再び上を確認! 特に問題なさそうだね!
「それじゃ真上に放電開始です! えいや!」
上から落ちてくる雷とは逆に、上空へと放電を放っていくのさー! 敵には当てないようにってのも変な話だけど、状況的にはこれが良いはず! むしろ問題があったら、ミツルギさんへの苦情ものです……よ?
「って、ちょっと待ってください!? スズメがなんで自分から突っ込んでくるんです!?」
ぎゃー!? なんでこのタイミングで放電に向けて対岸の木にいたスズメが飛び立つの!? 私は攻撃する意思はないんだけど、なんでわざわざ攻撃されに……あ、直撃。えー!? なんでそうなるの!?
咲夜 : あ、スズメが放電の餌食に……。
水無月 : なんで今のタイミングで飛び立ったの!?
いなり寿司 : ただの偶然だろうが……あ、川に落ちたな。
富岳 : 地味に麻痺になってたか。
サツキ : 浮いて流されてるねー。
ミツルギ : ……何がどうしてそうなった。
「わわっ!? え、大丈夫です!? これ、大丈夫ですかねー!?」
足場の悪いここで機敏なスズメとか戦いたくないよ!? 麻痺して川に落ちたからって、見えてる限り滝の部分は近くではないし、端の端だから流れはそんなにない場所! 水面に浮かんでるから、流れが速い部分には落ちてない!
「ミツルギさん、これでスズメに襲われて落ちたら恨みますからねー!」
うぅ、今の私に出来るのは、出来るだけ早く次の休憩場所まで慎重に進んでいく事だけだー! スズメが川から出てくる前に、急げ、急げ、急げー!
足元をしっかりと確認しながらだから、走れないどころか、普段歩く時よりも遅いのがなんか焦るよー!?
イガイガ : これで襲われたらミツルギの責任か。
神奈月 : 凄いタイミングが悪かっただけだけど、まぁそうするように言ったのはミツルギさんだしな。
ミツルギ : ちょっと待った! これは俺が悪いのか!?
咲夜 : ここはミツルギさんが悪いって事にしておこう!
G : 真上ではなく、敵がいない方向と言っておけば避けられたものを……。
ミツルギ : 無茶振り過ぎねぇ!? 今のは流石に誰も予想出来なかったろ!?
「ごめんなさい、ちょっと集中させてもらって構いませんかね!? 大真面目にピンチっぽいので!」
うぅ、水飛沫を上げながら川の中から出てきたスズメの姿が見えたよ!? うがー! 明らかに私を狙って一目散に飛んできてる!? あ、でも意外とHPが減ってる?
「一か八かです! 『咆哮』!」
これ、下手に回避しようと思ったら滑って間違いなく転ぶ! もうこれでスズメがまた落ちてくれるのを狙うしか……あ、当たった! やった、萎縮になって落ちていってる!
「成功です! それじゃそのまま川に流されて……って、なんで川に落ちてくれないんですかねー!? なんで手前の岩の上に落ちてるんですか!」
うぅ、萎縮のままで川に落ちてくれたら流された上で窒息も狙えるかと思ったのに! スズメが落ちたのは割と近くの岩だけど、そこまでの道はかなり滑りそう! 直接落としに行ける場所じゃないよ!
うがー! これ以上、私にどうしろと!? うぅ、スズメが復活する前に、急いでちゃんと戦える場所まで移動するしかないよねー!
富岳 : 地味に惜しかったな。岩の上に頭から落ちて無意味に朦朧にもなってるのか。
こんにゃく : 本当に無意味過ぎる。
名無しのカカシ : 今ので川に落ちてれば、そのまま倒せた可能性もあったのに……。
ミツルギ : そこは死んどけよ、スズメ!
チャガ : 投擲で一押しすれば、すぐに川に落ちそうだがな。
ミナト : サクラちゃん、ちょっと危険だけど投擲で落としてみる?
「それ、危なくないですか!? って、普通に危険って言ってましたね!?」
確かに危険は承知で、そういう手段もあるかもしれない! 多分落としさえすれば、今度は場所的に盛大に川の流れに乗って、スズメが脱出出来るとも思えないよね。でも、一歩間違えれば……私自身が落ちる可能性!
うぅ、滑らない場所自体はあるんだから、そこからズレないように気を付ければなんとかなる? うがー! スズメが復活してきたら、落ちる危険性があるのは変わらないよ! それなら勝てる可能性がある今のうちに何とかすべき!
「これで落ちても、仕方ないって事でスルーしてくださいね! 『投擲』!」
イガイガ : 失敗したらミツルギのせいって事で!
咲夜 : 異議なし!
G : 同じく異議なしだ!
ミツルギ : お前らなぁ!?
いなり寿司 : いや、今は普通に集中させてやれよ。
本当にそこはいなり寿司さんの言う通りだよね! ふぅ、ともかく深呼吸して集中! 今は慌てず、今踏みしめている岩の上からズレないように気を付けながら、アイテム欄から小石を取り出す! 狙うは岩の上で萎縮になってるスズメ!
「これで落ちてください! いっけー!」
スズメに向けて、小石をライオンの前脚で弾き飛ばす! そんなに大した距離じゃないから、落ち着いてやれば外す事はないはず!
「あ、やった! 当たりました! ふっふっふ、これで川の底へおさらばですよ、スズメ! わっ!? あ、危ないですね!?」
上手く当たって少し気が抜けたら後ろ脚が滑りかけたー! でも、落ちなかったからセーフ! というか、投擲でも結構な威力が出てた気がする? あ、そっか。さっき『器用+10』を解放したから、その分だけ強化された感じかな?
「……スズメ、ちゃんと川に落ちましたかねー?」
滑っちゃってバランスを崩したせいでその部分をしっかり確認出来なかったけど、大丈夫かな?
ミナト : マップの赤い印がどんどんと下流に進んでいってるから、大丈夫だね!
咲夜 : お、マジだ!
サツキ : サクラちゃん、ナイス投擲だったよー!
「あ、本当ですね! いやー、一時はどうなるかと思いましたよ!」
マップを見てみれば確かにすごい勢いで下流に向けて離れていってる赤い印はあるから、これはスズメのはず! ……これがスズメ以外の何かだったら嫌だけど、近くに他に赤い印はないから大丈夫!
あ、位置的にそろそろ私を殺したコイのいた滝の辺りまで行きそうだね。こうしてみると、移動自体は遠回りでゆっくりだったけど、なんだかんだでそれなりに進めてはいたんだね。
<未成体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
「あ、スズメは死んだっぽいですね! ヒヤヒヤしましたし、ここでの戦闘は本当に勘弁です!」
足場が悪いから戦闘を避けようとしてたのに、まさかその為の自動防御用の放電でこんな結果になるとは思わなかったよ。でも、なんとか切り抜けたのさー!
「……ここでの移動中、放電での自動防御は止めておきますね。流石に今回みたいなのはパスで!」
今のはただの運の悪い偶然だったとは思うけど、それでもまた無いとは言えないもんね。奇襲を防ぐ為のつもりだったけど、それが原因で危なくなってたら意味ないよ!
ミツルギ : ……さっきみたいなのは、ほぼ無いんだがな。
イガイガ : まぁそうだけど、実際にあった後に言ってもなぁ……。
富岳 : 放電は奇襲対策には割と良いんだが、まぁ今みたいなのがあったら使おうって気にはなれないか。
真実とは何か : それもまた、人の心の真実なり。
サツキ : サクラちゃん、ドンマイ!
ミナト : コイの時の朦朧といい、どうも今日のサクラちゃんは運が悪い感じだねー?
「私もなんか運が悪いような気はしてます……」
妙に運が悪い事が重なる日ってあったりするけど、それが今日なのかな? うーん、それは全然嬉しくない! まぁともかく、今は先に進んでいくのみなのさー! 今日の配信はまだ半分も終わってないんだしね!
「……今回のは流石に私は悪くないですよね?」
「まぁ本当にただ運が悪かっただけだからね」
「そうですよね!? でも、こんな事もあるんですねー」
「頻度は高くはないけど、まぁあるにはあるよ。似たような事例は他にももう出てるしさ」
「え、そうなんです?」
「獅子咆哮で巻き込んだ敵とか、そういうやつ」
「あれって、今回のと同じなんです?」
「敵側からしたら同じだね。いきなり襲われたって事だから」
「そんなつもり、欠片もなかったですけどね!?」
「まぁ明確に目に見える形でそうなるのは珍しい」
「あー、そういう事になるんですか。うーん、珍しい事に遭遇する私、サクラが素敵だと思う方はブックマークや評価をお願いします!」
「……その内容、嬉しい?」
「……正直に言えば、微妙ですねー」
「だろうね! さて、次回は『第242話 見つけたのは』です。お楽しみに!」
「何を見つけるんですかねー?」