第197話 機敏なトンボ
機敏なトンボに噛みついて、今は動きを封じられている! だけど、機敏だと色々と早いみたいだし、そこは要注意でいかないと! うーん、どうするのが良いんだろ?
「わっ! トンボが暴れ出しました!?」
わわっ!? 少しはマシになった気はするけど、やっぱり萎縮の効果時間は前より短い気がする! ぎゃー!? 噛みつきの効果も切れたー!?
えっと、えっと、このまま解放したら駄目な気がするから、なんとかしないと! あ、そうだ!
「逃げる場所が分かってるうちにこれです! 『放電』!」
ふっふっふ、口から出ていくのは分かっているんだから……ってあれー!? ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って!
「なんで口の中へ放電されてるんですかねー!? でも、もう一度です! 『放電』!」
理由は分からないけど、なんかトンボへとダメージは入ってるみたいだし、やれるだけやっとこー! 溜め無しでの放電なら、すぐにまた使えるから良いよね!
いなり寿司 : なんでというか、そうなるのも当然だぞ?
G : 噛みついて敵に触れてる状態だからだな。
ミツルギ : そうなるなー。
「あ、噛みついてる状態って、そういう判定ですか!? だったらもう一度です! 『放電』!」
うふふ、そういう事ならどんどんやるのみ! 要するに、ゼロ距離からの放電になるんだね! これなら逃げられる心配もなく、一方的に……って、放電では敵の攻撃の妨害性能はないよ? 麻痺になってる様子もないし、なんで大人しく……。
「はっ!? 嫌な予感がします!」
敵が何もせずに大人しく攻撃を受けてる訳がない! だとすると、警戒すべきは溜め攻撃! ペッとトンボを吐き出しておかないと、口の中で強力な一撃が発動しちゃう!
「わっ!? トンボが羽を震わせて、なんか力を溜めてるっぽい感じがします!?」
危ない、危ない! あのまま噛みついたままだったら、痛い攻撃を受けるとこだったよ! うーん、もう発動する直前? まだ余裕はある? トンボなのに飛んでない状態だから、攻撃したいタイミングなんだけどなー。
ミナト : サクラちゃん、ナイス判断だよ!
富岳 : 追撃は止めといた方が良いぞ。多分、発動は間近だ。
ミツルギ : 機敏のトンボなら、『連斬羽』か?
イガイガ : 溜めありで機敏なら多分そうだろうな。
「なんか羽根で何度も斬ってきそうな名前ですね!?」
というか、多分その通りの攻撃なんだろうね! わー! 今のうちに近くの木の陰に隠れろー! 近くに敵の木はいない!? 盾に出来るやつは近くにいない……って、わー!?
「ぎゃー!? 斬ってきました!?」
右前脚の側面に衝撃があったと思ったら、そこが思いっきり斬られてる! わっ!? 出血の状態異常にもなったよ!? うぅ、躱すのに動き回らないといけないのに、森の中に掻き分けて入ったから動きにくい! そこに出血までって、地味に嫌な攻撃をしてくるね!
「とにかく今はこれです! 『身構え』!」
こんにゃく : げっ、出血効果もあるやつか!
ミナト : 機敏で出血持ちは、厄介な組み合わせだねー。
水無月 : サクラちゃん、頑張れー!
富岳 : 今はとりあえずこの攻撃を凌ぐしかないな。
「うぅ、反撃したいですけど、耐えるしかしかなさそうです!」
トンボの方は何度も行ったり来たりしながら羽で私のライオンを斬り刻んでいくけど、明確に体格差が不利になってる! うがー! ライオンと比べると小さ過ぎるよ、このトンボ!
咆哮の再使用時間が過ぎてたら動きを封じるんだけど、まだもう少し時間がかかるから無理! 雷纏いなら使えるけど、ここで使うのはどうなの? 痛いと言えば痛い攻撃だけど、まともに受けたのは1撃目だけだからHPはまだ大丈夫。
今は真正面から突っ込んできてるけど……身構えの効果が切れたけどもう一度使って、スキルの発動が終わるまでひたすら耐える?
「あっ、これならどうですかね! 『投擲』! ぐっ!」
こんにゃく : ここで投擲!? でも、うまく当てたな!
名無しのカカシ : あ、微毒が入ってる!
サツキ : サクラちゃん、良い投擲!
富岳 : なるほど、それは良い手だな。
ミナト : 良いタイミングでカウンターで入れたね!
思いっきり右前脚を斬られたけど、その代わりに毒の実は確実に当てたよ! ふっふっふ、これでお互いに動き回ればHPの減り方がどんどん酷くなる状態になった! ただの思い付きだったけど、これはありかも!
「私は動かないので、勝手に自滅してください! 『身構え』!」
というか、そもそもあのトンボの攻撃って何連撃なんだろう? もう5回くらい斬られた気がするだけど、そろそろ終わり? あ、速かった動きが少し鈍ったから、終わったみたいかな?
でも、普通に飛び回って大人しく止まりはしなくて、飛び回っていくんだ! わー! 毒ってこういう使い方がありなんだね!
「おー! どんどんHPが減ってますね!」
ふっふっふ、私のHPは残り6割くらいだけど、トンボはもう3割を切ってる! なんだか普通に身構えをしてる私に他の羽で斬るスキルで突っ込んできてるけど、速さが仇になって凄い勢いでHPが減っていってるよ!
毒の実、大活躍だー! 毒の実が機敏の敵にこんなに有効なら、もっと補充したいなー。どっかで採集出来たら嬉しいんだけど……今はまず倒すのが先だね!
ケースケ : このゲーム、毒がえげつないタイプ?
ミツルギ : 使い方次第ではあるけど、まぁえげつないタイプだな。
咲夜 : 毒というよりは、状態異常は全般的に強いぞー!
神奈月 : 自分が使うのはいいけど、使われるのは嫌なバランス。
ケースケ : なるほど、そういう感じか。
サツキ : サクラちゃんがよく使う咆哮での萎縮とか、雷纏いでの麻痺とかねー!
こんにゃく : 行動阻害系も結構凶悪だよな。
「確かにそうですよねー! あ、身構えが切れましたけど、これで終わりです! 『咆哮』!」
<『咆哮Lv1』が『咆哮Lv2』に上がりました>
「おぉ!? 皆さん、咆哮のLvが2になりましたよ! これは相当なパワーアップです!」
やった! やった! 咆哮の効果時間が短くなってたのは知恵を少し上げて補いはしてたけど、それでも前よりも短く感じてたもんね! でもスキルLvが上がったなら効果は確実に上がるはず!
サツキ : サクラちゃん、おめでとー!
咲夜 : おぉ! 咆哮Lv2は今の時点では凶悪!
ミナト : 確かにねー! でもその前に、しっかり仕留めるのが先だよー!
「あ、それもそうですね! それじゃこれでトドメです! 『放電』!」
ふっふっふ、まだ私も出血中だから動かずに放電を溜めていくのです! 溜めが早くなってるから、最大威力まで溜めて……放電開始!
<未成体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
「機敏なトンボ、撃破完了です!」
ふぅ、なんだか未成体の敵との戦闘は結構厄介な事になってきてる気がするねー。なんというか、敵の個性が強いというか、私のライオンの苦手な部分が思いっきり弱点として明確になってきてるような気がする!
「そういえば出血が治るのって、時間経過で良いんですかねー?」
ミツルギ : おう、それで合ってるぞ。
G : 変に動かず、その場で安静が一番だ。
富岳 : 一応、止血用の採集アイテムもあるが、今は持ってないしな。
「え、止血用のもあるんです? どんなのがあるか、参考までに教えてもらってもいいですかねー?」
まぁ毒消しでドクダミがあるのなら、止血用の採集出来るものがあってもおかしくないよね! 正直、今は動かない方が良い状態だからすぐ近くにないと意味ない気がするけど、今後の為にどんなものなのか知っておきたいから、ここはネタバレ解禁で!
チャガ : 血止めは、『チドメグサ』か『ヨモギ』辺りが手に入りやすいか。
咲夜 : 『チドメグサ』なら、この辺にもあるんじゃね?
ミナト : 運が良ければ近くにあるかも? サクラちゃん、周りをグルっと見渡してもらえる?
「あ、はい! なんというか『チドメグサ』ってそのままの名前ですね?」
捻りも何もなく、直球過ぎる名前だよ! まぁゲーム内のアイテムの名前なら、それくらい分かりやすい方がいいのかもね!
ミナト : あはは、まぁ気持ちは分かるけど、リアルに実際にそういう名前である草だからねー。
富岳 : 割とリアルでその辺にあるぞ。こう、小さな丸めの葉っぱで地面に這うような感じで大量に生えてたりする。
チャガ : ……というか、サクラちゃんの足元にあるのがそれじゃねぇか?
ミナト : あ、ホントだ。すぐ近くにあったねー!
「え、これなんです!?」
なんというかハスの花を無くして葉だけにして、全体的なサイズを思いっきり小さくして、地面に並べた感じ? 確かにリアルで見た事あるかもしれない!
えっと、意識して触れてみたら採集が出来たよ! とりあえず採集出来るだけ採集して……んー、5つしか手に入らかった。でも、こんなにすぐ近くに出血の回復手段があるとは思わなかった!
ミナト : リアルなら傷口に塗りこむんだけど、ゲームだからそこは食べるのでいけるようになってるよー!
水無月 : おぉ! 流石はゲーム!
ミツルギ : 他のゲームみたいに人型ならいいけど、モンエボでは傷口に薬を塗るとか無茶過ぎるしな。
イガイガ : 確かにそりゃそうだ。
「ゲーム的に使いやすくはなってるんですね! それじゃ早速1つ使ってみます!」
という事で、『チドメグサ』をパクリとね! 特にこれと言って味はしないけど、出血は止まったよ! うん、これですぐに動けるようになったね!
「チドメグサって本当にあるんですね!?」
「うん、あるよ」
「初めて知りました!」
「まぁそこまで詳しいって訳でもないけどね」
「え、そうなんです?」
「その手の知識は仕入れながらだねー」
「ほほう! そうなんですか!」
「……それでも、サクラよりは知識はあるよ?」
「え、なんでです!?」
「サクラの知識は、どこから出てると思ってるの?」
「はっ!? 作者には私の知識はすべて筒抜け!?」
「その筈なんだけど、行動はそこから外れていって想定外になるんだよなぁ……」
「ふっふっふ、私は作者さんの魔の手から逃れられているのですね!」
「魔の手とか、何言ってんの!?」
「さぁ、私自身の意思で全力で突っ走れと応援してくれる方はブックマークや評価をお願いします!」
「言った途端から、もう手を離れてるんだから質が悪い、この主人公!」
「私は作者さんに抗います!」
「……はぁ、制御出来なさ過ぎる。えーと、次回は『第198話 出血の効果』です。お楽しみに!」
「私は私の道を行くのです!」