第188話 川の中には
初討伐についてはもう気にしても仕方ないから、気にしないという事で! えっと、戦闘の流れで川の中に入っちゃったけど、とりあえず大丈夫そう?
「えい、えい! うーん、川底は柔らかめですね」
沈み込む事はなさそうな感じだけど、それでも草原エリアの川みたいに川底に石が並んでたみたいにしっかりしてるのじゃなさそう。
ミツルギ : ここの川の中は埋まらないけど、滑りやすいから要注意だぞ。
咲夜 : サクラちゃんはよく転ぶしね。
イガイガ : またフラグになりそうなことを……。
富岳 : 滑りやすいのは事実だから、大した距離でもないからさっさと渡った方がいいな。
「あ、はい! 分かりましたー!」
確かに変な感じに脚を取られそうではあるし、その辺は要注意だね! ここって飛び越えられそうって思ってたけど、川岸に生えてる草の事を考えたら実際の川幅が分かりにくい! うん、実際に直接近くでも見てみるのは大事だし、足元には気を付けて慎重に、慎重に……。
「ふぅ、転ぶことなく渡り切りましたよ! 咲夜さんの立てたフラグはへし折りました!」
ふっふっふ、転ぶことなく無事に対岸まで辿り着いたのですよ! まぁまだ対岸側の草むらを押し退けて進まないといけないけど、ここまで来たら流石に転ばないよね!
咲夜 : もうそのままへし折りまくってくれ! そうすれば俺のフラグ云々の話が無くなるし!
いなり寿司 : あー、そういう考え方もありか。
真実とは何か : それもまた真実である。
まぁその辺はそういう事で良いとして、草むらを掻き分けて進んでいこー! ふふーん、疾走を使うと危ないから移動速度は控えめにはなるけど、それでもちゃんとマップ解放の為に移動を……あれ? 何か柔らかいものを踏みつけたような? なに、この変な――
「わっ!? 何かが足に噛みついてきたんですけど!?」
ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って! 凄い勢いでどんどんHPが減っていってるんだけど、一体何が起こったの!? 看破で見てたはず……って、ぎゃー!?
「いつの間にか看破の効果が切れてたじゃないですか!? って、噛みついてるのカメです!?」
私が右前脚で踏みつけた……というか、今も踏みつけているのはカメの甲羅……って、あれ? でもカメにしては何か違うような?がっしりとした甲羅がなくて、なんか柔らかいよ? あれだよ、知ってるけど名前が出てこないやつ! これ、なんだっけ!
うぅ、それはともかく首だけ伸ばして、左前脚に噛みついてきてる! えっと、えっと!? 看破は地味に再使用時間中で使えないけど、それならこれだー!
「なんか久々に使う気もしますけど、『識別』!」
『強烈なスッポン』:
進化階位:未成体
Lv:3
「あ、そうです、スッポンです!」
ふぅ、名前が分かってなんかすっきりした……って、のんびりしてる場合じゃなーい! えっと、咆哮は……まだ地味に再使用時間が経ってない!
富岳 : あぁ、そういえばこの辺ってスッポンが出てきやすかったか。
サツキ : 噛みつきが痛いやつだよねー!?
ミツルギ : 強烈への進化だから尚更にだなー。
咲夜 : その分だけ、他のカメより耐久面は低めだったよな?
こんにゃく : 普通の敵並みになってるだけじゃなかったっけ? 普通のカメが堅牢が高いだけで。
「おぉ、そんな感じなんですね! というか、いつまで噛みついてるんですか、このスッポン!」
あれ? そういえば既に噛みついてる状態から身構えって効果あるのかな? うーん、試してみようっと!
「これだとどうなるんですかねー? 『身構え』! あ、途中からでも効果はあるんですね!」
目に見てて一気にHPの減り方が鈍ったよ! ふっふっふ、これならばスッポンが噛みつき終わるまで耐えきることが出来る!
金金金 : ほほう、身構えって発動中の敵のスキルに対しても効果はあるのか。
名無しのカカシ : 連撃の間から割り込んで防御するとかはよくある使い方だけど、あれ? 金金金さんって未プレイな人?
金金金 : 俺はオンライン版だけだなー!
名無しのカカシ : あぁ、なるほど。そういう感じか。
ミツルギ : まぁ1撃で効果が終わるスキル以外には大体途中からでも効果があるって思ってたらいいぞ!
「はい、分かりましたー!」
とりあえず身構えの効果が切れるまでは私自身が動けないから耐えるとして、さっさと噛みつき攻撃は終わって欲しいとこだよね。それと咆哮も早く再使用時間が過ぎて!
うーん、ここからどうするのが良いんだろ? スッポンを踏みつけてる状態は逃がさない為には続けたほうがいいよね。だったら、今噛みつかれてる……あ、離した!
「って、なんでもう一度噛みつき直してくるんですかねー!? ちょっと待ってください!? 身構えを使ってても、身構えを使う前くらいのダメージがあるんですけど!?」
ぎゃー!? このダメージ量は痛い!? これ、身構えの効果が切れたらもう一度使った方がいい!? それとも即座に攻撃してしまった方がいい? 咆哮が使えたら迷う余地なしなのに、再使用時間はまだ過ぎないの!?
ミナト : あらら、噛みつきより上位のスキルを使われちゃたみたいだね。
富岳 : スッポンでこの感じなら第4段階の『噛み締め』ってとこか。
いなり寿司 : ライオンだと『強牙』の位置に該当するスキルだなー。
「あ、そういう感じになるんですか! わっ!? 身構えが切れました!?」
身構えの再使用時間はほぼないくらいに短いからすぐに使えるけど、それじゃ咆哮が使えるようになるまで攻撃に移れない! だったら、攻撃には攻撃で返すのみなのですよ!
「えぇい、そういう事ならこっちもこうです! 『噛みつき』!」
うがー! スッポンが私の脚に噛みつくのなら、その噛みついてる頭ごとライオンで噛みついてやるー! あ、ちょっとだけどHPが回復したね!
水無月 : なんか凄い光景になってるー!?
ケースケ : ライオンの脚に噛みつくスッポンの頭に噛みつくライオンかー。
こんにゃく : これ、スッポンの攻撃の方がダメージ量が多いんじゃ……。
「むぅ、確かにそうなんですけど……あ、咆哮が使えるようになりましたね!」
後は噛みつきの効果が切れてから咆哮で萎縮にしてしまえばいい! そこから怒涛の反撃だー! 今の時点では私のHPの方が減ってるけど、全然何とかなる範囲! HP半分以下になってきてるけども!
咲夜 : これって、スキルの切れるタイミングは大丈夫?
イガイガ : ん? あ、確かに!
富岳 : あぁ、確かにその可能性はあるのか。
「え、どういう事です?」
スキルが切れるタイミング? 噛みついてる間はスキルのキャンセルは出来ないけど、使い切ってから次を使えば……あ、それは全然考えてなかった!?
「もしかして、このまま噛みつきの効果中にスッポンが私の口の中を噛みついてくる可能性があるんです!?」
わっ!? もしそうなら、とんでもなく危険な状態な気がする!? え、その場合ってどういう風にダメージが発生するの!? 口の中を噛みつかれるとか、笑えない状態な気がする!?
ミツルギ : その可能性はあるぞ。
金金金 : 口の中で噛みつかれたらどうなんの?
ミナト : 普通よりも相当ダメージ量は増えるし、確定で出血の状態異常になるねー!
「そうなんです!? あ、そういえば出血効果ってどんな――」
ぎゃー!? そんなことを言ってる間になんか説明しにくい変な感覚があったけど、これって口の中を噛みつかれたっぽい! わわっ!? 一気にダメージ量が増えて、出血って状態異常が出てる!?
こんにゃく : ライオンなら知ってそうな気もしたけど、出血は知らないのか。
富岳 : 出血はスキルで持ってないと発生しないからな。ちなみに効果としては継続ダメージになる。動けば動くほどダメージ量が増すやつだ。
神奈月 : 植物系の種族には効かない、動物系にのみ有効な毒みたいなもんだな。
「そういう感じなんですか!?」
今って噛みつきのダメージだけじゃなくて、出血の状態異常でもHPが減ってる状態なんだ! って、考えてる場合じゃなーい!
「いつまでも噛みつかせませんよ! これでどうです! 『咆哮』!」
やった! とりあえずスッポンの攻撃のキャンセルと萎縮させる事に成功だよ! うぅ、HPが3割くらいまで減ってるのが辛いけど、そうも言ってられないよ! 動いたら出血での継続ダメージ量が増えそうだけど、いざとなったら果物で凌ぐ!
「今のうちに仕留め切ります! 『体当たり』!」
とりあえず戦いにくい掻き分けた草むらの中から、陸地側へとスッポンを吹っ飛ばす! でも、お願いだから他の水場に落ちるようなことだけは避けてー! あ、ちゃんと陸地に落ちてくれた!
「耐久性はそれほど高くないみたいですね! 『投擲』!」
今の体当たりでガツンと継続ダメージを受けたけど、まだいける! 状態異常の内容的にあんまり動き回りたくはないから、投擲で狙い撃つのさー! いっけー!
神奈月 : あぁ!? もうちょいで削り切れたのに、惜しい!
いなり寿司 : あと一撃は必要か!
サツキ : サクラちゃん、トドメの追撃だー!
ミナト : 自分の残りHPにも注意だよ!
「はい!」
動き過ぎたら危険な水準なのは分かってるけど、さっきのショウブの時に萎縮の効果が短くなってたのが気になるし、変に時間は空けずに仕留めるのみ! 動き過ぎれば出血でのダメージが痛いけど、スッポンが陸地にいる状態なら私もそこまで行けば何とかなるはず!
「陸地に戻ってきましたし、これで終わり……って、逃がしません! 『放電』!」
やっぱりなんか未成体の敵を相手にし始めてから萎縮の効果時間が短くなってる気がする! だからって水場に向かって走っていくスッポンは逃がさない! いっけー!
<未成体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<サクラ【巧みなライオン【雷】】が未成体:Lv2に上がりました>
<基礎ステータスが上昇します>
<進化ポイントを3獲得しました>
「なんとかスッポンの撃破完了です! 一旦回復でー!」
もう瀕死も瀕死でHP1割を切ってるし、危なかったー! まだ出血が続いてる状態でこの残りHPは危険過ぎるから、3割くらいまで果物で回復しておこうっと。それにしても、未成体からはLvが上がった時に貰える進化ポイントは増えるんだね。
「あ、危なかったです……!」
「少し間違えてたら、スッポンに殺されてたね」
「まさか、カメがライオンの命を脅かそうとは!」
「……まぁ人の指を噛みちぎるカメとか、リアルでもいるけどね」
「それ、怖いんですけど!?」
「実際にいるんだから仕方ない」
「……出てきませんよね、それ?」
「それもカメですが、何か?」
「それっぽいのが出てきそうな予感がします!?」
「というか、既に今回ヤバいくらいに噛みつかれてるのを忘れてない?」
「あ、そういえばそうでした! ところでスッポンって美味しいんですかねー?」
「食べた事ないから知らない」
「そうなんです? まぁ私も食べた事ないですけど……スッポンは美味しいという方はブックマークや評価をお願いします!」
「話と直接の因果関係がないものを持ってくるのはやめようか!?」
「まぁまぁ、これくらい良いじゃないですか!」
「いや、良くはないんだけど……まぁいいや。さて、次回は『第189話 耐久性の強化』です。お楽しみに!」
「流石にその辺の対策をしないと危なくなってきましたもんねー!」