第177話 サクラの呟き その5
今日の分の配信は無事に終わって、晩御飯のアジの塩焼きは美味しかった! なんだか試食データのお煎餅を食べたからか、和食を食べたかった気分だったからなんか嬉しかった!
さーて、自分の部屋に戻ってSNSを確認してからモンエボの続きをしよー! ふふーん、まずはライオンで西の端を目指すのです!
「なんだか機嫌が良いな?」
「あ、兄さん! 今度、姉さんがまたあのお煎餅を送ってくれるってー!」
「……よし、先に釘を刺しておくか。また消費し切れんほどに送られても困る」
「それは同感だね!」
うん、そこだけは本当に冗談抜きで自重してもらわないとまた大変な事になる! いくら美味しくても多過ぎて消費し切れない困るもんね。兄さんから言ってくれるなら一安心!
「それじゃ……っておい、もう注文したってメッセージが届いてるぞ。……明日の夕方には届くのか」
「姉さん、行動が早くない!? 数は大丈夫なの!?」
「あぁ、流石に今回はまだ常識的な数だ。……それでも5箱は多い気もするが」
「前の20箱よりはマシだった!」
結構日持ちする煎餅だったとはいえ、前回よりも遥かに少ない! うん、これなら置き場所や賞味期限を気にして慌てて食べる必要はなさそうだね。
「……どうやら前回のは仕事絡みで色んな所に配る為に大量に買ったと思われてたらしいが、今回は店の方でストップをかけてくれたみたいだな」
「お店の人に迷惑がかかってた!?」
姉さん、自分の友達のお店相手に冗談抜きで何やってるの!? そしてお店の人、ナイス判断です!
「……というか、なんで兄さんの方に連絡が行ってるの?」
「嫌われたくないから、先にチェックしてくれだとよ。注文してから言ってくる事か……?」
「そんな理由!?」
うーん、昨日の兄さんの脅し……は、実行してないから姉さんの旦那さんが何か言ったのかな? でもまぁ平穏に片付いたという事で結果オーライという事で! うふふ、これなら純粋にお煎餅が届くのを楽しみに出来るのです!
「それじゃ俺は部屋に戻るぞ」
「はーい!」
兄さんにチェックを頼んだって事は、私の方にも改めて連絡が来るって事だよね! 携帯端末は自分の部屋に置いているから、戻ってその辺も確認しようっと!
◇ ◇ ◇
そして自分の部屋に戻ってきて、携帯端末のAR機能をオン! って、わっ!? なんか通知が200件以上とか大量に来てる!? え、これって姉さんの……じゃない!? 姉さんからのメッセージは確かに来てるけど、SNSの通知だよ、これ!? え、何がどうなってるのー!?
「と、とりあええず、お、落ち着いて、確認!」
なんだか自分でも分かりやすいくらい動揺してるっぽいけど、なんか異常事態が発生中! 私、携帯端末への通知が200件を超えてるの初めて見たよ! ……何か見るのが怖いなー。
ふー、先に兄さんのチェックが入った……あれ? チェックしてたのってついさっきだけど、タイミング的に早くない? というか、姉さんからは2件来てた! うん、先にこっちの確認をしちゃおう!
「えっと、あ、さっき兄さんから聞いた内容とほぼ同じのメッセージだ」
1件目は店の人に止められたというとこだけは伏せた普通の内容だった! あ、でも兄さんが言ってなかった事も書いてて……配信をしてる間に注文してたんだ。そっか、妙に早い気がしてたけど、そういう事なんだね!
うん、ここは普通にお礼の返事をしておこう! さて、その後に来てるもう1通のメッセージはなんだろ?
「えーと『なんだか凄い事になってるねー!』って何が……? もしかして……SNSの事?」
え、本当にSNSで一体何が起きてるの? でも、あの姉さんが心配する感じじゃないなら、荒れてるような内容じゃないのかな? うーん、正直見るのが怖いけど、そうも言ってられないよね。
「よーし、覚悟を決めて見てみましょう!」
いざ、未知の状況の確認に向かってレッツゴー! 本当になにがどうなってるのかなー? えーと、フォローの通知が50件を超えてるって何!? え、何がどうしてそうなったの!?
ちょっと待って、ちょっと待って! 本当に私が少し見てない間に何があったの!? とにかく内容をチェック!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
中継のアーカイブ保存をしました!
『【初見プレイ】Monsters Evolve part.5』を見てみませんか?
URL:*tp://***
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コメント【15】拡散【76】いいね【155】
なんか妙に拡散されてるー!? 見ても何がどうしてこうなったのかが分からないよ!? ともかく、内容のチェックをしていこう。
⇒【1】ミツルギ #***
何がサムネイルになるか気になってたけど、最終的にはこれか。
うん、ミツルギさんはいつも通りっぽいコメントだから特に気にしなくていいや! とりあえず『カブトムシは強力な武器です!』と返しておこう!
えーと、他にも普段より多いコメントをチェックしてみてるけど、いつもの人達からいつもの感じの反応があるくらいだよね? え、あれ? ちょっとまって、原因ってこれ?
⇒【10】皐月堂(米菓専門店) #***
美味しそうに食べてる可愛い子って良いですよねー!
⇒【拡散】立花サナ #***
可愛い子は拡散!
食べ物を美味しそうに食べる子は良いよね!
→水無月 #***
美味そうに食べるのは良いですよねー。
→ずっと寝ていたい@3日徹夜中 #***
ちょっと見てきたけど、なんか微笑ましい。
→名無しのカカシ #***
なんかこの子のアバター、作風が似てません?
少し質を落として……あんまり質が落ちてもなさそう?
→こんにゃく #***
ちょっと見てみたけど、なんか色んな意味ですげぇ!?
→黒月 #***
へぇ、個人依頼を受けるとかあるのか。
もしかしてどっかの企業案件?
→ケースケ #***
ちょっと見てきますねー!
皐月堂って、あのお煎餅のお店だー! 姉さんと友達なんだから、私の事を知ってても不思議じゃないよ! というか、姉さんがこれを『サツキ』の方じゃなくて、仕事用のアカウントの『立花サナ』で拡散してるよ!?
ぎゃー!? これ、姉さんのファンの人達が流入してきてる!? しかも、なんか私のアバターを姉さんが作った疑惑や企業案件疑惑が出てるよ!? 私は企業とか関係ないけど、企業案件って何か悪いの? それ以前に何が『なんだか凄い事になってるねー!』なの!? 原因、姉さんだよね!?
「姉さん、何やってるのー!?」
うぅ、あのアバターは私が自力で作ったのに! 姉さんに作ってもらってないよ! うがー! そのアバターは私の力作だー! それに私の出来で、プロの姉さんのと比べるのも姉さんに失礼だよ!
「……おい、どうした?」
「兄さん……姉さんがやらかしてる! これ!」
あ、ちょと大声を出し過ぎたみたいで兄さんがやってきちゃった。でも、ここは兄さんの力を借りたいところ! という事で、一方的にだけど兄さんへAR表示の共有だー!
「ん? あぁ、こりゃまた面倒なことをしてくれてるな……」
「兄さん、ヘルプー!」
「……流石にこれはどうにもならんぞ。変に消したら、妙な勘繰りが増えるだけだしな」
「え、そうなの?」
「あぁ、まぁな。これは止められんから、姉さんが宣伝してくれたとでも思っとけ。……身内バレだけはしないように、姉さんの旦那に警告しといてもらうがな」
「うぅ、お願いします……」
でも、姉さんの『サツキ』と私の『サクラ』が姉妹だって事はアーカイブを見たら分かるけど……姉さんの方で『サツキ』=『立花サナ』がバレなければ大丈夫……?
うぅ、妹だからって色眼鏡で見られるのは嫌ー! それに姉さんが見に来てるのがバレたら、そっちがメインになっちゃいそう!?
「……心配になるのは分かるが、プロの姉さんが作ったのと間違われるのは、むしろ誇るくらいに堂々としとけ。やましい事は何もしてないだろう?」
「……そうだけど」
「これで何かトラブルがあったら言ってこい。姉さん側の責任だから、あっちで対処して……って、誰だ、このタイミングで……あぁ、向こうもこの状態を認識したところか」
あ、姉さんからメッセージが来てる? 兄さんの方にもなんだか私とは別にメッセージが来てるみたい? とりあえず読んでみようっと。えっと『アカウントを間違えました! ごめんなさい!』って、もう直球な謝罪だった!? 別に悪気があった訳じゃないんだね。
「アカウントを間違えか。まぁ原因としてはそんなとこだろうが……あぁ、店の方と知り合いなのを全面的に出す感じにするのか」
「はっ!? 姉さんの友達のお店の宣伝って事にするの!?」
「そういう事みたいだな。元々、仕事の関係で手土産をよく買ったり、店の宣伝用のVR空間のデザイン絡みで付き合いがあったらしい。というか、その伝手で友達になったっぽいな」
「おー、そうなんだ!」
ほっ、それなら私の『サクラ』自身ではなく、姉さんはお煎餅のお店の方に反応したって事で済むんだ! なんというかお煎餅に救われた気分なのですよ! お煎餅に感謝!
「それじゃもういいか?」
「なんとか気分は落ち着いたので大丈夫!」
「それならいい。もう俺は戻るぞ」
「はーい!」
ふぅ、妙な展開になって焦ったけど、落とし所はあったみたいでちょっと落ち着いた! なんだか姉さんから謝罪メッセージっぽいのが次々と送られてきてるけど、しばらく通知は切って放置しておこうっと! 姉さんは少し反省しててください!
軽く他のコメントも眺めてみたけど、姉さんが関わってる疑惑や企業案件疑惑以外には特に悪意があるようなのはなさそうだね。キッカケはどうあれ私の配信自体に興味を持ってくれたら嬉しいんだけど、その辺はどうなるんだろ?
うん、まぁそこは気にしてもどうしようもないから、なるようになれー! さてと、現実逃避も兼ねて続きをやっていこー!
「何をやらかしてくれてるんですかねー!?」
「まぁ、盛大にやらかしたね」
「作者さん、他人事ですね!?」
「実際、他人事だしね」
「びっくりするほど言い切りましたよ、この作者さん!?」
「……それなら聞くけど、具体的にどうして欲しいの? ここに姉を呼ぶ?」
「なんだかそれこそとんでもない事になりそうなので止めてもらっていいですかねー!?」
「……サクラ以上に大暴走しそうだしね。さて、はいこれ」
「はっ!? このタイミングでカンペですか!?」
「警戒し過ぎじゃない?」
「……警戒するなという方が無茶じゃないですかね? まぁ読みますけど……えーと『どこか遠くへ行ってしまうかもしれないサクラを応援してくれる方はブックマークや評価をお願いします!』って、私、どこかに行くんです!?」
「さぁ?」
「作者さんが『さぁ?』ってどういう事ですかねー!?」
「さて、次回は『第178話 実況外の探検録 Part.8』です。お楽しみに!」
「いつも以上にスルーの仕方が厳しくないですか!?」